『遥かなる天空の王国より』煌 しずく

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第1回気になるどープロジェクト応募作品


1 作品タイトル『遥かなる天空の王国より』

  作者名:煌 しずく


2 作品のリンクはこちら↓

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054897085443


3 尾崎が作品を読んだ日: 


 2020年 7月 15日


4 メモ(感じたこと、作品内容など):


 タイトルはラピュタ的で、個人的には好き。でも投稿サイトはファンタジーが多いから、今のように企画に参加したりキャッチコピーの工夫を凝らさないと、普通の読者が読みたい感じにはならないかな。


 タイトルはコレ!と決まっているなら、今やっている活動を地道にコツコツやることになる。それが苦痛に感じないなら、OKっしょ!


 キャッチコピー、上記のとおりしょっちゅう更新しているのが感心。つまらない作品紹介よりは目を引くなあと効果を実感した。


 タイトルは好みだったし、キャッチコピーの数値どーん表記で、とりあえずあらすじくらいは読みたい、という気持ちになった。いち読者として。


 たぶん、同じような流れでクリックする読者は一定数いると思う。


① あらすじで感じたことは、前半の情報が要らない、ということ。


 引用

『 天から降ってきた少女は言葉が分からぬ異世界で、城を追われた青年王に助けられた。ここから二人の戦記が始まる。


黒髪の王家において、ただ一人赤い髪をもって産まれたジーグフェルドは、臣下のファンデール侯爵家へ預けられていたため、王位継承からは遠かった。が、ある日突然国王に任命され無理やり王宮へ連れていかれてしまう。この即位に不満を抱いた叔父のランフォード公爵は』


 たぶんここまで要らないかな。作家さんがどうしたいか、という話になるけど、読んでみて蛇足感が強い。今ほしい情報じゃない。


 『いきなりステーキ』に行って(私は行ったことないけど)、いきなりサイドメニューを紹介された感じ。実際に読んでもらって素直な感想をもらわないと、ここは作者側では自覚しにくいんじゃなかろうかと思う。


 なんというか、お客さんが欲していないのにパフェやら何やらのサイドメニューや、社長の生まれたころのエピソードを話して聞かせられているような。まずはステーキの注文を取ってほしいんだよなあ、と。


 主人公が王ならば『叔父の公爵の謀反により王の座を追われたジークフェルトは刺客からの逃走中~~』くらいにあっさりさせていいと思った。


 ただしこの場合は「謀反されるということは、もしかして無能な王様だったんじゃ?」という勘繰りが読者にうまれる可能性があるので、そこは工夫してフォローしてほしい。明確な謀反理由はあらすじに描かれていないので私にはわからないが、公爵はどうして不満を持ったのか、というところから掘り下げて記しておいてほしい。


 理由は何だろう? 悪政をはたらいた無能な王が反省してやり直す物語だったら別だけど、王本人に責がない事情により城を追われた、という形でないと読者が感情移入しにくいし、作品全体のイメージに沿わないから、そこは押さえておいた方がいいかも。理不尽であればあるほどいいんだけど。 


 あらすじ→第1話を読んだ時に、キーポイントだなと思ったのは、


1)読者がそのタイミングで欲しがっていないを随所に配置しないでほしい。


2)しかし同時に、その結果として言葉足らずになってしまう箇所もあるので、その場合は読者が欲しい情報で、かつ作者さんが読者に「こう思ってほしい、誤解しないでね」というフォローを入れてほしい。必要な言葉は残してほしい。


 の2点。


 作者さんはファンタジーが好きで、物語が本当に好きなんだと思う。


 読者に提供したいもの、観てほしい世界観が頭の中にイメージとしてあるけど、気むずかしい読者にそれを納得いく形で提供できていない、という状況にあるのだと推測できる。


 勝手なイメージだけど、ふわふわーっとして、相手の反応をよく見ないことで怒られたり、かげで顰蹙ひんしゅくを買ったりしそうな人かもしれないと思った。自覚ないかもしれないけど……。



