第25話 「天使様とプール4」
ミーンミーン──────。
ミーンミーン──────。
外では人の迷惑など気にもとめずにセミがうるさく鳴いている。ちなみに俺はセミどころか虫全般が大の苦手だ。なので、一番嫌いな季節は? と聞かれたら一秒もかからないうちに夏と答える。夏は何故こんなに暑くて虫も多いんだろう。これは永遠のテーマだね。
まぁ、そんなことはいい。今日は八月十六日だ。つまり、とうとう来たなぁこの時が。あぁ。なんで今日は十五日じゃないんだよ! あれほど十五日がループして欲しいと願ったのに! という事で嫌々ながらも起きて、朝食を摂る。そして、歯磨き洗顔を終えてから着替える。まだ待ち合わせまで時間はあるのでもう少しゆっくりしてから行こう。
俺はラノベを見返したりしてから愛海にRainを送って今から行くと伝えた。そして俺はその言葉通り家を出て待ち合わせの場所に向かった。
「あ、俊くん! おはよぉ!」
「あぁ、おはよう。愛海。似合ってるよ。」
「えへへ〜。ありがとう。じゃあ行こっか!」
「うん。」
俺たちが行こうと思っているプールは電車で二駅ほど離れたところにある市営のプールだ。まぁ、自転車で行けないこともないのだが帰りにクタクタになって自転車で帰るのも嫌だったので電車で行くことにした。
「愛海、ボールとか買う?」
「ううん。愛海が持ってきたから大丈夫だよ。」
「そっか。ありがとう。」
だからか、愛海のカバンは旅行にでも行くのかという程に大きなカバンで、おそらくボールや浮き輪等を入れているのだろう。愛海は普段の『天使様』の様な振る舞いではなく、年相応のあどけなさを見せていて、こちらが本当の愛海なんだということはすぐに分かる。心の底から楽しそうに笑い、早くプールで遊びたいのかワクワクを隠せていない。
「そんなに嬉しそうにされたら、こっちまで楽しみになってきたじゃんかよ。」
俺は独り言を呟いたつもりだったが愛海に聞こえていたらしく「えへへ。いっぱい遊ぼうね!」と言われた。
そして、電車に揺られること十分。市営プールの最寄り駅に到着。ここからプールまでは歩いても五分程度。というかプールが見えているので本当に近い。
「行こうか愛海。」
「うん! レッツゴー」
俺と愛海は二人で一緒に走ってプールまで行き更衣室に入って着替えを済ませるとすぐさまボールと浮き輪に空気を入れた。
「行くよ俊くん!」
「あぁ。来い!」
すっかり俺も乗り気になっていた。
「えい!」
「とりゃ!」
「うわ〜。」
「次は負けないからな!」
「えい!」
「とりゃ!」
「うわ〜。」
「はっはっは!」
楽しい時間が過ぎるのはあっという間のことで、先程までは楽しく愛海とバレーをしたり浮き輪でぷかぷかしたり、ご飯を食べたり、ウォータースライダーに乗ったりと、はしゃぎまくっていたのだが、もう閉園の時間になってしまった。なんだかこのまま帰るのは味気ないという事で帰りにカラオケによっていこうとなって現在に至る。
はっきり言おう。俺は音痴だ。そう。超がつくほどの音痴。酷い。自覚があるもん。まぁ、そんなこと愛海は知らないし、愛海のことだから純粋に行きたいと思ったから誘ってくれたのだろうけど⋯⋯。出来ればいきたくなかった。
じゃあ断れって? 無理だね。あの大きな瞳をうるうるさせて上目遣い。あれに耐えられる人がいるなら挙手して欲しい。絶対いない。いたとしたらそれは男子じゃない! 言いきれる。
まぁ、これから待ってる地獄は考えたくもない。
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