『追放聖女魔王は杞憂する ~おうちにかえりたい~』祟

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第1回気になるどープロジェクト応募作品


1 作品タイトル『追放聖女魔王は杞憂する ~おうちにかえりたい~』

  作者名: 祟


2 作品のリンクはこちら↓

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054896643701


3 尾崎が作品を読んだ日: 


 2020年 7月 16日


4 メモ(感じたこと、作品内容など):


① タイトルは、うーん、あまりそそられない。『追放聖女』とか、『おうちにかえりたい』とか、良いような気がするんだけど、ぱっと見た感じでは刺さらない。ぼやーっとして、どんな話かいまいちイメージが付かなくて、不利かも。


 キャッチコピーもちょっと漠然としていて、堕ちていくのはわかるけど……という掴めるようで掴めない、はがゆさを感じる。


 ただし短文でさっと一言、すぐ読めるから、あらすじと自然に混ざっている感じがするので、そこは良い。


「『すべてが堕ちていく……』だけじゃわかんないなあ、どういうことだろう?」→すぐあらすじに答えを求める、という流線ができてる感じがする。そう考えれば直さなくていいかも。


 あらすじはスムーズでうまい。最初の二行で、ほとんど舞台の紹介が終わり、そこからどうなるのか、という触わりを提示して、第1話を読ませるための準備が終わっている。


 ただ、正直なところ、私はこのあらすじの途中で読んで「あんまり読みたくないなあ、気にならないなあ」と思った。最初の2文では気になったのに。


引用

『すべてを奪い尽くされ、追放された者の求めるものはただ一つ――』


 これはあらすじ3行目。私の頭の中だと、この『追放された者』というのは聖女だと思うのだけど、だったら『追放された聖女の求めるものは──』でいいし、ただ一つの求めるもの、に関しては、引っ張った状態でそのまま読者を本文に連れて行った方がいいんじゃないかなあと思った。


 次に書いてある三つの文章は、求めるものって感じでもないし(助けを求めてるってこと?)、狙いがよくわからない。


 文章自体のテンポ感はよく、切れ味もある。でもその小気味いいあらすじのフォーマットの中に入れる言葉選びが悪いというか……。


 あと、何でもありのファンタジーはあんまり読みたくないなあ。前提となる設定さえころっとくつがえりそうな、予定調和的な展開が待っていそうで、それをわざわざ読んでもなあ、という気分になった。


 全然興味がない、というわけでもなかったので、なんとなく嫌な感じを受けながらも、いち読者として第1話に進んでみた。


② 第1話。冒頭がすごくうまかった。


 まず、第1話のタイトルがいい。『みんなのエピローグ』があって、そのあとの第2話に『ふたりのプロローグ』という文字が見えるので、誰がどうエピってしまうのか、その真相を確かめたくなった。


 そして物語はこう始まる。


引用

『「あなたとはここまでだ。別れよう」

 相席の女にそう告げた男の言葉は、やけにハッキリと酒場の中に響いた。』


 うまいうまいうまい。


 すると次は、その酒場にいる酔客たちが盛り上がり、結末がどうなるか予想して勝手に賭けが始まる。酔客たちの会話も、いかにもありそうな感じで良い。酒場ではそういうことが慢性的に行われていることを想像させるような、酒場側の対応も面白い。


 その酔客たちのヤジによって女が冒険者であることだとか、そういう説明も読者に提示され、そこもよい。


「なんだこれ、このどうしようもない感じから的確に切り取ってスタートする感じ、すげえ」


 と舌を巻いた。


 ところが、非常に残念なことにその雲行きが怪しくなってくる。


 具体的には、


引用

『「(略)~~上でシッポリ楽しもうぜ、なッ?」』


 という台詞以降の展開が、なんか無理やりというか、いろいろ嫌な感じで、いち読者としては読むのを止めました。一言で表現できないので、箇条書きでいくつかおしらせします。


