『怪異が恐れる男 ~デモンズハンター一ノ瀬晃人の事件簿~』キロール

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第1回気になるどープロジェクト応募作品


1 作品タイトル『怪異が恐れる男 ~デモンズハンター一ノ瀬晃人の事件簿~』

  作者名:キロール


2 作品のリンクはこちら↓

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054911100588


3 尾崎が作品を読んだ日: 


 2020年 7月 14日


4 メモ(感じたこと、作品内容など):


① ジャンルがホラーなのは、個人的に期待。タイトル、一般小説によくあるような。前評判が無ければおそらくスルー。カクヨムならなおさら。書店なら表紙次第。つまりタイトルには魅力なし。


 キャッチコピー、同じく。人によってはかっこいいと思って気になるのかなあ…? 損な感じがする。初見でタイトルとキャッチコピーを読んでも、陳腐な感じに思える。投稿サイトの欠点であり、同時に利点でもあるけど、この作品の場合は圧倒的にデメリットの被害に遭っている。


 あらすじまで読んで、夢枕獏さんの魔獣狩り的な想像をした。おそらくそれが現代版(2028年設定)強者の主人公が単独で狩っていく感じかな。強い主人公の単独プレイって、よっぽどキャラの魅力が無いと辛いイメージがあるけどいかに。


 ここまでの文章の作り方などは、ちょっとぎこちない感じがする。でも理解はできるし、なんかフンフン、という感じで読んだ。魅力があるかといえば、やはり感じない。タイトル~キャッチ~あらすじにいたるまで、突っ込みどころは無いけれど、作品に突っ込みたいくらいの攻め手が無い、とも言える。


 私個人としては、○○の事件簿系のタイトルは、刺さる確率が圧倒的に低いと思っている。一番記憶に新しいヒット作は『ビブリア古書堂の事件簿』だけど(それでもちょっと古いか)、その辺りの時期は、キャラクター×ニッチ×ミステリのようなカテゴリに市場が傾いていて、書店の平積みを見ると、事件簿系のタイトルが結構並んでいた。


 発行部数を稼いでいるような作品は、表紙のキャラ描写が特徴的だったり、あるいは売れているアピールだったり、『数学得意な幼女』みたいな、『事件簿』と一見すると繋がらないような組み合わせのものが多く、実際に私が数ある作品から手に取って覗いてみるのも、そういう他より尖った感じのものが多かった。


 『ビブリア古書堂の事件簿』は、本に狂っている可愛らしい女性がメインヒロインとなり謎を解いていくうえ恋愛要素やら人間模様が上手く絡んでおり、良い作品だった。本屋大賞を受賞したことで有名になったが、もしも現在のカクヨムに無名の状態で放りこまれたら、その良さが浸透するまで相当な時間と労力が必要だったろうと思う。


 『デモンズハンター』の『一ノ瀬晃人』に読者の目を刺す力は無いと考える。で、本文。


② 第1話を読んだ。見出しの『焼失区域の怪』も、掴みとしては弱いかなあ。ケース1に登場する怪異だからだとしても、その字面だけだと普通、というか陳腐な感じ。


③ 第1話について、神父の心理描写から始まるのがどうかと思ったが、その内容を読むと思いのほか引っ張られた。ぱっと想像して思いつくような言葉ではないので、どこか「そう言われるとそうだよね」と、ちょっと感心。もっと話を聞きたい心境になる。語る長さもさらりとしてしつこくなく、良い感じ。


