第34話。ド腐れチート野郎
セツネが子供を生んだ
名前はリラコ
名付け親は飛影だった。それはセツネたっての希望である
セツネの夫である人物もセツネと飛影の気持ち悪いくらいの仲の良さは知っていたため、了承する
リラコは今五歳でやんちゃな年頃である
飛影とセツネは軌道に乗った世界一を維持するための仕事を行っている
そんなわけでいつもリラコと遊んでいるのは夫である
結婚しても女王のままのセツネは飛影と地べたに寝転がりながら書類の山を片付けていた
「お前…良いとこ住んでんな~」
「っ!!?」
飛影でもセツネでもない声
易々と侵入できるほど白の警備はザルではない。そもそも女王の執務室だ。当然ながら厳重な警備は敷かれており、更に魔王である飛影が同室であるにも関わらずにだ
セツネは跳ね起きて侵入者を睨み付ける
飛影は寝転がりながら侵入者の顔を見て気配がなかった理由に納得した
「久しぶりだな…ダドマ」
「50年ぶりぐらいか?」
億年程生きているダドマぐらいになると50年程度はどうということではない
飛影の反応からセツネは敵ではないと判断し、再び寝転がる
「何しに来たんだ?」
「魔王の会合の収集だ…お前だけ世界移動できないからな」
たまたまお茶を飲んでいたダドマが飛影とラインが顔合わせしていないことに気付いて急遽企画したものだ
「…わかった」
問わなくとも拒否権はないことを理解した飛影
自身もあと一人の魔王のことは気になっていたので溜め息混じりに立ち上がる
「んじゃあセツネ…今日は仕事てきとうに切り上げといて」
「了解した~」
ゴロゴロと転がりながら書類を片付け始めるセツネ
セツネにとっては飛影との共同製作が面白いだけであり仕事熱心ではない。なんせ元々はダル王である
「じゃあ許可寄越せ…」
「なんのだ?」
「移動魔法使うんだよ」
反則級の昔ならば許可なしで移動できたが、今の飛影は絶対強者級である
ダドマの方舟で移動させるには許可が必要になる
「許可」
飛影がその一言を言うと同時
《方舟》
ダドマが魔法を発動する
「あ~暇だ…リラコと遊ぶかな」
立ち上がったセツネはベッドを見て首を必死に振り睡眠という誘惑から目を逸らした
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「…へ~ここが天界か!!」
ダドマの方舟で世界移動した飛影は初めての異世界に興奮が隠しきれない
「ここらへんは天使エリアだな」
魔界と人間界はほぼ同じ大きさだが、天界は遥かに広い
直接ラインのところに乗り込むのは楽だが、少しは観光させてやろうというダドマの優しさでラインがいる宮殿より少し離れたところに移動した
普通のメリアのような街並み
違うのは街人が全員天使の翼が生えていることだけである
「へぇ~!!ほぉ~!!」
「キャラ変わったな…」
飛影の感情丸出しな姿を見てダドマは軽く驚いていた
最後に会った時は時々負の感情が表にでる少年であったが、今は感情豊かになっている
「…こいつら…強いのか…」
ぼそりと危険なことを呟いた飛影
「ちょま!?」
言うが早いか、飛影は魔剣を抜く
「落ち着けよ!!」
《天変地異・頭を冷やせ》
今にも通行人に斬りかかりそうかな飛影を巨大な水の塊が包み込む
「がぼ!!」
天使のため、一般人より遥かに強い天使だが巨大すぎる魔力に通行人であった天使達は全力で逃走する
身動きとれない飛影
大量に圧縮された水のせいで指一本程度しか動かせない
さらに圧力により、身体中が悲鳴をあげる
「ごぼぶごばぼう!!(このくそやろう)」
《炎舞・無炎》
飛影の魔法は酸素を炎に変える
空気が無い水の中、飛影は魔法を構築する
水の酸素を使用し、水素として飛ばし水の絶対量を減らしながら無炎を展開し、ダドマの水が一瞬にして蒸発する
「おぉ…これはもう洒落にならんくらい強くなったな」
その結果に不満ではなく良い喧嘩相手ができて笑みを浮かべる
「なにすんじゃボケェ!!」
身体中についている水分も炎でまとめて蒸発させながら、ダドマに向けて構える
