第7話 「とある少女の過去。」

 昔々、あるところに一人の少女がおりました。その少女はある日生きていることがつらく感じてしまいました。

理由は単純でした。その少女はいじめを受けていました。ある日は上靴が隠され、ある日はお母さんにもらった大切なクマさんのキーホルダーを壊されました。いじめは日に日にひどくなっていき、小学六年生になるころには、暴力もふられるようになりました。

 少女が大きくなって、中学三年の時でした。イジメは酷くなり、もう我慢ができなくなりました。少女は思いました。「もう死のう……。」と。少女は無意識に歩き出していました。到着したのは本当は立ち入り禁止の屋上でした。少女は思いました。「ここから飛び降りたら、楽になれるのかな?」と。少女は少しずつ屋上のフェンスに近づいて、フェンスに手をかけました。その時でした。男の子に見つかりました。

「何してんだよ!」

「放っておいて下さい! もう少しで私は楽になれるんです!」

少女は見たこともない男の子が干渉してきたことに少し苛立ちを覚えました。

男の子は強引に少女の手を引き、階段まで連れ戻しました。

「何があったんだ……?」男の子は言いました。

「イジメられているんです。」

「……。だから死のうとしたのか?」少女は何故か苛立ちと一緒に安堵を覚えました。胸の中で黒い渦が渦巻いているようでした。

「はい……。」少女の目からは涙がこぼれ落ちました。少女は自分でも泣いてる理由が分かりませんでした。少女は今まで自分がされたことを男の子にすべて話しました。男の子は黙ってうなずきながら聞いてくれました。

「あの……。失礼かもですが、会ったことはないですよね?」

「あぁ。だって俺、今日ここに転入してきたからさ。それよりここは屋上禁止じゃないんだな。」

「いえ。禁止ですよ。」

男の子は屋上のドアが開いていたから勘違いしてしまったのです。

「そうなんだ。」

その翌日からです。男の子は積極的に少女に話しかけました。

そして、男の子は少女をイジメていたグループのリーダー格の男の子に殴り掛かりました。そのせいで男の子は停学処分を受けてしまいました。 

 少女はそのことを知った時、後悔もしました。ですが、初めて恋をしました。少女は今でもその男の子のことが好きです。それからもう一年がたちます。でも、男の子はもう、いません。

それでも少女は死のうとは思いません。

だって、いつかは男の子に会えると信じているから。

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