第36話。副作用とダル王
『あはははは!!』
ラインと飛影の戦いから30分後
ラインの執務室で治療が終わり完治したラインと暇でしょうがなかったダドマが大きな笑い声をあげていた
「ちょっ!!もうやばい!!腹がいてぇ!!」
笑いすぎで腹を抑えているダドマ
「息が…息ができない!!あはははは!!」
二人が笑う原因はヘリオトロープを使った飛影である
「お前らうるせぇ!!」
今の飛影の姿は手足が棒で眼や口は・である
身長というよりも全長は20cm、大声で叫んでいるつもりでも、囀りにしか聞こえない
「わ…悪いな…」
なんとか起き上がるダドマは何とか真剣な表情になる
「しかし、なんでその姿になったんブフゥ!!」
と思ったら堪えきれずに吹き出す
「最後の魔法の反動なのか…あはははは!!」
ラインも一瞬で笑い転げる
「なりたくてなった訳じゃねぇ!!」
「俺の予想だと…あはははは!!」
話がまるで進まない、飛影と眼を合わせた瞬間に笑ってしまう
「やばい…ほんとに死ぬ…」
大きく深呼吸をして心を落ち着けようとするライン
「今すぐ死ね!!」
『あはははは!!』
もともと飛影もこんな風になるとは思ってなかったのである
魔法使い殺しをしていた時に、他の魔法を使ってみたいと考えて修得したヘリオトロープ
だが、他の魔法を使う魔法
魔法はなんでもありだが飛影のそれは対価無しにするならば、本来の威力の1%も発揮できないものになる
同じ出力を求めるのであれば対価は当然必要になる
飛影が考えた対価は弱体化
使用した魔法に比例して弱体化の時間が長くなる対価である
飛影としては形はそのままでただの人間レベルに弱体化するものと対価を設定したはずであるが、余りにも強力すぎる魔法のヘリオトロープの反動は、人間レベルでは無かった
身体の縮小化に加え、戦闘力は赤ん坊にも瞬殺されるレベルである
試しに飛影は使用して永久封印を誓ったのである
「ってことだ…」
そんな事情を説明する飛影
「しかし、他の魔法を使用できる魔法か…強力だな」
今度こそ落ち着いたダドマ
「まぁもう使うことは無い!!」
断言した飛影。この姿はもはや恥である
「へぇ…まぁそれだったら私としては嬉しいかな…」
殺し合い最強の魔法が打ち消されるのはラインとしては酷く面倒なのである
「それでその姿はいつまでなんだ?一時間とかか?」
「いや、半日とかじゃないかな」
ゲーム感覚で時間を予想する二人
「75…」
ポツリと呟く飛影
「おっ…俺の勝ちだな」
一時間と予想したダドマ
「なんだ…以外と短いんだね」
逆に半日と予想していたラインは悔しそうにする
「ちげぇよ!!75時間だよ!!」
『75時間…』
二人の予想を大幅に上回っている
『あはははは!!』
ようやく落ち着いたダドマとラインが笑いの渦にはまる
「あははは!!三日もその姿かよ!?」
「なっが!!…長すぎでしょ!!あはははは!!」
「…お前ら殺すぞ」
本人的には殺気を爆発させてドスの効いた声を放ったつもりだが
小動物がなんか言っているようにしか聞こえない
「どうする!?カガリに会う!?」
「いったらお前らみたいになるのが落ちだからな…断固拒否する!!」
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そんな飛影の大ピンチ中メリアでは
「母上遊ぼう!!」
リラコが久しく暇そうにしているセツネに突撃する
「うぐ…」
椿と御飯を食べていたため、力など入っていない腹に衝撃が襲う
「大丈夫?」
「大丈夫だ…逆流はなんとか防いだ」
何か胃液のようなものが込み上げたがなんとか水で飲み込み危機を脱出するセツネ
さすがに女王が子供にタックルされて吐いたなどと情けないことにはなりたくないセツネの気合いであった
「セツネさんは本当に…女王とは思えないよ」
椿の知っている王族の姫は活発ではあったが、ここまで男勝りではなかった
飛影の影響かと軽く疑ってしまう椿である
「それで母上遊ぼう!!」
飯を食べようとしているセツネの腕を掴み今すぐ連れていこうとするリラコ
「めんどい、疲れたし寝る」
近頃飛影のお陰でダル王から離れたセツネであるが、久々の飛影がいない日
36時間くらいは寝て過ごそうとご飯を食べながら予定を決めたセツネ
(セツネさんはある意味尊敬できる…)
まさかの即答に苦笑いを浮かべた椿
「えぇぇ!!良いじゃんかいつもあいつと遊んでるんだから良いだろ!!」
断られて更に腕を揺する
ご飯が食べられないことに腹ペコであるセツネは多少のイラつきを覚える
「あいつ?…あぁ飛影のことか…」
