第26話 「天使様とカラオケ (超短いっス)」

「♪♪♪」

「上手いな⋯⋯愛海⋯⋯。」

はぁ。どうして俺はこんなに歌が下手なんだろう。愛海はさっきから九十点代をバンバン連発してるのに俺は七十点⋯⋯。この差はなんなんだよっ! ある意味拷問だぞっ! くそっ! 訴えてやる!


「あの⋯⋯俊くん? なんで拗ねてるの?」

「拗ねてない⋯⋯。」

「うそ。そんなほっぺた膨らませて顔も拗ねてるじゃん。」

「拗ねてない!」

「あはは。そうですか。じゃあそれでいいよ。はい。ポテト食べる?」

「うん。」

「はい。あーん。」

「あーん。」

もぐもぐ⋯⋯。

うん。なんか餌付けされてる動物の気分。


「あはは。もう一個食べる?」

「うん。もぐもぐ⋯⋯。」

「美味しい?」

「うん。」

「うんしか言わないじゃん」

「うん。」


「ねぇ、俊くんまだ拗ねてるの?」

「ううん。でも、もう歌わない。」

「え、じゃあ出よっか!」

「愛海は? いいの?」

「うん。いっぱい歌ったもん!」


ということがあって俺はようやく夏休みの憂鬱だった予定を消化し終えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る