 子供たちの様子、良い感じ。ただその周辺の文脈がちょっと違和感。言わんとしていることはわかるけど、目に付く気持ち悪さがある。例としては、


 『今でもその考えが間違っていたとは思わない』の箇所。難しいところだけど、読者目線で見て『間違っていた』より『間違っている』の方が《自然》じゃないかなと感じた。


 神父はこの瞬間も、その考えを捨てているわけじゃないから。


 ~~~根本的には『神とは無条件に信じ、感謝するもの』という信念を持っている。だが今だけは『神ヘルプ! ごめん、条件付けさせて!』という心境に一時的になっている~~わけなので、上記のようにした方が一般的に受け入れやすいと思った。


 なんというか、エンタメは文法を逸脱してもいいものだけど、そこはちょっと表現として違うんじゃないかな、という細かい違和感が重なると、読者としては離れたくなる。オーケストラの演奏会で、時々不協和音が聞こえると、ほんの1回かそこらなら笑って許すが、2回、3回と聞こえるようならば、その笑いも引きつる。


 もう少し読み直してみてほしい。


 あと「──この村は──俺の支配下」の台詞がいきなり始まった感じ。


 誰がどこで誰に対して喋ってるんだろう? という掴みどころの無さを感じた。


 「想像すればわかるだろ?」と返されたら身も蓋もないが、これを想像するのは読者にとって負荷が大きく、強要するのはかわいそう。もう少し親切にしてほしい箇所。


 例えば私はこの時、重ねられた描写を順に頭に思い浮かべていた。そのニュース映像の流れている部屋に神父と子供たちがいて、子供たちは背後、なんで背後なんだろうな? あ、なんか変なんだ、心が死んでるのか、神父はこの子たちの心の傷をどうにもできなくて神にすがりたいと、そういうことだな?


 引用

『「──この村は俺の支配下~~~」

 「退かん、儂の信仰に~~~」』


 待って待って、誰が誰に話しているの? 儂、はたぶん神父だ。ああ、そうだね。じゃあその前の台詞は、敵役か何かか?


 引用

 『ざらつく声を聞きながらも、懸命に牧師は抗う。既に数カ所、その長く凶暴な爪で傷を負わされ、そのうち一つが動脈を切り裂いているにも関わらずに、だ』


 あーっと、敵はどんなやつか知らんけど声はざらついていて、凶暴な長い爪があるのか。いまある程度明確になったのに『その』って言われてもなあ……。

 読んでいてこういう気持ちになり、すごくストレスだった。そしてここで我慢できなくなったので、いち読者としては読むのをやめようと思った。

 

 これを回避するには、敵役の台詞の前か、すぐ後の、、部屋のどこかに人ならざる敵役が存在していることを読者に紹介するといい。


 あえて敵役の姿を見せない、というホラー手法も効果的だけど、今回の場合は、そのすぐ後に長い爪の描写があるので、そのまま使うならば敵の姿はある程度読者に見せないといけない。


 さらにこの姿ない敵役が読者に負荷を与える要因を考えると、台詞に問題があるとわかった。


 作者さんの頭の中の敵は、確かにそう喋っているのかもしれないが…読者がそれをどう読みとるかは想定していないのだろう。


 『その2匹は俺の物だ』『死にたくなければ退けよ』『神なんざ糞の役にも立たねえ』


 はいいけど、『この村は俺の支配下』という台詞が頭につくと、読者の想像する状況に合致しない言葉なので、不快極まりない。


 これを説明するのは難しい。カレーが食べたくてカレー屋に入ったのに、定員が最初にシチューのメニューを突きつけてきたような感覚。突拍子もない感じ。


 俺の支配下っていうよりは「この村じゃ俺が神だ。ここじゃあお前の信じてるゴッドは糞の役にも立たねえ」みたいに崩しても意味合いは伝わると思う。現状だと説明口調のように感じる。


 他の作品の文章の組み方を、自分の身体で感じてみるのが、改善の近道かも。少し他作の流派を練習してから今の自分の文章を読み直すと、違和感がわかるはず。(余談だが私もそういう練習をしようと思ってる)


 あと、好みもあるけど…神父ということで、勝手にキリスト教をイメージしたんだけど、その神父に対して坊主って呼ぶのは、今の時代だと違和感に思う読者のほうが多いんじゃないかな。


 坊主坊主坊主……ああ、神父のことか、という一時的な思考停止に陥った。別に敵役が神父をどう呼ぼうと構わないんだけど、一応その場には神父の他にも坊主と呼ばれる可能性のある男の子が背後に控えているわけで、一瞬だとしても余計な混乱を招くので、そのリスクを高めてまで坊主と呼ばせる必要性があるかといえば、否だと思うんだよなあ。


 じゃあ何と呼ばせればいいのか、ということは作者さん次第。漫画のブラックラグーンとか参考になるかも。あるいは「じじい」「人間」「出がらし」みたいなのとか。


 さて、いち読者としては読むのをやめたけど、企画主催者としてその後がどうなるのかを確かめたく、とりあえず1話全体に目を通した。


 うーん、全体を通して、もう少し俯瞰して読み直した方がいいと思う。些細な誤字があるのはまあ愛嬌として、ロングコートの男が登場するまでの流れは、なんかバランスが悪い。


 三人称神視点で語っているだけでも不利だというのは置いといて、それにしたって視点が神父と狼男を忙しなく移動し(読者にとってはあっちいったりこっちいったりしてるように感じる)、さらに言葉足らずの箇所もあり、なんだか不快。


 でも、読んでみて良かったことは、さすが狩人の登場シーンは気合いが入っている感じがした。とにかくそこが書きたかったんだ!という感じが伝わってくる。


 そう思ったのは、その後のバトルシーンなどでは、まるでやりたいことやり切ったら眠くなってきたなあ、と言わんばかりに、無視できない感じの脱字だとか、留学生が間違えるようなミス(タイプミスなのかなぁ)などが目立った。


 読ませる気がないのかなぁ…。『文賢』っていう自動校正してくれるサービスがあるらしいから、チェックする時間がないなら、その時間をお金で買うといいと思います。誤字脱字だけでも見つけて直せれば、一番大事なはずの狩りのシーンを守ることができるはず。


 ホラーアクション系の小説なら、そこが一番大事なんじゃないでしょうか。練習用として書いたのなら、まあ、いいんですけど……。なんかなあ、という感じです。


 ちょっと違う世界を勉強して、それから成長して帰ってきてほしいなあ。


 時間が押している。採点に入りましょう。



5 この作品の続きが気になる度は……

 

 …


 ……


 …………


 【2%】です。


 私が作った評価基準だと20%に該当するんじゃないかなと思ったけど、「なんか、もう……」という要素も結構見つかったので、そちらに傾きました。2%は狩人の登場シーンの分です。


 いつもなら一度メモを見直すのですが…今回は私も見直すのをサボろうかな、という気持ちになってしまいました。疲弊した感じです。作者さんが知るべき客観的視点が、少しは伝わればいいかなぁ。



6 読者のみなさまへ:


 →尾崎の採点を真相を確かめたい方は、一読あれ。


 以上、最後まで目を通していただきありがとうございます!

 気になった方は、ぜひこの作品のリンクをコピーして読んでみてください。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054911100588


 では、次の作品紹介をお楽しみに!


 尾崎ゆうじでした!

 

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