「いや…常識で考えろよ…お前ただの馬鹿だろ…」
呆れて溜め息を吐くダドマ
「常識なんぞくそ食らえだ!!」
「その意見には真っ向から賛成できるがな…どうする?周囲は誰もいないみたいだからな…やるか?」
先程の飛影の無炎を見てテンションが上がっているダドマ
「はは!!」
飛影は笑いながら後退し、魔剣を抜いた
答えはYesだ
「ちょうど良い!!どれぐらい追い付いたのか知りたかったからなぁ!!」
「よし…」
対するダドマは無手で腕をだらりと下げて手のひらだけ飛影に向ける特殊な構えを取る。その手には輝く緑色の鱗が生えている
二人して魔力を解放
《炎舞・無え》
《天変地異・無げ》
《幻想魔境》
「ちょっと君らおちつこうかぁ!!!!?」
そんな二人の勝負に水をさす輩が登場すると同時に不思議な光が飛影とダドマを包む
「やべぇ!!?」
目の前で焦るダドマだが、飛影は現状の理解ができていない
「とりあえず人の世界で暴れるなよ!!」
青年が天使の翼を羽ばたかせて着地した
天界の魔王ライン
大人しそうな青年の外見だが殺し合い最強の魔王
ダドマが焦っている理由はその殺しあい最強の魔法の発動条件を満たしてしまったからである
飛影は理解していないが、現状はラインのさじ加減一つで首が飛ぶ
「ん?君が新しい魔界の魔王の飛影か…初めましてだね、私は天界の魔王ラインだ」
「お前…強いな…それに面白そうだしよろしく!!」
簡単な挨拶として二人は握手する
「そういえばお前がド腐れチート野郎か」
ふと飛影はカガリが言っていた天界の魔王の情報を思い出す
「な!!?」
絶対強者級から言われ続けているが、初対面の飛影にまで言われるとは思っていなかったラインは犯人と予想したダドマを睨む
それをダドマは完全に無視
ただその反応は普通にダドマに無視されることも多くラインには反応がわからない
「カガリが言っていたぞ」
そして張本人からの暴露
「あいつかよ!!どんだけ広めれば気が済むんだ!!?」
にこやかに良い表情で笑うカガリの顔が脳裏に再生されるライン
「あれ?」
そしてラインもふと思い出す
今は天国で食っちゃ寝をしているであろうカガリが言った言葉
《愛しい愛しいちょっぴりだけど弟子》
「もしかして、飛影ってカガリと認識あるの?」
「あいつには色々と教えてもらった」
そして大きすぎる恩もあるがそれを飛影は口には出さない
「あ~じゃあカガリが言ってた弟子って飛影のことか」
「わからんが多分そうだろう…」
《ただ来るだけだったらできるけど、あんたに勝ったら面会させてね》
別れ際にカガリが言った言葉である
しょうがないと思いながらも、ラインも魔王であり絶対強者級だ
戦いは大好物である
「ちょっと戦わない?ルールは殺し無しだけ」
初めて会った魔界の魔王
前回の魔王であるアギトはとても弱く面白味がなかったため、飛影はどうだろうかと試したいライン
飛影はニヤリと笑う。考えるまでも無く肯定の仕種だ
「ちょっと待て!!」
両者の合意が取れた後に横槍を刺したのはダドマであった
「なんで俺が戦えないことになってるんだ!?」
絶対強者級で人間界の魔王ダドマ
例外無く例外無く喧嘩、殺し合い、戦いは大好きである
「お前とは一度やっただろ…負けたが」
「ダドマは戦ったじゃないか」
新鮮味が無いと拒絶した二人
「くっそぉ」
とても億単位で生きてるとは思えないようなレベルで本気で悔しがるダドマ
「どこでやる?」
「空」
飛影の問いにすぐに返答し空を指差す。地形が壊れないようにするための配慮である
メリアでの仕事をしていて身に着いた配慮だ
「ダドマ結界よろしく」
「頼んだ!!」
ラインは飛翔し飛影は跳躍し空へ揚がる
「ち!!」
ダドマは全魔力を使用して、結界を張る
上空100メートルの地点
高さ二キロ
横幅三キロ
奥行き一キロの巨大な結界が展開された
「さて…やろうか?」
「いつでもいいぜ!!」
両者の距離300メートル
魔王同士の戦いが始まる
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