第4話 「ボッチにデートは難しい!?」


今、俺の目の前では『女神様』こと夏樹花恋に『天使様』こと芝田愛海が猛抗議している。

大変眼福である。


「むぅー! わかってるの? 花恋!」

「はい⋯⋯。でも、仕方ないんですよ! だって、霧野さんが⋯⋯優しくて⋯⋯い。」

「むぅー! そんなのみんな知ってるよ!」

そうなのか? いや、なぜ俺が優しいとか知ってるんだ? てか、優しくないし⋯⋯。


でもまぁ、先程の怒り方を見るに恐らくこの芝田さんも俺のことが好きなのだろう。

美少女達に好かれて嫌な気分にはならない。


ちなみに芝田愛海はみんなから『天使様』と呼ばれている。


「もうっ! 霧野くん! 愛海もあなたのことが好きです! ライバルは沢山いるけど⋯⋯愛海のことを絶対に好きにさせてやるから!」

「は、はぁ。」

ライバルが沢山いるってあなたからすれば夏樹花恋の一人ではないのか? 俺ってモテるのか? いや、無いだろうな。ん〜。でも現に一日で二人に告白されたし。


「霧野さん! 早速ですが、私を知って頂こうということで、今週の土曜日にお出かけなんて、いかがでしょうか?」

確か土曜は予定が空いていたはずだ。

「あぁ。いいよ。どこに集合?」

「そうですね。では、お互いの家も知らないので⋯⋯駅前に10時でよろしいですか?」

「あぁ。いいよ。」

確かに⋯⋯そうだな。でも、俺の家から最寄りの駅までまぁまぁあるんだよな。


俺の家は一軒家で、そこそこの大きさはある。

だけど欠点をあげるとしたら先程言ったように駅が遠い、つまり、電車通学の俺からすればだいぶきつい。でも、あんな思いをするよりはましだ。


「じ、じゃあ! 今日は愛海と一緒に帰ろ!」

「え、いいけど、芝田さん生徒会は?」

「今日は無いよ〜。だから、放課後デートしよ」

「う、うん⋯⋯。」

『放課後デート』とは、なんと響きのいい言葉だろう。アニメの世界でしか知らなかったものがなんと、目の前で繰り広げられているではないか!


と、いうことがあり、俺は今芝田愛海と一緒に帰っている。そして⋯⋯。


「ねぇねぇ! 見てよ霧野くん! 似合う?」

「あ、あぁ。似合うよ。可愛い。」

「えへへ〜。霧野くんに可愛いって言われた〜」

そう。俺は某有名洋服店にて、お買い物をしている。だけど、服に関心のない俺にとってはこの時間は苦痛以外の何でも無い⋯⋯はずだったのだが、何故か芝田さんといると苦痛に感じない。流石は『天使様』⋯⋯。


でもな、周りからの声がすげえよ。

「お似合いね〜。」「可愛いな。」「かっこいい!」

「クソ! 美少女はイケメンじゃなきゃやっぱりダメなのかよ!」などなど⋯⋯。


俺はこの一日で自覚した。

意外と俺はモテるらしい。さらに、自分では普通くらいかな? と思っていた顔もイケメンらしい。だから芝田さんは「せっかくイケメンなんだしさ、服もオシャレにすれば?」との事だ。


「霧野くん! 私、これ買ってくるね!」

「あぁ。分かった。」

こういった会話が何度か続いて、次は俺が行きたいところに行っていいとの事なので、せっかくだし、妹の咲良に何かお土産を買ってやろうと思い、おもちゃ屋さんに来た。


「霧野くん⋯⋯私は、霧野くんがどんな趣味でも悪くは思わないからね⋯⋯。」

「おぉぉい! 何か誤解してないか? 俺が欲しいんじゃなくてだな、妹にプレゼントだ!」

「へ? あ、そうなの? 霧野くんって妹いたんだ⋯⋯。何歳?」

「三歳だ。」

「へ〜! 今度、会いたいな!」

それは、俺の家に来たいと言ってるのと同じだぞ? 芝田さんや?


「あぁ。機会があればな。」

「やったー!」

俺と芝田さんは並んで歩き、ついでに夕食も食べて帰ろう! となったのでファストフード店に行くことにした。

その途中、雑貨屋さんの前を通った時に芝田さんがくまさんのぬいぐるみを愛おしそうに見ていたのを俺は見逃さなかった。


これは、「ちょっとトイレ行ってくる」とか言って買いに行くのが攻めてもの恩返しだろう。

なんせ、今日は俺なんかと遊んでくれて、俺も久しぶりに遊び疲れた。なので、これくらいはしないと俺のプライドが許さない!


「ごめん。ちょっとトイレ行ってくる。」

「ん、分かった! 席取っとくね。」

「うん。助かる。」

でも、心配だな。芝田さん可愛いからナンパとかされなければいいんだけど⋯⋯。


「ねぇ、そこに君! ほら、可愛いそこに君だよ!」

って、されてる!? いや、早! てか、無視してる⋯⋯。強い⋯⋯。


「ねぇ、無視は良くないって!」

あれ? でも、何かおかしいぞ? 普通ナンパするのってイケイケのチャラ男とか、ヤンキーの人とかだよね? でも、声が女の子なんだけど⋯⋯?


「おーい! 流石にお姉さん悲しくなっちゃうな?」

「⋯⋯って、俺かい!」

「わぁ! 元気いいね! うん。お姉さん達と遊びに行こ?」

まて⋯⋯。落ち着くんだ俺。これは夢。これは夢。

ほっぺをつねれば「痛い!」夢じゃなかった。

これは、もしや、逆ナンと言うやつか?


「ごめんなさい。俺、友達が待ってるんで。じゃ」

「え〜。じゃあ、その友達はどこなの?」

「はい。あそこのナンパされてる⋯⋯ナンパされてる!?」

「ちょ、おい! 芝田さん?」


そこには、イケイケのチャラ男とか、ヤンキーにナンパされて、泣きそうになっている芝田さんがいた。


「なぁ、そろそろしつこいぞ?」

「お前だよ! しつこいのは!」

「あ? なんだてめえ!」

「霧野くん!」

芝田さんは余程怖かったのか俺が助けに入ると目をキラキラさせて喜んでいる。


「俺の彼女に手を出すな。」

「は? え、お前⋯⋯彼氏?」

「あぁ。悪いか?」

「いや、その、ごめん。」

なんだ。話が通じるじゃないか。もちろん嘘だけど。暴力無しでやめてもらえるのはこっちとしてもありがたい。


「ごめん。大丈夫?」

「うん。えへへ〜まさかこんな早くに答えをくれるなんて⋯⋯。えへへ〜」

「あ、違っ!」

「うん。分かってるよ。愛海もそこまで馬鹿じゃないんだからさ! 守ってくれたんでしょ?」

「⋯⋯うん。」


あれ⋯⋯?

俺、なんか忘れてないか⋯⋯?

まあ、いっか!


結局俊はくまさんの人形を買うことを家に帰ってから思い出し、ダッシュでモールに戻って買ってきた。

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