第20話 「女神様との夏祭り3」

(夏樹花恋視点)

私は困りました。はい。絶賛困り中です。何がって? 俊ですよ⋯⋯。カッコよすぎるんです! 普段は前髪を下ろしていて少し、もさっとした感じがあるのに、今は髪を上げてるんです⋯⋯しっかりワックスで固めて、服装もお洒落で、私が浴衣でドキドキさせようと思っていたのに⋯⋯逆に私がドキドキさせられてどうするんですか⋯⋯。


私が悩んでることも知らずにしれっと私の歩幅に合わせて歩いてくれたり、車が通る車道側に私が行かないように気を遣って下さる。そういう所が好きなんですよ。俊。



「? どうかした? 俺の顔に何かついてるかな?」

おっと、見ていたことがバレてしまったようです⋯⋯。

「いえ、とてもかっこいい目と鼻と口です。」

「っ⋯⋯。」

うふふ⋯⋯。俊ったら、照れています⋯⋯可愛いです。



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(霧野俊視点)

おかしい。明らかにおかしい。さっきから花恋さんが俺の事をじーっと見つめてくる。何か企んでいるに違いない。気を引き締めないと⋯⋯。


俺と花恋さんは今、ちょうど祭り会場に到着して、普段は静かで落ち着いた雰囲気の公園が、今は良いように言えば賑やかで、俺からすればうるさい。


どうしてこんなうるさい所がリア充は好きなんだろうか? やはり理解に苦しむ⋯⋯。

どうも花恋さんもうるさいのは苦手ならしく、耳を塞いだり、少し嫌そうな表情をしたりしていた。

いや、嫌いなら誘うなよ! と、思ったのだが、言ってしまえばただのクズだ。なので、思うだけでとどめておこう。

正直、花恋さんと遊びに行くということは嫌ではない。寧ろ、嬉しい方だ。

本人には言わないけど⋯⋯。


「花恋さん。どうする?」

「そうですね。あ! あれやりましょ!」

何やら花恋さんは射的がやりたいそうで、急にテンションが上がりだした。


「おっちゃん一回!」

「あいよ。」

そんな会話を交わしてから銃に入れる弾を貰う。チャンスは五回。花恋さんが狙うのは可愛らしい猫の人形。


「あ゛⋯⋯」

女神様とは思えないような声を五回も出す。見事に全て当たらないという逆にすごいことをした花恋さん。


「お嬢ちゃん⋯⋯もう一回やるかい?」

さすが商売人。こういう所は漬け込んでくるようだ。

「はい! やってやりますよ! 俊! 見ていてくださいね。」

見事に罠にハマった花恋さん。

まあ、本人が楽しそうなので良いだろう。


結果は⋯⋯言わなくてもだいたいわかると思うが、お察しの通り惨敗だ。花恋さんはぐぬぬぬ⋯⋯と唸っていたが、流石にお金の無駄と気づいたのかもう一回するとは言わなかった。


次に俺たちは晩御飯代わりに唐揚げを食べに行くことにした。


「そうだ。大きいのを買って二人でわけようか。俺そんなにお腹空いてないから。」

「そうですね。そうしましょう!」

ということで俺たちは唐揚げの屋台の前にやってきたのだが⋯⋯

「私が払いますから!」

「いや、いいって。俺が払うよ。」

「私が!」

「俺が!」

「ふふ。なんだか、おかしいです。」

「はは。そうだな。」

「おぉい。屋台の前であまりイチャコラされると独身の身にはこたえるぜ⋯⋯兄ちゃん。可愛い彼女さんだな。ほら、おまけしてやる。」

「か、彼女じゃ」と、俺は慌てて否定しようとしたのだが、花恋さんに口を抑えられて、更には「私の自慢の彼氏です」なんて言い出すから困ったってもんじゃない⋯⋯。

確かに、可愛いけど⋯⋯。


そんな一悶着を終えて、ちょうどよく腹も脹れたところで花火を見に行こうということになった。

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