特別企画『小説コンテスト模擬1次審査』してみた!
☆『窓の中のWILL』担倉 刻さん
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尾崎ゆうじ (小説コンテスト)模擬1次審査
評価シート
【注】 こちらは、今回年末特別企画として、尾崎ゆうじのnoteで限定で受け付けた小説コンテスト模擬1次審査の『評価シートおよび添削動画』の内容になります。
作者さんより許可をいただいたので、公開いたします。担倉さん、ありがとうございます!
皆様の参考になれば幸いです。
↓作品のリンクは下記をご覧ください。
(作者さんの作業タイミングによっては非公開になる場合もございます。ご了承ください)
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☆このたびは模擬1次審査にお申込みいただき、誠にありがとうございました!
誠心誠意評価をさせていただきました。
1 作品タイトル『窓の中のWILL』
作者名: 担倉 刻さん
作品リンク:https://kakuyomu.jp/works/1177354054922797115
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*本作のキャッチコピーとあらすじ引用(抜粋)
(キャッチコピー引用)
熱血漢、知性派、男の娘。高校生3人が異世界大縦断!
(あらすじ引用)
「何処の世界に観葉植物に襲われて勇士になる人が居ますか!」
「ここにいるだろよ、三人も」
「じゃあぼくたちって襲われ勇士なの?」
失踪したクラスメイトを探していた男子高校生たちが、突如異世界へ!
飛ばされた先は戦いを知らない、平和な国――でも、侵略者が現れたそうで?
3人は魔法で花にされた皇姫を救うため、そしてクラスメイトを探すため、
【伝説の勇士】として異世界をわちゃわちゃ大旅行することに!!
それぞれの青春、挫折、悩み、そのほかいろいろを描きながら、
ギャグもシリアスも伏線もなんもかんも全部ゴタマゼでお送りする、異世界コメディファンタジー!
主人公:16歳
朝読小説賞キャッチ:現代と異世界の両方で、俺たちの長い長い夏休みが始まる!
(以上、引用でした)
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2 受注日:
2020年 12月 24日
3 尾崎が作品を読んだ日:
2020年 12月 26日
4 各項目の評価・採点(各最高20ポイント(総計最大120ポイント)):
・作者さんから要望……第1話をネットの海に公開したのが1999年とだいぶ昔。あえて改稿せず。作品全体が古さを感じさせてしまうのかどうか、現代的な小道具を少しでも登場させて直したほうがいいものかどうか。
また、各小説サイトでなかなかPVが伸びないということもあり、本作はレベル的にどうなのか気になっている。
・はじめにひとこと……頑張って98話まで読みました!
まず担倉さんのおっしゃる通りで、基本的に小物類に関しては現代に合わせるべきと感じましたが、作品自体が古くさいとはそれほど感じませんでした。
文章は読みやすく書かれていて、内容も掴みやすくはあったので、要望いただいた箇所まですらすらと読めました!
しかしながら、いち読者として見た時には、きっと途中ヤメするだろうと感じました……。
※フル読み書評の評価モード・採点基準についてはこちら
https://kakuyomu.jp/works/1177354054921468074/episodes/1177354055085183727
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※〇→おもに小説・物語制作における基礎力に係る項目
●→おもに物語を面白く・魅力的にするための創造力に係る項目
(細目のpt=5…とてもよくできている。4…できている。3…どちらとも言えない。2…あまりできていない。1…できていない)
①[タイトルやあらすじ・掴み…… 12 pt/20pt]
〇興味を引くあらすじか、作品を読みたくなるか…… 2 pt
〇本文冒頭は読者の関心を掴みそうか………………… 3 pt
●ストーリーに対し適切で魅力あるタイトルか……… 3 pt
●キャッチコピー等の内容は読者に刺さりそうか…… 4 pt
②[キャラクター…………………… 11 pt/20pt]
〇人物の感情描写が適切で、共感できるか…………… 2 pt
●登場人物は魅力的か…………………………………… 3 pt
●台詞や行動で人物の本質が描かれているか………… 2 pt
●登場人物たちの関係性が上手く描けているか……… 4 pt
③[ストーリー……………………… 14 pt/20pt]
〇物語の方向性がはっきりしているか………………… 4 pt
〇展開に驚きや意外性があるか………………………… 3 pt
〇登場人物の設定がストーリーに生きてるか………… 4 pt
●読者を楽しませようと工夫しているか……………… 3 pt
④[文章力…………………………… 10 pt/20pt]
〇読みやすく、書きこなれた文章か…………………… 3 pt
〇用字用語に誤りがなく適切か………………………… 2 pt
〇会話や台詞に同時代性はあるか……………………… 3 pt
●内容に対し文体は魅力的か、ふさわしいか………… 2 pt
⑤[世界観、オリジナリティ……… 10 pt/20pt]
〇世界観や設定に矛盾はないか………………………… 2 pt
〇フィクションなりのリアリティを演出できてるか… 2 pt
●想定読者の興味、関心を引きつけられるテーマか… 3 pt
●アイディアが斬新か…………………………………… 3 pt
⑥[構成力…………………………… 13 pt/20pt]
〇大小のエピソードの中にもメリハリがあるか……… 4 pt
〇展開に緩急があり、テンポが良いか………………… 3 pt
〇終盤がしっかり盛り上がっているか………………… 3 pt
●物語の導入から面白いか。魅力的か………………… 3 pt
[おさらい]
・タイトルやあらすじ・掴み… 12 pt
・キャラクター………………… 11 pt
・ストーリー…………………… 14 pt
・文章力………………………… 10 pt
・世界観、オリジナリティ…… 10 pt
・構成力………………………… 13 pt
5 総合得点は──
【 70 】pt!!
