第21話。旅立ち
飛影はギルギアから負った傷を癒すことに集中するため、静紅と不貞腐れてゴロゴロしていた宿に戻って寝ていた
4日程、安静にしていると災厄である再生力で完治したことを確認すると、ベッドに座って、コートのポケットから図書館から奪った地図を取り出す
見開きになっている世界地図から今いるアイステンペストの位置を調べる
幸いにアイステンペストは比較的に見つけやすい
飛影は現在位置を割り出すと付近の国を探す
「…」
(駄目だ…どこが面白いのか…わからん…とりあえず出るか)
1か月分くらいの金を支払っているため居座っていても文句は言われないが、一つの国に居座る必要性が無かったため、窓から飛び降りてアイステンペストの結界を超える
(投げるか)
飛影はてきてうに魔剣を横軸に回転させながら上に投げる。クルクルと回りながら地面に落下
「あっちでいいか」
魔剣が指し示す西へと飛影は向かう
(強いやついるかな)
飛影は逆立ちをして歩き出す。筋肉トレーニングである
ダドマとギルギアとの戦いでの敗北は飛影を大きく変えていた
そして幸いにも、飛影が向かうであろう先は大陸最強の国で大陸最強の剣士がいて、最高峰の剣である魔剣所有者がいる国であった
今まで隣にいた椿はいない
(椿は居場所あるからいいや)
無理矢理連れて行くこともないと判断して、飛影はさっさと国から離れていった
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飛影がアイステンペストを出て一週間後
「あれ?なんで飛影君が迎えに来ないんだろう…」
そんなことも知らず、椿は呑気に城で飛影を待っていた
スノウとしては椿が滞在する期間が延びているためけっこう嬉しかったりする
「確かに遅いね」
飛影が迎えに来ても永住を説得する気満々であったスノウ
さすがに遅すぎるとは思っていた
「…怪我して動けないとか!!?…ってないね」
椿の中ではギルギアに吹き飛ばされたのが最後に見た姿であり軽く国から吹き飛ばされて重傷で動けないかもしれないと
しかし、飛影に限ってそれはありえないと自己完結する
「とりあえず、城の者に捜させる?」
「お願い!!」
スノウの提案に頭を下げる椿
「わかったわ」
椿を安心させるためにすぐにでもとスノウは立ち上がる
「私も行く!!」
完全に自分のことなのでスノウばかりに任せてはいけないと椿も立ち上がる
二人で手を繋ぎ走る姿は城の者にとっては微笑ましいことであった
運悪く捕まったシュガーが飛影捜索を頼まれた
ダドマやギルギア、飛影や静紅といった頭おかしいレベルと比較しなければ、一応はかなり有能な部類のシュガー
ものの二時間程で飛影の足取りを掴んできた
その事を聞いた椿とスノウは嬉しそうな表情をしているのに対し、シュガーは言いにくそうな表情であった
「彼はすでにこの国を出たらしい」
『え?』
一瞬だけだが、確かに椿の時が止まった
「…一週間前にすでに旅立ったそうだ、承認が逆立ちして下山する彼を見たらしいが……逆立ち?」
「はぁ!!!?」
(勝手にどっか行きやがったぁぁあぁああああああああ!!!!)
飛影の行動に怒りの余り地面を思い切り踏みつけまくり、数回踏みつけてスッキリすると
「よし!!追いかけてぶん殴る!!」
すぐに立ち直る
「駄目!!」
「それは駄目だ!!」
しかしすぐに二人に却下される
「椿はただの子供でしょう!!?」
アイステンペストの雪山は過酷である
ある程度の道は整っているが、ただの人間の子供である椿が一人で下山することは不可能である
万が一、下山が成功しても椿ではとてもじゃないが生きれない
山賊か盗賊、飢餓に疲労とあげればキリが無い
「それに君が今から追いかけたとしても到底追い付くなんて不可能だ」
シュガーは魔王の試合を見たので常識外れすぎる飛影のことは一端だが理解はできた
ただの子供の足と体力で追い付ける筈がない。例え逆立ちをしていても
「でも!!」
椿は二人の正論を理解できるし、自分でも無理だと思ってはいる
しかしそこは退けないものがあった
椿にあるのは勝手に置いていった飛影への怒りである
「無理だ…諦めろ」
シュガーの正直で残酷な言葉
傭兵を雇うにも椿の現資金ではそれも一週間程度
「…わかった…諦める」
椿はそれを理解して、引き下がった
しかし
「今は諦める…シュガーさん…私を鍛えてほしい」
諦めさせたのはシュガーの思惑通りだがその後の言葉は予想外である
「飛影君に追い付けるように…一人でも生きていけるように…そして飛影君を全力でぶん殴れるくらい」
椿の眼
それは本気であった。覚悟を決めた眼である
「…じゃあ私は椿が立派になるまで城に住む許可を取ってくるね」
未来予知などの能力は無いが、先が予測できたスノウは父である王の元へと駆け足で向かう
「いいだろう…だが根負けしたらすぐに止めるぞ」
スノウの予測通りにシュガーは椿の願いに応える
「ありがとう!!」
「それと君には知識が無いからな…姫様と一緒に勉強もすることだ」
「…頑張る!!」
飛影をぶっ殺す気で一発殴る
と椿は覚悟を決めた
今までのように飛影に護られるだけではないようになるために
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その頃飛影は逆立ちに飽きており、アイステンペストから100キロも離れていない小さな村の近くの森にいた
飛影の周りにはマジックアイテムがその希少さを嘲笑うかのように大量にあった
てきとうにあるものを全て盗ったのでどんな効果があるのかを知らない
逆立ち歩きでここまでやってきたが、飛影は元々馬鹿みたいに力が強くあまり意味は無いように思えた飛影はトレーニングに有効活用できないかを考えての行動である
発動させて効果を理解して、ポケットにしまう
そんな行動を現在四日間ぶっ続けで行っている
休み無しで行った結果か、それこそ無数に感じたマジックアイテムも飛影の周りを囲む程度には減っている
中には起動すると、起動した者に対して襲い掛かる呪いのマジックアイテムもあったが、特に気にしないで消し飛ばしていた
「ん?」
飛影はオペラグラスを発見し、手にとって魔力を注ぎ付ける
「…」
それはマジックアイテムの説明書だった
オペラグラスを付けている方の視界にはマジックアイテムの効果が浮かび上がっていた
「…」
飛影はその場で肩を落とし、物凄い脱力感に襲われた
(最初にこれを見つけてれば…)
飛影の考えている通りに最初にこれを見つけていれば時間は半分以下に短縮できた
溜め息を吐きながら見渡して効果を読んでポケットに入れていく
(ん?)
飛影は四つのミサンガに眼が止まった。効果には重さ変化と記載されていた
「…」
飛影はミサンガを付け、オペラグラスを通してみると使い方も記載されていた
「…一トン」
飛影は説明書の通りに重さを宣言する
瞬間
ベシャと飛影の右腕が地面に縫い付けられるように引っ張られる
(…なるほど)
ミサンガ一本が重さ一トンになっており、その重さで地面に縫い付けられていた
飛影が所持しているのは合計4本
(…これは使える)
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