第二章:夢の続き
第8話 「この日常が幸せだから。」
「咲良~。帰ってきたよ~。おいで~お土産あるよ~。」
「わぁ! お帰りなしゃ~い! お兄ちゃん! お土産?」
「うん。そうだよ。」
俺は花恋さんとのデートから帰り羞恥心を我慢して、イベントに参加してゲットしたプ○キュアの人形をわたした。
「やったぁ! これほしかったの! ありがとうお兄ちゃん!」
俺は目の前で目をキラキラさせて大切そうに抱えている少女の頭をよしよしとなでてやる。幸せということなんだろうな。と思った。それから、こんな日々がずっと続いてほしいと思った。
俺はいつも通り咲良の相手をしてから、なんとなくスマホを見た。すると、一件の通知が来ていた。相手はまぁ、花恋さんだった。その内容は、高校生とは思えないような堅苦しい挨拶に始まり、終始丁寧な言葉遣いで書かれた感謝? 的な内容だった。意外なことに女神様は異性と遊びに行くのは初めてだったようで、「うまくデートできていましたか?」という確認の文章が至る所に見られた。俺は、『こちらこそありがとう。俺も緊張したけど、本当に楽しかったよ。』と送っておいた。
翌日。俺の頭が徐々に覚醒する。比較的都会に住んでいるため、鶏の鳴き声で目を覚ますことはない。強いて言えば車のエンジン音か、セミの鳴き声、ハトや雀の鳴き声位だ。今日はピピピという電子音で目を覚ました。時計を見る。そこには、もう何度もみた、AM7:00と言いう文字が表記されていた。俺はベッドから重い体を起こし、立ち上がってから顔を洗いに洗面所に向かった。そして顔を洗い終えると、歯を磨いて制服に着替え、昨日の復習などを軽くしてから登校だ。
いつもと何も変わり映えしない道を歩き、駅に到着。後は電車に乗って、学校に向かうだけだ。駅から学校までは一、二分程歩くと着く。俺はイヤホンから流れてくる音楽に聞き入っていた。ちなみにジャンルはアニソンで、今一番はまっているアニメのオープニングだ。だから俺は気づくことができなかった。後ろから自分の名前が呼ばれていることに。
「俊! 何回呼べばいいのですか⁉ もしかしてわざと無視しているのですか⁉ さすがにそれは泣きますよ⁉」
「ハッ! ごめん。聞こえてなかったよ。どうしたんだ? 花恋さん?」
「まずは挨拶ですよ。挨拶は基本です。ですので、おはようございます。俊。」
「おはよう。花恋さん。」
昨日のメッセージにしてもそうだが、まじめだなぁ。花恋さんは……。
「で? どうしたんだ?」
「いえ、どうってわけではないのですが、歩いているところが見えましたので。」
「そっか。」
俺はできるだけそっけなく返事をする。もうあんな思いはしたくないから。こうしなければ、あの悪夢を繰り返してしまう……。そう思った。
「おっはよ~! 愛海で~す!」
「お、おはよう……。朝から元気だな。」
「だって朝から霧野君と会えたんだもん。」
早起きは三文の得だね。と本当にうれしそうな顔をしながらそういう芝田さん。その顔はまさに『天使様』だった。
「ん? どーしたの? 私顔に何かついているかな?」
「い、いや。そうじゃない……。」
「んん? 何なにぃ? もしかして私の顔に見惚れちゃった?」
「ち、違っ……。」
「あはは。冗談だよ冗談。やっぱ可愛いね。俊くん。」
クッ……。俺、間違いなくからかわれてるよね?
「ふぁ⁉ ちょっ! 花恋さん⁉」
いきなり花恋さんが腕に抱き着いてきたため素っ頓狂な声をあげてしまったじゃないか! てか、本当にいきなりどうしたんだっていうのさ?
「むぅ~。何ですか? 俊はやっぱり私よりも愛海ちゃんの方がいいのですか? 私負けたくないので、決めました! 積極的にアピールしていきますから! 覚悟してくださいね!」
おいおいおい……。待ってくれよ……。そんなことしたら……。
「うわぁぁぁぁぁぁ⁉ なんということだぁぁぁぁぁ!」
ほら。
「花恋さんや……。そろそろ離れていただけませんかね……? 自分が可愛いということをもう少し自覚した方がよいかと思いますよ?」
「はぅ……。か、可愛いとか……。不意打ちで言わないでくださいよ! その……。恥ずかしいですから……。」
顔を赤らめて、上目遣いで見つめられる。こんなことをされて意識しない男子がいるだろうか? いや、いないだろう。いたら挙手してほしい。
「ご、ごめん……。」
「でも、嬉しかった、です。」
小声ではあったが、おれにはしっかりと聞こえた。だって俺、耳いいもん。もし聞かれたくなかったんなら、ごめんね。
その後チャラい感じのリア充たちから妙に絡まれた。正直言って迷惑だった。
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