第2話

渡「でも私はコンピュータとか全然詳しくないんで…」

ジェフ「大丈夫、大丈夫。優秀な仲間がいるから、メンバーに聞いてもらえばいいから。パソコンはこちらで支給したものだけを使ってね。あと、最後に重要なことだから伝えるけど。逃げ出すのは自由だけど、ここから生きて出れることはないからね。」

渡「あ、はい」


メンバーとはパソコンのオンラインチャットで会話したが、どれもやばい人たちだった。またメンバー間では世界的に有名な魔法使いの物語の登場人物で呼び合っており、私はジェイコブと呼ばれた。

ちなみに、ITの世界ではコンピュータについて知り尽くした達人のことを、ウィザード(魔術師)と呼ぶらしい。



~ 1か月後 ~


渡は他の魔術師クラスにレベルの高いメンバーから学び、すくすくと育っていた。

ちなみに学んだことは、匿名性の高いツールの利用方法、効率の良いDDoS攻撃やパスワードクラッキングの方法など、またホワイトハッカーとの心理戦に耐えうる知識も詰め込まれた。


ジェフ「じゃあそろそろ研修期間は終了だね。明日からこのシステムの管理を任せるよ。」

そして任されたものは、仮想通貨の取引システムだった。


ジェフ「よく障害を起こすんだけど、これはうちの稼ぎ頭だからね。最近は日本人の顧客も増えてきたから、日本人向けのサポートを頼むよ。」


渡の頭はすでにいっぱいだったが、顧客の名簿と残高をみると驚いた。

小さな国なら買えるレベルの資産、それに日本の裏社会を牛耳っている組織や、偽名を使っているが大手組織のトップの名前が記載がされていた。(偽名で登録はされているが、備考欄に本名が記載されている)


ブーブー

渡はスマホの電話に出た。

渡「はい。JBCコンサルティングです。」

電話の相手「あーすみませんが、お宅のシステムを使っている佐々木です。」

渡「はい。佐々木様ですね。どうされましたでしょうか?」

佐々木「いやね。ドルの口座が止められてしまって換金ができなくなっちゃったのよ。でね、お宅のシステムからおろしたいんだけど、最早でいつかな?」

渡「本日の午後1時には出金が可能ですが、どちらにご入金ですか?」

佐々木「銀行が止められちゃっててね、手渡しがいいんですよ」

渡「手渡しですね。少々お持ちください。」

保留にする


渡「ロンさん(上司)手渡しって大丈夫でしたっけ?」

ロン「うーん。まぁ受けてないこともないけど、この電話逆探知されてるから、早く切った方がいいよ。もう5分くらい話しているから、そろそろ番地くらいまでは割れてるんじゃないかな」

 ピッ

渡はそう聞いてすぐに電話を切った

ロン「本当は一瞬でわかっちゃうんだけど、このスマホはGPS機能の設定を少しいじっているから、少しの時間なら誤魔化せるはずだけどね。」


渡はこの警察との一件から、この世界が夢でなく、現実の世界であることを、改めて実感した。

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