第3話 「告白」

第三話 「告白」

恐らく俺の顔は酷いだろう。直感でそう思った。

単刀直入に言おう。俺にメッセージを送ったのは今井七海だった。

内容は⋯⋯。


『もし、やり直せるって言ったらあんたどうするの?』


正直、恐怖でおかしくなりそうだった。恐らくこいつは〝あの事〟を言っているのだろう。

俺の過去──────。

悪夢の始まり──────。

終わりのない夢の始まり──────。


俺と七海は幼稚園が同じで、家も近かったため仲が良く、幼稚園が終われば毎日のように遊びに公園に行き、泥だらけになっては親に叱られていた。

そんな日々が俺にとってはどうしようもなく楽しく、幸せだった。

俺たちはそのまま小学生になり、高学年になっても仲が良く、周りからは「付き合ってるの?」とからかわれた。そこからだ。悪夢の始まりは。

中学2年になったある日のことだ。いつものように学校に行き、俺は七海に話しかけた。すると、

「もう、話しかけないで。私、あんたなんかと付き合ってるとか死ぬほど嫌なの。だから、関わらないで。」そう言われたのだ。

辛かった。

苦しかった。

苦かった。


それでも俺は七海と疎遠になるのは嫌だった。なので、めげずに話しかけていた。そしたら、七海の周りにいた女子からも批難されるようになった。

そこから俺はぼっちになった。

そして、そんな現実から逃げるように地元からは少し遠いこの学校に通うことにした。そうすることで友達こそいないもののいじめにもあっていない。


だからこそ俺は

『あれが間違えていたとは思っていない。だから、何度でもお前に話しかける。』そう送った。

これは俺の本心なのか?

これは、現実なのか?

俺は⋯⋯一体誰なんだ?

今井七海は本当に俺が嫌いになったのか?

分からない。

今の俺には分からないことが山ほどありすぎて無理だ。考えるのはやめよう。今は隣ですやすやと幸せそうに寝息を立てている少女のように眠ろう。


きっとそうすれば夢から覚めてくれるはずだから。


俺の意識はそこでおちた。


俺は夢を見た。

あの日の夢。

俺は夢を見た。

あの日見た悪夢。

俺は夢を見た。

正しいと信じてきた夢。


「最低⋯⋯。」「マジでキモイ。」「七海可哀想」

「死ねばいいのに。」「よく来れるね。」

あぁ。そうだったな。

俺は──────。

夢を見ていたんだ。


「⋯⋯いちゃん。」

「⋯⋯にいちゃん。」

「お兄ちゃん! 起きてよ!」

「ん、んぁぁ。おはょ。咲良。」

俺はダメなお兄ちゃんだな。三歳の妹に起こしてもらうとは⋯⋯。

俺は上に乗っていた咲良を抱っこしてどかし、頭をよしよしと撫でてやる。


「キャハハ! お兄ちゃん! お兄ちゃん!」

「ここにいるよ。ほら、おいで。朝ごはん食べよ」

「うん!」

そうして朝食を取り、スマホを見る。

やはり、通知が来ていた。


『そっ⋯⋯。で、そっちでは上手くやってんの?』

との事だったので、俺は一応『あぁ。』とだけ送っておいた。


そして俺は登校した。学校に着き、教室に入る。いつも通りの光景。見慣れた光景。

リア充グループが固まって談笑している。だが、いつもと違う。女子からも男子からも向けられる視線が違う。


そして、それが明らかになったのはそれから間もなくだった。


「よし! 決めました! 私はあなたのお世話係になります!」

彼女、夏樹花恋は登校するなりおはようございますと言うのではなく、こう言ったのだ。


俺は驚いた。それはそうだろう。

「⋯⋯ふぇ? お世話係って、俺、高一だけど⋯⋯。」

「はい! 知ってます! これはただの名目に過ぎません!」

ふんすっと鼻息を荒くして胸を張っている女神様。てか、名目って言っちゃったよ。


「それは、どういう⋯⋯?」

「はい! 私はあなたの事が好きなのです!」

衝撃だった。初めに思っていたことが事実だったなんて。

俺はネタのつもりで『好意か?』といったのにまさかまじだったとは⋯⋯。

「あ、でもまだ答えは出さなくていいですよ!だって、私のこと、何も知りませんよね? なので、もっと時間をかけて答えを出してください!」

こう思ったのは俺だけだろうか?

『じゃあ、なんでお前は告白したんだよ!』と。


まだ俺はこいつと関わりはあまり無いはずだ。

更に俺は陰キャだ。顔も悪くは無いかもしれないが、イケメンではないと思う。会話もまともにしていないので性格なんて分かるはずもない。

だからこそ、不思議だ。

まぁ、これから知ればいい話か。


「あぁぁぁぁ! 花恋!? 抜け駆け禁止って言ったのはあなたじゃない!」

またうるさいのがきたな⋯⋯。ちなみにこいつも俺は知っている。一年生ながら生徒会副会長を任されている芝田愛海しばたあみだ。

流石に俺だって生徒会長と副会長くらいは知っている。今年の生徒会は珍しく女子しかいないことで有名なのだ。

余談だが、生徒会は会長一名、副会長二名、書記、会計一名とそれぞれに補佐が一名ずつ着いているので、計七名で構成されている。

俺が知っているのは生徒会長で二年生の福田茉莉奈ふくだまりな先輩と、副会長で一年生の芝田愛海、二年生の葉月真悠はづきまゆうの三人のみだ。


「むぅー! 花恋のバカ! ルール破り!」

可愛らしく頬を膨らませて抗議をしている姿からは皆の前に立ち、演説をしていた芝田愛海を全く想像できない。面影が微塵もない。




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どうも。麝香いちごです。


「カースト最底辺の俺がなぜか美少女達に好かれている」第三話読んでいただきありがとうございます!


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