(〇基礎力系…… 28 pt/70pt)
(●創造力系…… 42 pt/50pt)
【コメント】
(良かったところ)
・全体的に1話1話のヒキがしっかりしていて、次のページへの以降はスムーズだなと感じました。敵側の動きも適所で挿入され、3人に降りかかる次の災厄がどんなものかという期待と心の準備ができるよう、配慮されていると感じられ、好印象でした。
・メインテーマ(だと私は感じた)の部分は、あまり市場でも取り上げられることのないテーマなのかなと思います。その目の付け所は良いと感じました。異世界に召喚(?)される勇士3人(個人的には勇者とするか、まったく別の名称(聖闘士とか)に変えたほうが無難に感じますが)。彼らは正義感から(抵抗はしつつも)異世界を支配する悪なる存在を倒し、魔法によって植物となりつつある皇姫を救おうという道すがら、平和ボケにより自ら状況を改善しようとしない異世界の住人たちに、彼らは違和感を覚えていく……というのが、「ははぁ、なるほど」と思わせてくれます。とても良い。
・五月という男の娘キャラが、最も光っている感じです。ややところどころ作られたキャラ感が強くなる部分や、心理的な表現がうまく噛み合っていないところもあり、ちょっとズレを感じましたが、ストーリーと1番強くむすびついており、キーマンの役割をしっかり担っています。
(指摘・提案事項)
・テーマは前述のとおり良いテーマなのですが、それを効果的に提示できているかというと、微妙なところだと思います。1999年から始めたにも関わらず、現代にもギリギリ刺さりそうな感じがするテーマなので、やりようによっては使えそうな気がします。
当初はまだこんなに異世界転生・転移ファンタジーの基盤が出来上がる前だと思うので(ゼロの使い魔で初版2004年)、それで上手く読者を掴めていないのだとすれば、アプローチに問題があったと言えそうです。もしもこの頃に実力を付けていたならば、今頃パイオニアになっていたかもしれませんね。
過去の話はさておき、重要なのは現在。チームの中で最も理論派の景くんが最初にその『違和感』を覚えるのですが、『レジスタンスとか』の存在をいきなり尋ねるところは早急に感じ、次に何か違和感を覚えて少しずつ抽象的にひも解いていく流れは、逆にちょっと遅いように感じます。
おそらく担倉さんの頭の中で、テーマとしての帰結が先にあったからこそ、そのような提示の仕方になったと思うのですが、ちょっと急いでしまったきらいがあります。
私が読んで受けた印象では、スカフィードの話しぶりからして、『世界の人々は抵抗むなしく支配されてしまったのだな』と受け取り、そもそも『レジスタンスはいないのか?』という発想にすらならず『いて当然、でも完全に劣勢、むしろ敗戦済み』だという認識でした。なので、まだスカフィードの住処しか世界を見ていない景が、いきなりそんな疑問を抱くのはおかしいのかなと感じたんですよね……。しかも頭のキレるキャラ設定である以上、その矛盾が悪目立ち。むしろヒロキ辺りが、『おっさんはなんで助けに行かねえんだよ?』とか、空気読まない発言をする方が、展開的に自然かなーと感じます。参考までに。
・場面転換がけっこういきなり行われます。慣れれば許容範囲ですが、それでも要所要所で、シーンの場所や、誰が喋っているかなどの指定はきちんと見えるようにしてほしいなと感じました。
・リライトするつもりで最初から読み直してもらえると、おそらくわかると思いますが、冒頭の『夢』の時点で、いまいち何が書かれているのかよくわからないところがあったりして、「共感しにくいかも……」と感じました。まず、明らかに血みどろっぽい見知らぬ女性がこちらに向かってくるとして、「倒れそう!」と思った瞬間に、「自分に置き換えたら、抱きとめようとするかなあ……?」という疑問が先行したんですよね……。そういう咄嗟に動いてしまう人もいるとは思うのですが、ちょっと微妙なラインかなと思うので、どうせ間に合わないのなら、女性がすぐさま崩れ落ちてくれた方が安心です。
そんな感じでスタートし、その後はヒロキたちの日常風景を経て異世界へ……という展開ですね。この流れは、現代の異世界転生ものの市場からすると、導入がかなり遅めかなあと感じました。
あと、初めのうちに『五月は男!』ということを読者に紹介した方が良いでしょう。あるいは、読者を驚かせるように、ストーリーに応じてきちんとネタバラシタイムを設けるか。例えばヴォルシガに襲われそうになるあたりとかですね。キャッチコピーでは『男の娘』であることを周知できていますが、本文に入ってからは『ぼくっ子』的な認識で読んでました。