② それで上記の1)の代表的なのものは、


 あらすじの登場人物紹介と、本文見出しの各話タイトル。


  人物紹介を載せる際には、【登場人物】などの前置きが欲しい。でもそれより大事なのは、漫画のあとがきに載せるようなメタな内容の人物紹介をここに上げるのはリスクだということ。


いち読者としてこの部分を目にして、あらすじを読んだ時に


(この物語の主人公って青年の王、だよね?)という認識していたのが途端に崩れたので、「お前が主人公かい!」と突っ込み、そしてすぐに「ヒロイン出番少ないんかい!」となり、そして「結局第一部の主人公を勝ち取ったの王なんかい!」と……。


 創作しながらキャラとストーリーの動きを自分で楽しむのはいいんだけど、それをわざわざここに載せる必要はないと思った。だったら最初から「王が主人公だよ」でいいじゃん。


 あと、各話のタイトルについては注意喚起のつもりで。たぶん損をしていると思う。気にしない人は気にしないけど、嫌な人は嫌だなって思うだろう箇所。ストーリーと直接は関係ないけど、だからこそ余計なストレスを読者に与えるおそれがあると見込めるのなら、改善した方がよい。


 私も「各話のナンバリングって、適当でよくね?」となめていた気がするが、本作に並んでいるのを目にしたら、「気をつけた方がいいんだなあ」と感じた。


 一般的に『1部』の下に『1章』、そして『1話』という序列があるのは理解されていると思うが、そのうえで作者さんは意図的に各話のタイトルを、『001話 01章 天空より降りし者【1】』で統一している。ナンバリングとして、001話、002話…と並ぶ方が見やすいと思ったのだろう。気持ちはわかる。


 でもこれがなんか気持ち悪い。


 別に構わないじゃん、とスルーできる気がしたけど、やっぱりそれがずーっと並んでるのを見ていると、気持ち悪い。毎回小説の更新のたびにそんな思いはしたくないだろう。不快なものに人は近づかない。


 せめて『1章001話──』にするか、もっと言えば00話のナンバリングは作者さんの管理用に留めて、カクヨムには使わないという選択をするか。


 天空より降りし者という同タイトルで【1】~【5】という順番が付いているので、001話…のナンバーは無くていいと思う。


 たしか章の小見出しって、今ならカクヨムでできるんじゃなかったかな…。私もあんまり詳しくないですけど。ちょっと研究してみてほしいかな。そうすれば、1章、2章、と各話のタイトルに入れる必要がなくなるから、それならスッキリする。



③ さてようやく第1話。あらすじが適切なら、とりあえず第1話は読んでみようかな、という気になりそう。


 それで最初に結果を述べると、いち読者としては、第1話の途中で離れようと思ってしまった。


 あまり明確にここだ! というようなポイントではないが、その理由は大概、『現実の世界とは完全に異なるファンタジー世界を描くことの壁の高さ』が関わっている。


 でも説明し難いんだよなあ……。とあるノウハウ本に『ファンタジーは難しい』と書いてあったのを思い出したので、それが原因かなあと思う。


 何が難しいのか。


 完全なるファンタジー作品を読もうという時、読者はその世界が


『自分たちの知っている現実世界とどのくらい違う世界なのか、何が当たり前で当たり前じゃないのかがわからない状態』


 で読む。だから通常の小説よりもイメージが湧きにくく、入り込みにくいのだ。


 そういう前提に立って物語を書く必要があるから、よりいっそう高いスキルを求められる。


 私は冒頭の2行と、後に主人公が双満月を見上げて感想を呟くシーンで「ああ、この作品は入り込めないな」という烙印を押した。その冒頭はこちら。


 引用

『漆黒の闇が支配する夜の天空に、無数の星々が競い合うかのように色とりどりに光る。互いに引き合う赤と青の双子月が重なりあう瞬間、金色に輝く奇跡の光が地上に降り注ぐ』


