『空白に“i”をこめて』白夜月 

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第1回気になるどープロジェクト応募作品


1 作品タイトル『空白に“i”をこめて』

  作者名:白夜月


2 作品のリンクはこちら↓


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054899304910


3 尾崎が作品を読んだ日: 


 2020年 7月 26日


4 メモ(感じたこと、作品内容など):


 私事です。この企画を読んでいただいている方から感想いただきました。評価に疑問を持たれたみたいですが、それはそれで嬉しかった! 読者さんにぜひ読んでもらって、各作品の〝掴み〟以降はどうだったのかを確かめてほしいなと願っております!


 では参りましょう。どうやら今回はダークファンタジーみたいですね。


① タイトルについては、仕掛けられてるなあ。私はあんまり惹かれないけど、気になる読者はいそう。


 『Fのために』みたいな。


 キャッチコピーについては、うーん、あんまり気にならないな。


 「表裏一体、かなあ?」という疑問と「だから何なのか」という印象が一緒に起こる。どちらでもいいというか……。読者に読んでもらおう、読ませよう、という感じではないように思う。


 あらすじに行きます。


 まず、主人公の名前に誤字がありますよ。


 それはさて置き、全体を読んでみました。全体を通すと、冒頭の


引用

『──生きる意味が、生まれてきた理由が知りたい。

そのためなら私は、『化け物』にでもなってやる。』


 は、この全体の流れでは要らないかなあと思う。


 なんでかと言うと、私にはこの一文で「誰だかわかんないけど、主人公だとしたらめっちゃ自分勝手な奴だな」と感じた。


 これに関しては、この作品の中での『化け物』が何を指すのかが読者にはわかっていないからでしょう。例えばこの『化け物』が、外見や個人の特性だけなら別だけど、人間を攻撃するような化け物なのだとしたら「そんな理由で?」という怒りすら湧く。


 あらすじを読んでいる間に、どうもむかむかするなあと思っていたので「なんでかなあ」と疑問だったのですが、そういうことだったようです。


 例えばニュースを観て、連続殺人犯が犯行理由を語る際に『自分の生きてる意味を知りたかったから』と言ったら、『こいつ何言ってんの? 〇ね!』と反射的に突っ込みます。


 その裏にいろんな出来事や感情があったとしても、そこだけ切り取られて、結果がドンとあれば、そういう反応になってしまいますよね。


 というわけで、本文がどうなのかはわかりませんが……あらすじを読む限りだと、少女の動機に共感ができないなと感じました。


 現状のあらすじだと、惹かれないし、抵抗がある。少女が『生きる意味を証明する』ことに、私はあんまり興味がない。加えて怒りを覚えるような動機の書き方なので、なんだかモヤモヤしながら文章全体を読み終えました。


 そうかー、アイデンティティとしての“i”なのかー、と判明したら、あらすじの時点でお腹いっぱいになりました。


 あまり本文を読みたくなる3要素ではないのかなと思いますね。


② では3要素は抜きに、第1話を読んでいきます。


 序章『“i”の行方』からの『第1話、最終演目』。


 タイトルの最終演目って、かっこいい。


 最初の永織なおの後悔と、その次へとつなぐ語りの部分は、それなりに気になる。たぶん文中にあらすじとは異なるワード『彼』が明確に出てくるからだと思う。


 それは、普遍的というか、ありふれてるのかもしれないけど、『大切な人を失って後悔している(のかな。でも漠然としたイメージはそう)』という気持ちは多くの人が共感できるから。どうせならあらすじも、そういう後悔や迷いを前面に押し出した内容にしてくれたら、読者の反応は良い方向に変わると思うんだけどなあ。


 もっと言えば、『自分勝手な欲望によって大切な人を~~~』ということをちゃんと書いたなら、さらにトゲが強くなって、刺さるんじゃないかなあと感じます。


 現に私は、それだったら「痛たたた」ってなりますね。身に覚えはあります。


 本文に戻りますが、描写されている情景が抽象的なので、そこは不利かなあとは思いますね。でもとにかく、あらすじを読んだ印象とは異なりました。良かったです。


 最初の一文、かっこいいですね。むしろ最初の一文が書きたくてしょうがなかったんじゃないか、と思うくらいです。


 では『◇◇◇』の部分から先へ進みますね。


 『憂い思い』って変かなあ。『憂い』だけでいい気がする。使い方としてぴんとこない。


引用

『もう後悔しないために、人生最大の後悔をするんだ。その選択に、後悔はない、と思っている。』


 この表現、面白いですね。私には思いつかない。素晴らしい。


 そんなこんなで第1話を最後まで読みました。


 本作には独特のワードセンスがあって、どことなく詩的ですね。このあたりの言葉って、思いつくようでなかなか思いつかないことも多いので、作者さんの武器だと思っていいでしょう。


