第10話。ジソフ国到着
40キロほど南に向かってついに街についた飛影と椿
「うわぁ~大きい!!」
飛影と椿の眼前には立派な城であり、賑わっている城下町
椿ははしゃぎながら噴水を眺めていた
「人が多い!!」
「獲物が多い」
同じ人が多いという感想だが、飛影と椿では表現が違っていた
飛影がニヤリと笑みを見せて今にも斬りかかりそうな雰囲気を出す
「ストップ危険思考!!」
椿は問答無用のハイキックを飛影に食らわせる
だが当然のように飛影には効かない。垂れ流ししている魔力である程度の攻撃は意味が無く防がれてしまう
「殺すの禁止!!」
「何故?」
当たり前のことが飛影にはわからない
「とにかく駄目!ここにいるのは普通の人だから!」
椿の基準では悪いことするのはOK
普通の人はNGということである
「…わからんが、まぁそうしよう」
飛影は本当にわからないがとりあえずで頷いた
「それで…どうするんだ?」
「とりあえず…泊まるところ探そう!!」
まずは楽しむための拠点が必要だと椿は判断して宿を探すことにした
この国の名前はジソフ
小国であるが遺跡の森に一番近い国として盗賊やトレジャーハンターが数多くこの国を根城にしていた。盗賊達にとってもこの国を襲うメリットは無く
宝を売ったり、食料を購入したりと遺跡の森によって国が繁栄していた。小国としてはあり得ない程に賑わっている
貴重な宝があり、商人の行き来も激しく宿の数は多い。そのため宿を見つけるのに時間はかからなかった
「いらっしゃい…可愛らしい旅人と騎士さんかしら?お父さんかお母さんは?」
宿に入ると温厚そうな女将さんが二人を出迎える。飛影は後ろに下がり全て椿に任せる態勢である
女将さんは飛影が背負っている刀をまさか本物とは思わず騎士ごっこでもしている少年だと思っている。だが、飛影としてはいつでも殺す準備は整っている
後は殺気を込めて腕を一振りするだけで、目の前の女将さんはバラバラになるだろう
「お父さんは商人で今仕事してるの!!私と飛影くんはお留守番で宿に泊まっておいてって」
椿の即興の嘘、女将さんは人が良いのかそれを信じる
初めてのお使いだろうと考えていた
「そうなの~偉いわねぇ…大人一人子供二人でいいかしら?」
「お父さんは仕事先で泊まり掛けだから子供二人で!!」
「じゃあ二人で9,000Gね」
ここで余談だが9,000Gとは簡単に言えば9,000円のことである。宿としては安い。飛影は寝床などどうでもいいし。椿は岩じゃなければ良いので安宿である
「おい…俺お金は無いぞ」
「えぇ!!?」
払おうと飛影を呼ぼうとした椿に衝撃の真実を伝える
飛影は基本的に魔法の道具しか集めない
一応は宝石や金がトン単位でコートに入っているが、この国のお金はもっていなかった
「あら?もしかしてお父さんが渡し忘れたのかしら?」
女将さんとしても判断に困っていた
さすがに可愛らしい子供二人を路上に放置はできないので父親が来た時に会計しようと考えていたところで
「これならある」
飛影が金の粒を10個程カウンターに出す
「…」
女将さんの時が止まる。目を丸くする女将さん
その様子を見て飛影と椿は足りないと判断した。本来であれば一粒で5泊程度は問題なくできる。本来であればもっと高い値段になるが安宿の女将としては金の値段を正直に理解していない
「…飛影くん…足らないみたいだから…まだある?えっと…お父さんからもらったそれ」
「…ん」
再び10個追加される
「いやいやいやいや!!そんなにいらないわよ!!これだけで充分」
女将さんが取ったのは一粒だけ
「…これだけでいいんですか?」
椿も飛影も価値がわからない。飛影がわかるのは魔法の道具の価値だけである
塵芥程の魔力しか感じない石ころ
それが飛影にとっての金の粒の価値である
「充分さ!!けっこう良いとこの商人の子供なんだねぇ」
お釣りをいくつか貰い飛影はコートのポケットに無造作に入れ、部屋に案内される
子供二人が使用するには広すぎる部屋であった
大きな商人の子供だと思われたようで、粗雑な部屋ではなくこの安宿でも最上位の部屋であった
「わぁ~!!」
ベッドにダイブする椿
今までが土の上や草の上で寝ていたためふかふかの布団に感動を覚える
「凄いよ飛影くん!!これふかふか!!」
その場で跳び跳ねる椿
「…」
しかし飛影はそれを眺めているだけである。それを真似することは無い。飛び跳ねていたとしても1m程。その程度なら軽くジャンプするだけで可能であるため意味が若菜らだけだ
もともと荷物などない二人としても宿を取る意味はあまりなかったが、作戦会議を行うことで有用性をもたせることにした
「とりあえず…私は料理と服を買いたいな」
「特になし」
終了
僅か10秒で作戦会議が終了する
「あ~…お金のこともわからなきゃね…」
味気ないというより、純粋な子供心で椿は無理矢理作戦会議を長引かせる
「ん」
知識が恐ろしいほど無いことを実感した椿
覚えておいて損はないと確信する
「とりあえず金の粒をお金に換えよ?」
「それもそうだな…」
飛影が取り出した金の粒
この石ころが金になるのであれば、飛影としては提供するのに特に不満も無い
「問題は足元見られるかもってところかな…」
子供二人が換金しにいっても正しい価値をわからないからと思われかなり安くされそう。そんな椿の予想は大当りである
二人だけで行けば正規の換金の7割は削られる
「宿の人に聞いてみるとかどう?」
「知らん」
飛影は正しく自分のことを理解していた
ただ殺す。殺すだけだ。椿が言うように足元を見られても関係がない。殺すだけだ
だが、先程危険思考ストップを椿から言い渡されたため飛影は自重する
「投げやり!!?」
「これだったらいくらでも使っていい」
飛影はポケットから金の粒の山を取り出す。これは飛影にとって価値の無いもの
小さな子供の一握り
「量はある」
ポケットの中にはそれの20倍以上が入っている
「俺にとって価値がないから使えばいい」
飛影にとっての価値は魔法の道具である
石ころはいらないという考え
「わかった」
他にも大量の宝石や金塊を所持しているが飛影にとってお金になりのは金の粒という解釈だ。売るところに売れば軽く国家予算クラスはある飛影
「とりあえずこれ一粒で宿に泊まれるから、換金しないでこのままでいいよね」
恐ろしいことを言い出した椿
「いいぞ」
そしてそれに頷く飛影
椿が言っていることは10円のものを一万円で払って
釣りはいらねぇとっときな!!
と、常時買うたびに言うということである。格好いいダンディな行動だとは思うが散財にも限度があるだろうとツッコミを入れる者がいない現状
カオスである
「それじゃあ行こ~」
「ん」
そして彼等はジソフの街に繰り出した
それは初めて災厄の子である飛影が街に繰り出した日であり、この国ジソフが滅びた日でもある
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