 こういう表現を一番最初に持ってくることについての是非は、読者にも好みがあるから問わないが、問題は先ほどお伝えしたファンタジーの壁。


 読者はその世界がどんな世界か知らないので、『互いに引き合う双子月』というワードから、現実世界の月を基にイメージしてよいかどうかを少し迷うのだ。


 ファンタジーな物語であることはこの時点ではわかっているし、とりあえず保留すると思う。読者は頭で一度固めたイメージを崩されるのは、あまり好まないから。


 そんな時に、作品では『奇跡の光』が降り注ぐというのだけど、ここで読者の反感を買うと思う。 


 万が一、作者さんが「この描写でイメージしている映像がはっきりとピンポイントに伝わっているはず!」と考えておられるならまずいだろうと思ったので、私が読者代表として、ここで注意を促したい。


 まず「双子月って何?」と読者は頭の中でハテナを描く。そして、すぐにその説明が作者さんから当然されるものだろうと思って、今か今かと待つ。


 ところがそれは叶わず、今度は「金色に輝く奇跡の光』の描写になる。この時の私の頭の中はこうだった。


「あー……たぶんその双子月からパーっと斜陽が落ちてくるみたいなイメージなのかもしれないけど、どこから光が降り注ぐのかも、この描写じゃわかんないな。つーか、その世界では何が奇跡で何が当たり前なのか、俺にはわかんないんだけどなあ。赤と青の双子月が何か正確なところはわかんないけど、もしも俺のイメージどおりだったら、それが重なること自体が奇跡じゃないの? 奇跡がさらに重なってるのに、奇跡なのは光だけなのか」


 という類のごちゃごちゃした思考が渦巻いた。


 そして作品はそれに対する解答を与えてはくれず、そのままストーリーに入ってしまう。


 置いてけぼりをくらった感じがしたら、読者は読むのをやめる。多少の読書好きならば、この段階で作者さんの『ファンタジーを言葉で紡いで読者に紹介する技術』が充分でないことを察してしまうから。これ以上読んでも時間の無駄だと悟るから。


 私個人としては、ここの一文は全部要らないと思う。ぼろが出てしまうならなおさらだし、その問題を無視したとしても、読者を引っ張る力のある演出になるかといえば、そうじゃないと思う。作者さんの判断になるけれど、どのみち表現のしかたは考えたほうがいい。


 で、企画としてそのまま第1話を読んだのだけど、主人公の野宿シーンはそれなりに考えられている気がして良かった。首を傾げる描写もあったけど、それは流して読めた。


 そのあと男が木の幹の上から天空の月を眺めるのだけど、そこでまたファンタジーの壁が立ちはだかる。


 『双子月』がどんなものなのかがここでようやく説明されて、ようやく読者はそのイメージを確立させるのだが、今度はこの2つの月が重なることを『双満月』と呼ぶ、と紹介される。


 私はこの時、またツッコミを入れてしまった。


「赤と青、二つの月があるのは構わん。ファンタジーでは見たことあるし。だとしたら、どちらも同じタイミングで満月になることを『双満月』と呼ぶんじゃないか? ……この双満月は、イメージとしては月食なんだけど……でもそっちは太陽と月が重なるから月食なのか。だとすれば、月同士が重なるのは何て言うんだ? 共食い?」


 主人公の赤い髪のイケメンのストーリーを読みたいのに、頭の中は双満月でいっぱい。


 そしてもっと悪いのは、その双満月が半年ぶりに起こるという設定だ。これ、百年に一度とかにした方が絶対いい。


「半年に一度の周期で発生するって、天の川より頻度たけーのかよ!」


 という突っ込みと同時に、


「そんな頻度で不思議なことが起きても許されるような夜が発生したら、女の子なんて何人でも降ってくるんじゃねえか?」


 という話になってしまって、何もめずらしくなくなってしまうので、設定はそれをちょこっと変えてほしい。のちのちのストーリーに影響があるのかなあ……?


