第18話 「女神様との夏祭り1」

俺は今日一日で随分課題を片付けることが出来た。普段から勉強はそれなりにはしているので、まあまあ出来た。


俺は明日、とても、とても嫌な予定が入ってしまった。

そう。夏祭りだ。

出来れば時の流れと一緒に⋯⋯なんて思っていたのだが、そんなに上手いこと行く訳もなく、もう今からRAINが入りまくっている。


俺のスマホはいつから『花恋さん』という文字に支配されるようになってしまったんだ。

一人で悲しみながら自室の掃除をしていた。


すると、「わぁ!」と、久しぶりの登場。我が最愛の妹である咲良が登場した。


「わ! びっくりした。どうしたんだ? 咲良?」

まぁ、気づいてたんだけどな⋯⋯。それを言うのはあまりにも酷だ。


「えへへ〜。あーそーぼ!」

「いいよ。じゃあ、まずはお外で遊ぼうか?」

「うん! 追いかけっこする!」

「よし! それじゃあ、着替えておいで。」

「はーい。」と健気でとても可愛らしい返事と手をあげるというこれまた可愛らしい仕草で了承した後、すぐに服を着替えてトテトテとこちらへ走ってきた。


「お兄ちゃん! お洋服着替えた!」

「ん。偉いな。」

そう言って咲良の頭を撫でると、猫のように「ん〜」と幸せそうにニコニコしていた。


「よし、咲良は靴履ける?」

「履ける!」

「よし! じゃあ、履いてみて。」

「ん!」

自信満々にそう言ったのだが、案の定左右逆で履いてしまった。


「咲良、それ、逆だよ。」

「ほんと?」

「うん。履き直してみて?」

「ん!」

今度はきちんと履けたようだ。咲良はご満悦で、ルンルンのまま外に出た。


「暑〜」

「暑いな。咲良帽子なくて大丈夫か?」

「うん! お兄ちゃんがいる!」

答えになっていないが、嬉しいし可愛いから良しとしよう。

「咲良大きくなったらお兄ちゃんと結婚する!」

「ははは。そうか。」

咲良の将来はもう決まっているみたいだ。

まぁ、小さい子あるあるだけど⋯⋯。


「それは聞き捨てなりません!」

「花恋さん!? いや、子供の戯言っていうか、そういうやつだから。」

「もし、この子が天才だったらどうするんですか?」

ダメだ。この女神様は頭が暑さでいかれてしまったようだ。狂ってやがる。ていうか登場するタイミング良すぎだろ!? 狙ってたのか!?


「いいですか? 俊と結婚するのは私です! 私は将来『霧野花恋』になるんです!」

「嫌! お兄ちゃんは咲良のお兄ちゃん! 咲良が結婚するの!」

「私です!」

「咲良!」

「私です!」

「咲良!」


なんか、ただ事じゃないような雰囲気が漂っていますが、大したことじゃないです。だからそんなに心配そうな目で見ないでください。特に主婦の方々。こちらを見てニヤニヤしながらされるコソコソ話程恥ずかしく、不快なものはありませんから。


「二人とも。そろそろいいだろ。ほら、咲良も追いかけっこは? 花恋さんもなんか用事があったんじゃ無いのか?」

「そ、そうでした。私としたことが⋯⋯。俊のことになるとついつい⋯⋯。」

「うん! 追いかけっこする!」


俺は40分程咲良と走り回って、ようやく解放された。




-----------------------------翌日

(夏樹花恋視点)

今日は待ちに待った夏祭りの日です。私はまだ集まる時間まで3時間もあるというのに既に浴衣を着て、何度も何度も鏡を見て身だしなみを確認していました。


楽しみで楽しみで仕方ありません。実を言うと祭りは好きでは無いのですが、俊とお出かけできるという事実がそのことを塗り替えてしまっています。


私はもう何度目かも分からない身だしなみチェックを終えて、まだ早いですが、俊の家に行こうと思いました。


「俊⋯⋯迷惑だったりしませんか?」

私は空虚な空間に一人、ぽつりと呟きました。勿論、家には誰もいないので返事はありません。これは日常茶飯事なので、慣れています。でも、この前の光景がフラッシュバックしてしまい、どうしても寂しくなってしまいます。俊が、幼なじみの子のために必死になっていたこと。


☆☆☆

あの時、私はたまたまスーパーに買い物に行っていました。そしたら、俊の声が聞こえたんです。


でも、それは私にとって嬉しい声じゃありませんでした。


怒りや、悲しみ、後悔⋯⋯。様々な感情の混ざった声でした。


俊は言いました。


『お前と仲良くなれればそれでいいんだ。』と。


私はその時、まだ中学生だった頃、当時の俊を思い出してしまいました。私の胸は締め付けられるような感覚を覚え、逃げ出してしまいました。


俊は泣いていました。


それが、怒っていたからなのか、悲しかったからなのか、後悔していたからなのか、なんてことは私には分かりません。

分からないのが嫌でした。

でも、分かってしまうのも怖かったです。


だから、逃げました。


「はぁ⋯⋯やめましょう。せっかく俊と祭りに行けるんです。楽しいことを考えましょう。」

また、空虚な空間に独り言を呟きました。


----------------------------------------------------------

皆さんこんにちは!麝香じゃこういちごです!


今回はコメディ要素とシリアス要素が混ざった感じでしたが、楽しんでいただけたでしょうか?


もし、楽しんでいただけたなら作者としては光栄です。


最近夏で、本当に暑い日が続いていますが、体調は大丈夫ですか?


マスクもつけないといけないので、熱中症には気をつけましょう!


感想、フォロー、レビューして下さいましたら、作者のモチベアップに!


よろしくお願いします!

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