いつも遊んでいるという事実を考えると確実に飛影以外の選択肢は無くなる
器用に逆の手にフォークを持ち変えて食事の続きを行う
「あいつがいつも母上と遊んで…父上よりも一緒にいるじゃないか!!」
「それは間違いだ!!飛影が私とではなく私が飛影と遊んでいる」
『…?』
違いがわからない椿とリラコ
セツネとしては意思として自ら飛影と遊んでいることを伝えようとした言葉である
そして、二人が考えている間にセツネはちゃちゃっと食事を終える
セツネが言いたかったのは強制ではなく自主的であるという点である
「セツネ…たまにはリラコの相手してやってくれよ」
ささっと軽くリラコを気絶させて惰眠を貪ろうかと考えていたセツネ
そんなセツネの動きを止めたのは一人の男性でセツネの夫である
普段から色々な意味で忙しいセツネの代わりにリラコと遊んでいる
セツネの大の親友である飛影とは仲良くしたがっているが、悲しいことに普通の人間である夫に飛影の興味が沸くこともなく無関心を貫かれている
少しくたびれた男性という外見でセツネ曰くなんか惚れたということだ
だが夫との仲は良いことは良いのだがセツネの優先順位が飛影であるため、あまり二人きりという状況が無い
結婚したての時は、近付くの禁止と椿のお叱りを受けた飛影は一ヶ月ほど国を離れていたが、飛影が何も言わずに離れたため、セツネは仕事を全く手をつけなかったという事件が発生したため今は許されている
そんなわけで色々と仲が良すぎる二人は周りからしたら扱いづらすぎるのである
だが今回は飛影がキチンと断りを入れて短期間であるため、周りとしてはチャンスなのであった
セツネがその旨を椿に説明していた際に、話を聞いた侍女が一気に広めて夫とリラコの耳に届いたのである
「ぇぇ~」
物凄い嫌な顔のセツネは決して嫌いだとかそんなことはない
母親としての愛情は持っているセツネだが、今はとにかく惰眠を貪りたいのだ
つまり全てを子供と遊ぶのに慣れている夫に任せたい
飛影がいなくなった瞬間にダル王に舞い戻っていた
「遊ぼうぜ~!!」
リラコがセツネの腕をブンブンと揺する
僅か五歳だが理解していた…ここで手を離したら負けだと
「やだ」
頑なに断るセツネ
これではどっちが子供だかわかったものではない
「くそぉ…こうなったら実力で…」
「おっ…と?」
椿の警戒センサーが警報を鳴らす
椿は寄生者として飛影から魔力を奪っている
10年に一度魔力が絶対強者級に届くのだが、それ以上に魔力が貯まると身体が耐えきれずに危険な状態に陥る
そのため、魔力を放出する発散日を設けている
今の椿は発散日後で通常の人間と変わらないレベル
五歳児の圧力に気付いたので、すぐさま立ち上がり距離を置いた椿
夫も危険を察知して少し距離を離していた
《十爪十色》
「おぉ…魔法か…」
メリアの王族は全員が強力な魔法使いで、それはリラコとて例外ではない
リラコの生まれた時から使用できる魔法十爪十色は強化魔法である
セツネを掴んでいる右手と左手の爪が光を放っていた
《十爪十色・力強化》
親指の赤い爪が光を帯びる
リラコの力が増す
(おっ…いい感じだな~)
簡単には引き剥がせないほどの力で掴まれるが、悲しいことにリラコは五歳児である
手が小さいため逃げ道は楽に確保できる。セツネは少し腕を捻ると簡単に外れた
「よし…少し遊んでやる」
セツネは笑いながら若干の魔力を開放する
《威雷・気絶する程度の雷手》
セツネの右手に雷が纏われる
《十爪十色・速度強化》
今度は青色の爪が光を帯び、同時に赤色の爪の光が消える
力は無くなったが、速度を強化したリラコがセツネの背後に移動して
「うきゅう…!!」
反射的に繰り出したセツネの右手に触れてしまい気絶する程度の雷が全身を巡り、一瞬で意識を飛ばす
「あぁリラコ!!」
夫はすぐさま、リラコに駆け寄り生死を確認する
「まだまだ甘いな」
キチンと手加減はできたので、心配していないセツネ
「セツネさん」
ガシッと椿がドヤ顔のセツネの肩を掴む
「っ!!?」
セツネの身体が硬直した
まるで石になったように動かない
そして一般の人間レベルである椿の肩を掴む力なのに何故かセツネは抜けれる気がしなかった
「人の家の教育にけちつける気はないんだけど…ちょっと座ろうか?」
椿は笑っていた
しかし目が笑っていない
「…申し訳ありません。って感じで許してくれ…ないよなぁ~アハハハ!!」
女王が正座をした
そして椿の説教は二時間近く続いたという
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