 あと、その月を見て、主人公の男が「綺麗だな……」と呟く周辺の描写が、物足りない。


 読者はその世界のことを知らない、という前提を常に念頭に入れてほしい。青と赤の月が重なる、という描写しかない状況で、男の「綺麗だな……」に読者は共感できるだろうか。


 日食や月食を見た人はわかるだろうが「おおお、すげえ!」という感想は抱いても、「月食めっちゃキレー」とは思わないんじゃないかな。その現象自体が自然の美しい未知なる営みだといえばそうだけど、だったらそういうフォローは必要不可欠だ。


 男がその光景を綺麗だと呟いて、「この主人公はその景色を綺麗だと感じる感性の持ち主なんだな」と納得するような世界構築を、読者ができていない。


 もっと突っ込むと、私はこの時、冒頭の描写って、何だったのかなあ、と気になった。


 金色の奇跡の光が降ってきたのはいつの話だったんだろう、とか。


 女の子がこの後で降ってくるんだけど、その時って金色の光どうなってるのか。主人公にいま降り注いでるのか、それとも、もう光っていなくて、主人公は女の子が降ってきていることに気づいていないのか。


 こんな感じでイメージがそこかしこで歪んで、その都度ストーリーを阻害する。


 先ほど冒頭で、作者さんの技術が不足しているという疑念を持っていた私は、ここでそれを確信し、「やっぱりかあ……」と残念な気持ちになった。


 こんな感じになるならやっぱり冒頭いらないじゃん、みたいな。


 作者さんはファンタジーを文章だけで表現する方法を、もっと勉強しなければならない。ファンタジーな世界を1から説明しないといけない状況で、誰も話し相手のいない主人公が一人野宿をする描写からスタートする、というのは、すごく難易度が高いことなのだと認識し直し、やると決めたら腰を据える必要がある。


 同じファンタジーでも異世界転生ものが読者に受け入れられやすい理由はそこにある。主人公が現実世界のことを知っているから、読者に異世界の情報を自然な感じで提供しやすいし、同じ文化を頭の中に共有しているから、その世界=全部異文化で、当たり前じゃないもの、という前提を始めに作ることができる。


 こうしてみると、読者に読ませるという作業ってめんどくさい。私もそう思う。


 第1話全体に一応目を通した。


 やはり同様の理由による技術不足や、単に描写のぎこちなさがうかがえてしまうので、作者さんは一度振り返って、自分の好きな作品と比較しながら自分はどう表現していこうかなあと、考えてみるとよいと思う。


 作者さん自身のキャラクターと相まって、少しでも技術が向上すれば、もっと人気になるんじゃないかな。

 

 ちなみに、どんなもんかと思い、パロディ漫画も読みました。


 ほっこりしました。もしパロディ漫画を定期的に更新させていけるなら、もっと読者は楽しめるかも。大前提として、やはり表現はしっかり。余計なものはカット。うまく表現できないところは漫画で補填しちゃえ、くらいの気持ちでもいいかもしれません。いまのところは。


 いや、漫画は漫画で、絵の技術が今度は必要になるから大変だけども。


 作者さん自身は、今後どうしたいですかね?


 では採点に入ります。



5 この作品の続きが気になる度は……

 

 …


 ……


 …………


 【35%】です!


 50%と20%の間をとりました。作品全体の雰囲気を想像すると、ちょっと気になる存在ではあるけれど、技術を磨いてリライトしてほしい。でもちょっと一筋縄では行かないだろうなと思い、点数をさげました。


 とても厳しい道のりになりそうだけど、頭の中にある世界を表現したいんだ! という情熱が消えないのなら、やるしかないです! ほわほわしてるだけじゃなく、きりっと凛々しいところも見せてもらえたら、読者もただならぬものを感じて、もっと惹かれると思います。


 漫画はカラーで丁寧に描いてあって、良い感じですね。ヒロインが意外と大人びて見えるけど、小説でのイメージとちょっと違っていて、それはそれで面白いなと思いました。はてどこに行き着くやら、楽しみです。



6 読者のみなさまへ:


 →パロディ漫画のリンク貼って置きます。人によっては、私が感じた魅力をわかっていただけると思う。なんかここだけ平和だなあ……というほのぼのした気持ちにさせられます。小説の方は、なんだかなあ。2話目、3話目を読んで判断してほしいです。

 https://novelup.plus/story/259376442 ←パロディ漫画。


 以上、最後まで目を通していただきありがとうございます!

 気になった方は、ぜひこの作品のリンクをコピーして読んでみてくださいね!

 。.:♪*:・'(*⌒―⌒*))) スペシャルスマイル


 では、次の作品紹介をお楽しみに!


 尾崎ゆうじでした!

 

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