 その武器をもっと磨いて、適度にかっこよく決めてください。浸りたい読者も多いですから。でもあくまで適度に、です。過度になるとキツイですから。


 それで、本文のシメで主人公が『身体を宙に預けて飛び降りる』ことになっているんですが、どこからどう降りたのかよくわからなくて、「そのままいくと死ぬのかな、たぶん、そういう感じなんだよな?」と首をひねりながら読みました。


 というのも、第1話全体をとおしてずっと最後まで抽象的で、具体的な描写は上空から見た世界だけなんですよね。しかも主人公が立っている場所(立ってないのかもしれないけど)がどんなところか読者にわからないように表現されているので、その行動が何を意味するのかあやふやなんですよね。


 しかもファンタジーだということだけはわかっているので、じゃあどこまでがファンタジーで、どこまでが現実の物理法則の適用範囲なのかがわからない。これは現実世界で起きていることなのかな? どうなんだろう。


 なので、もしかしたら作者さんは『主人公が上空から落下していく』ことで、読者のドキッとする感じとか、「このあと彼女はどうなるんだ?」という引きを狙っているのだと思うんだけど、その土台が弱いので引っ張られないし、狙いも成功しない。


 この件については『ファンタジーの壁』ということで、おそらく煌しずくさんの評価あたりで詳しく述べてると思いますので、参考にしてください。


③ いち読者としては序盤が抽象的すぎるのと、読者のあずかり知らぬところで行われる2人の会話が遠く感じられ、なんか中身が入ってこない。続きが気になるという感じではありませんでした。


 第1話を読み終え、企画として第2話はどうなのかなあと思って確認をしました。


 すると読んでみたら、ずっと主人公の心理描写がメインで内容が頭に入ってこない……。


 おそらく第1話も含めて「何が起きているの?」とか「えっ、なんでそんなことするの!?」というミステリアスな引きを作ろうしているのだと思うのですが、ちょっとうまくいってないです。


 でも世の中には、そういう『作中で何が起きているのかよくわからないけれど、読ませる作品』というのがあります。そして徐々に世界観が明らかになることに、読者は喜びを覚えるような、そんな話。


 そういった作品を研究し、自分の狙いを上手く演出するためにはどうすればいいか、読者がその内容を気にかけ、読み進めるような構成やキャラクターなどは、どんなものなのかを、ぜひご自分のものにしてほしいと思います。


 何か参考となる作品が無いかと記憶を探ってみたのですが、ちょっと思いつきませんでした。最近はそういうモヤモヤしたところから始まる作品って、小説では少ないんじゃないかなあ……。


 もし作者さんの中に理想とする作品のようなものがあるのであれば、それを読み返し、細かく分析してみてはいかがでしょうか。


 では、この辺で採点に入ります。



5 この作品の続きが気になる度は……

 

 …


 ……


 …………


 【30%】です!


 主張というか、伝えたいことが先走っている印象があります……。あまり読者に読んでもらおうというイメージが無いというか、もう少し親切に書いてほしい。


 テーマが気になるかどうかもちょっと微妙だったのですが、とりあえず続きが気になるなあとは思いませんでした。


 これがきっかけで作者さんに新たな気づきがあればいいなあと願ってます。よく見たらまだ5話じゃないですか。これからもっともっとブラッシュアップできるはずです。


 まだ草稿の段階ですよ。書き出しも構成も、もしも改善するなら今がベスト! 



6 読者のみなさまへ:


 → いまのところ、私の口からはおすすめとは言えません。でも★も結構ついていて、高く評価している方はいらっしゃるので、3、4話以降から面白くなるタイプの作品なのかもしれません。いかがでしょうか。


 以上、最後まで目を通していただきありがとうございます!

 気になった方は、ぜひこの作品のリンクをコピーして読んでみてくださいね!


https://kakuyomu.jp/works/1177354054899304910


 では、次の作品紹介をお楽しみに!


 尾崎ゆうじでした!

 

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