第20話。逆襲
「…」
リングが原型など欠片も残さず崩壊しているため、簡易的にも修理を行うことになっていて、表彰式が行うまで二日ばかりの時間が必要となっていた
その間、飛影と静紅はずっとふて寝していた
素晴らしい位にふて寝である
二日二晩ずっとゴロゴロ
ときおり思い出したかのように勢いよく起き上がり、ふて寝
原因はなんと言ってもダドマとギルギアに圧敗したことである
あそこまで実力差が離れた敗北
勝ち目など僅かにも無かった戦い
飛影は意外と負けず嫌いであった
静紅はデスパラシリーズが盗れなかったことにかなりショックを受けていた
同時に二人は慢心していたことを思い知らされた
どんなに強くても負けると解っていても勝負にはなると考えていた
しかし結果は勝負にすらならなかった
井の中の蛙大海を知らず
言葉通りに思い知った
「…」
ゴロゴロォとベットの上を転がる飛影と静紅。
少し落ち着いて俯きベッドに頭を擦り付けたかと思えば、ゴロゴロ転がる
それの繰り返しである
布団もシーツも枕すらベットの上にはない
最初は布団にくるまっていたのだが、いつの間にか床に落ちていた
その間一才会話は無い
椿も元気付けようと頑張ったのだが、匙を投げたほどである
子供らしいといえば子供らしい反応だ
「ふ…ふふ」
「よし…決めた」
そして何かスイッチが入ったかのように飛影と静紅は呟いた
「貰えないなら奪ってやる!!」
「絶対にぶち殺す!」
二日のふて寝で考えが固まった二人は跳ね起きる。災厄と化物、結局は物騒な答えに行き着いた
「授与式はいつだ!!?」
「…今始まったわ!!」
窓を見ると花火が上がっていた。それは表彰式開始の合図である
窓を開けるよりも早く壁をぶち壊すと二人は全力で向かう
「よし!!殺す…これはもう殺すしかない」
もはや飛影が壊れてきていた
会場を飛び越えると丁度ナイスなタイミングでデスパラのナイフが手渡される瞬間であった
騒々しいほどの歓声
その中心
リングの欠片は全て撤去されているらしく土の上に簡易的なステージを作成しており、そこにダドマとギルギアはいた
「飛影君!!」
「任せろ!!」
阿吽の呼吸
静紅が呼び掛ける前に飛影は魔力を全解放
《炎舞・大玉》
半径一メートル程の緑色の炎を構築し放つ
当然ながら殺気と魔力全開の奇襲を奇襲と呼ぶかは別にして、ダドマとギルギアには察知されていた
「懲りねぇな」
《天変地異・大玉》
呆れたような嬉しそうな笑みのダドマは飛影の攻撃に水の球で相殺させる
「今!!」
《次元破壊》
静紅は一度も見せたことは無い魔法を発動する。
魔力で魔法が使われたことは察知されるが、相殺した油断を突く
空間に亀裂が生じる。
不気味な真っ黒な亀裂に静紅は躊躇無く腕を突っ込むとそのまま黒い亀裂の中に入っていた
そしてもう1つ黒い亀裂が渡そうとした王の手の近くに出現し、王もダドマもギルギアも気付くことは無くそこから静紅の手が現れてナイフを奪う
『あ!!?』
ダドマとギルギアがようやく気付くがすでに遅い
「こんなこともあろうと考えてた新しい魔法よ!!ってことで飛影君!!またね!!」
静紅は裾から魔剣の一刀を取り出して飛影に投げ渡す
《次元破壊》
静紅の背後に等身大の亀裂が現れる
「またな!」
再会を誓う挨拶
契約は完了した
飛影が魔剣をキャッチしたのを見届ける前に静紅は亀裂に入る
さすがは盗賊である
鮮やか過ぎるとしか言えない手並みにダドマとギルギアも反応出来なかった
「あはは!!」
飛影は笑いながら魔剣の一刀をキャッチして抜刀
二刀流である。とりあえず1本より2本の方が強いという単純な発想
元々、腕力は充分に備わっていたため片手で振り回していたので2本に増えようが問題は無かった
「ほぉ…」
その飛影の笑い声にイラついたギルギアが魔力を解放する
《グラビティ・拳》
《炎舞・双剣焔》
ギルギアが飛影に跳躍して接近
「おっと」
ダドマは被害が出ないように結界を張ると同時、重力を纏った拳と炎を纏った刀がぶつかりあう
「このぉ…」
「ふはは…このチビが!!勝てると思わぬことじゃ! !」
奇跡的に魔剣はヒビも入っていないが、ギルギアも無傷である
「死ね」
飛影は刀で拳を受け流しギルギアのバランスを大きく崩す
飛影はそのまま反転し、首を斬り落とすつもりで切り裂いた
しかし飛影の腕が痺れただけで、ギルギアの皮膚には傷一つついていない。再び皮膚に黒い鱗のようなものが一瞬だけ見えたが直ぐに消える
「ガキの割りには中々じゃ」
続けようとした飛影の拳を弾き飛ばし、無防備になった腹にギルギアの拳が突き刺さる
「ぐっ!!?」
空高く舞い吹き飛ぶ。国の城壁を飛び越え雪林に激突する
「…いつか殺してやる」
圧倒的な実力差
飛影はすぐに意識を失った
「ふむ…あれで、死なぬか…」
割りと殺す気であったギルギアは吹き飛ばした後に、飛影の魔力が感じ取れることに少し驚いていた
「とりあえず、ナイフは諦めるか…金だけ貰って帰るぞ」
何故か笑みを浮かべているダドマ
「次は何をするのじゃ?」
「冬眠…五年くらい寝る」
ダドマとギルギアは二人とも年齢は億を越えている
たかだか数年眠ることも日常である
ダドマは賞金を受け取ると優勝の一言も言わずに魔法を発動
《方舟》
いきなりダドマとギルギアがいなくなる
現状を正しく認識できているのは果たして何人いるのか
今の状況を一言で表すと
ぽかーん
である
「何が何やら…」
「飛影君大丈夫かなぁ?」
スノウは脳が状況についていけず、椿はマイペースであった
「ナイフ~ナイフ~♪」
今回一番の勝利者は静紅であった
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