 ・酔客の台詞ややり取りがその後からどんどん進んでいくので、いらない感じがした。もっと主人公(だよね)の聖女周辺を中心にして、どうして別れようという話になったか、どうして奴隷競売にまでかけるくらいの判断を同行者の男が下したのか、みたいな内容を臭わせてほしい。


 ・実質的奴隷競売システムになっているという説明は、削るか、あるいはしっかりと聖女が拘束された状態でなければなりたたない。なんか勝手に外側でやってるなーみたいなイメージ。緊張感がない。そこを大事にしたいならば、もっとわかりやすく聖女がいきなり拘束されたり、ドン、と酒場の扉が閉じられて、その手前に大男たちが陣取るような、逃げ場がなくなる描写がほしい。


 ・そのあとの操り人形的な男がさらに大男を操って、家畜たちが──とか、その辺りの演出もまた、うまくついていけない。作者さんの頭の中のイメージが伝わっていない状態だと思う。読者がその箇所を読んだ時にどういうイメージで、どういう感情でいてほしいのか、という作者さんの狙いがよくわからない。


 ・最後は聖女が切り返す、というところはかっこいい。が、やはりその周辺も、演出のイメージがいまいち伝わらない。イメージできなくもない、かもしれないけれど、「これで意味がわかると思ってるのかなあ」という苛立ちを与える。


 多少の逸脱、粗さは物語の引き込む力、引っ張り続ける力が強ければ、目をつむるかもだけど……現段階では苛立ちばかりが先行する。聖女が反撃に出て、男と言い合いをする時も、何が何だかわからず、ただ単に知らない人たちの痴話げんか傍観しているだけ、という印象。


 ・これは個人的な要望だけど、最後の最後に聖女の口から何か言ってほしいと思った。微笑んで終わりだと、殺して幕が閉じてハイ終わり、という感じで、第2話を読もうという気にならない。要するに引っ張れていない。


③ どうしたものかと思って第2話を読んだけど、第1話と感覚は一緒だった。何がどう起きているのか、充分に伝えられていない。


 何としても1、2話を通しての感想で伝えておきたいのは、


「何がその場で読者にとって重要か」と、「読者に対して『この辺りは書くまでもなく想像すればわかるでしょ?』という考え方は、意外と通用しない」


 ということを意識してほしいなあと思った。


 今回は料理番組で喩えると、素材や包丁、鍋、下準備は良くて、視聴者の目を引くのだけど、いざ料理を始めると、裏に引っ込んで作業したり、補助のキャスターと身内話に花が咲いて手が止まったり、途中で調味料の名前も伝えずにどんどん調理してるような印象。


 で、最後には適当な盛り付けで提供。


「もうこの番組は観たくないなあ」


 と思われても仕方ない。


 世界の感じと物語の始まりはわかったけれど、その他のことはどんどん読者の遠くの方で何やら起こっている出来事、という印象だった。


 残念です。


 あとは作者さんがこの作品を書く目的次第です。読者目線での正直な感想としては、このようになりました。自分が書いて楽しいなあ。何か煮詰まった時や気分転換に書くとスッキリするなあ、という目的なら、私の感想はすべて無視してください。


 では採点です。



5 この作品の続きが気になる度は……

 

 …


 ……


 …………


 【25%】です!


 入り口はいいんだけど、その後が独りよがりな感じがして、続きが気になる、という感じはしませんでした。


 裏切られた聖女、という設定は面白そうだけどなあ。



6 読者のみなさまへ:


 →私はちょっと入り込めなかったけど、もっと若い読者さんなど、受け入れられるかもと感じた方は、ぜひ読んでみて「3話目以降は尾崎の思うほどでなくて、すごく面白いよ!」という感想をお寄せください。 


 以上、最後まで目を通していただきありがとうございます!

 気になった方は、ぜひこの作品のリンクをコピーして読んでみてくださいね!

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054896643701


 では、次の作品紹介をお楽しみに!


 尾崎ゆうじでした!

 

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