・あと五月のキャラクターと『美しい』というワードが、どうしても噛み合ってないように感じます。美意識高めなのは納得ですが、なんかズレるように感じられました。
『男からどう見られてるかわかっていないという純朴さと天真爛漫さ』と、『美を追及し、自分を美しいと思っているナルシズム』が、少し噛み合ってないかなあ……と思ったんですよね。家庭環境も普通だし、どうしてそんな相反する人格形成になるのか、納得できる理由を提供できていないので、その辺りが作り物めいているように感じます。良いキャラなだけに残念です。
・コメディ色を入れているのは理解できるのですが、景とヒロキのやり取りは、なんか面白さがうまく伝わってこないです。意味はなんとなくわかるけど、ちょっと内輪の会話で終わっているというか、前提条件がしっかり固まっていない状態で口喧嘩したりと、なんか上滑りしているように思えて、現状だとむしろ不要かも。
・あとは肝心の『小道具』についてですが、以下のものが要改善だと思います。『古さが良さ』といった世界観でもないので、基本的に換えられるものは換えた方が無難でしょう。
・ズック → スニーカーあるいは靴、でよい。外履きとかでもいいのかな。
・エヘン虫 → たぶん想定読者の年齢で知っている人はいない。モヤっとボールでも怪しい。
・ビデオ → DVDとかで良いかと。きゅるきゅる巻き直すとか、おそらくいまの想定読者では実感が無いはず。※そもそもビデオ確認の前後のシーンは、新しい情報も登場しないので、カットしてもよいと思います。
以上です。
(模擬1次審査の結果)
いちおう、模擬1次ということで、結果を発表します。
・カクヨム大賞……私が1次審査員だとしたら、現状では通過させないと思います。他の応募作のクオリティによっては、ギリギリのラインかもしれません。大きな要因としては、上手く読み手を共感させ、引っ張っていくことができていない点と、強くプッシュしたくなるような突出したものが無いこと。テーマはそれに成り得ると思いましたが、現状ではうまく提示できているとは言いがたく、それとカウントすることはできなそう。
・HJ文庫大賞……私が1次審査員だとしたら、現状ではおそらく通過させないです。理由は同上です。それに加え、どうやら歴代の受賞作を見ると、ここ2、3年ではHJ文庫さんが異世界転生・転移ものを入賞させておらず、既刊作と競合させないよう意識している可能性があるので、あまり求められていないかもしれないと感じました。でもけっこう競合少なめですね。今いちばん狙い目のコンテストに思えます。
※作者さんへ……指摘や提案は、ピンとこなければ無視していただくことを推奨します。
(最後に)
・1999年に開始してからもう20年というわけで、素直に「やべえなこの人」と感じました!(賞賛です) シリーズ話数だけ見てもべらぼう……。おそらく、今までの人生経験を活かし、今のスキルで望めば、何か光は見えるのではないでしょうか!
細かいところで質問ございましたら、気軽にご連絡ください。
(以上、本文)
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読者の皆様、いかがでしたでしょうか。
↓というわけで、作品リンクはこちらからです。(作者さんの作業タイミングによっては非公開になる場合もございます。ご了承ください)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054922797115
これで今回の模擬1次審査は以上となります。
皆さんのお役に立てたら幸いです。
これからも創作楽しんでいきましょう!
創作コーチ
尾崎ゆうじ
(note) https://note.com/ozaki_yuji
(youtube) https://www.youtube.com/channel/UCu54sC6pviWQUC1eA6dqDKg/featured?view_as=subscriber
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小説の「続きが気になる度」を評価してみた! 尾崎ゆうじ @sakurakanagu
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