第9話 「変化」

 「で~ぶっちゃけ俊はどっちと付き合ってんの~?」

「はぁ。俺はどっちとも付き合ってない。」

「いいって~恥ずかしがらないでさ~。ほら、言いなよ~。」

「だから……。」

「あの……。やめてあげてください。俊が困っているじゃないですか。だいたい今まで俊にかかわってなかったのに急にそんな風にしたら、下心丸出しにしているのと同じですよ。」

「いや……。そういうことじゃなくて……。」

「とにかくやめてあげてください。」

「はい……。」

情けないことに俺は花恋さんに助けてもらってしまった。普通なら男の俺が助けてあげる方なのに……。

 「さぁ。俊! 邪魔ものどもはもういないので、お話ししましょう!」

「は、はい……。」

俺は花恋さんと担任の教師がだるそうな顔をしながら「お~い。席に着け~。ホームルーム始めるぞ~。」というまでの約十分間お話に花を咲かせていた。俺は確かに陰キャだ。。だが、人と話すことができないわけではない。要するに俺は〝陰キャ〟であって、〝コミュ障〟ではないのだ。でもまぁ、苦手といえば苦手だな。それもイケイケのリア充軍団と来たら尚更だ。

 さて、唐突だが、みんなはこんな言葉を知ってるだろうか? 『焦ることは何の役にも立たない。後悔はなおさら役に立たない。焦りは過ちを増し、後悔は新しい後悔を作る。』という言葉を。これはドイツのゲーテという詩人の言葉だ。俺は〝あの時〟この言葉に救われた。あの時の俺は、毎日のように『あれで良かったのか?』『他に方法はなかったのか?』と意味の無い自問自答を繰り返していた。そんな時に出会ったのがこの言葉だ。俺はこの言葉を見た時に鳥肌がたったのを覚えている。あの時の衝撃は今でも鮮明に思い出す。当時の俺は仲直りをするために焦り、また仲が悪くなり後悔し、の悪循環だったため、それをやめて、待ち続けることにした。だが、それがかえて失敗だったのかもしれない。それは、結局待っても何も無かったからだ。

 「おーい。俊くん? ちょっと……?」

「ん? あぁ。どうした? 芝田さん?」

「むぅー! 花恋は下の名前で呼ぶのに愛海のことは名字呼びなんだ?」

「ご、ごめん。分かった。愛海……。」

「えへへ〜。ありがとう〜。俊くん〜。」

ッ!……。流石は『天使様』だけあり、その笑顔は写真を撮ればメ〇カリで売れば諭吉でもいいんじゃないかと思うほど絵になっていた。タイトルはなんだろう? 『天使の微笑み』とかかな? などとくだらない事を考えているとまたもや無視していたようだ。

「もう! 俊くんは直ぐに自分の世界に入るんだもん。面白くないよ!」

と、言われてもだな……。こればかりは仕方ないだろ? 人の話を聞くのは苦手なんだ。

いよいよ夏の暑さも強まり、日差しが強い。やけに自己主張が激しい太陽だが、もう少し我慢することはできないのだろうか? 日本では、遠慮は美徳とされている。もしかして太陽は中国人なのか? これは以前読んだ本に載っていたが、中国では、思慮遠慮というように、遠慮というのは『深く考えを巡らせて行動する』という意味らしい。何故日本の『遠慮』に変わったのかわからん。まぁ、どうでもいいけど……。

「もしかして……。それわざとやってるの?」

「あ……。ごめん。聞いてなかった。ちょっと考え事してたよ。」

「もう……。」

それからは愛海と談笑して、つまらない授業を四回繰り返し、お昼ご飯の時間になった。

「「俊(君)! お昼ご飯一緒に食べよ!」」

「お、おう……。」

「「俊(君)は私(愛海)と食べるんです!」」

「ね? 俊君は愛海と食べるよね?」

「違いますよね俊? 私ですよね?」

困ったなぁ……。どっちかを選べなんてそんなの嫌だなぁ……。てか、三人で食べればよくない? 

「三人で……。」

「「却下!」」

「ですよね~。」

本格的に困ったぞ……。う~ん。そうだ! ジャンケンしてもらおう! 勝った方とは今日一緒に食べて、負けた方とは明日一緒に食べよう! うん。我ながら天才的なことを思いついたな。

「ジャンケンして買った方とは今日一緒に食べるよ。これでいい?」

「わかりました。」

「負けた方とは明日一緒食べるから。」

「うん。」

何とか納得してもらえたみたいだ……。よかった。俺は胸をホッとなでおろして、安どのため息をついた。

結局ジャンケンは愛海が勝ったため、今日は愛海と一緒に食べることになった。

 「わぁ! 美味しそう! ねぇ、その卵焼き一つちょうだい?」

「あぁ。いいよ。でも、それは……。な?」

おかしいだろ⁉ だって愛海は目をつぶって口を開けて待ってるんだぞ? しかも、恥ずかしいのか頬も紅潮しているし……。

「恥ずかしいならやるなよ……。」と小声で悪態をつきながら箸で卵焼きを一つ掴み、愛海の口に持っていく。すると小鳥が親に餌をもらったように幸せそうな表情をしながらもぐもぐと咀嚼していた。

「本当に可愛い人は、食事してるだけでも絵になるんだな。」

ん? 何故かどんどん愛海の顔が真っ赤に……。

って「痛い痛い! なんでいきなりたたかれなきゃいけないんだよ!」

「なんでって、俊君がいきなり恥ずかしいこと言うからダメなんだよ……。」

「あ……。声に出てた……?」

やってしまった……。

結局そのあと五分くらいたたかれ続けた。


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皆さんお久しぶりです! 麝香いちごです!

第九話を読んでくださりありがとうございます🙂

実は、今回からスマホではなく、パソコンで執筆するようにしたのですが、なんせタイピングが遅いもんで⋯⋯。頑張らなくちゃ!

と、1人決心しております。


第一章も終わり、第二章です!なんと、もう1500PVを超えてくれて、読んでくださってる読者様には感謝です!


では、また次の回でお会いしましょう!

麝香いちごでした!

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