学校祭〈2〉
「じゃあ続けて体育祭の競技決めます」
「……体育祭」
「俺的当て」
「リレー」
「競技順に聞いてくから皆んな落ち着いて」
ようやく調子を取り戻した男子達が一斉に自分の出たい種目を言っていく。
体育祭の競技には、魔術の使用が許可されている。
殺傷行為、それに準ずる行為は禁止。行えば停学、最悪退学もあり得る。ただ、競技のルールは魔術が使用される前提なので少し難易度が上がっている。例えば玉入れ。ゴールまでの距離は15メートル程度だが、球の大きさが30倍で、重さは60倍。しかしゴールの広さは半径が5倍、つまり25倍で、少々入れづらい。基本的に風、土、の魔術が得意な人がする。
要は風で浮かしたり、土で階段を作って、そこを登るみたいな感じ。土魔術は流石に卑怯だと思うかもしれないが、これが意外とそうでもない。何故なら、土の魔術は他の水、雷、火とは段違いに難しく使い辛いから。理由は単純明快。魔術に求める目的の差だ。水は生み出すだけが目的。風もそこに風を起こすだけが目的、火も、雷も。つまりその後は変えてしまっても問題はない。ただし土はどうだろう。生み出すだけで良いのか。違う。生み出した後、形を維持したままの状態で残すのが目的だ。
それには他の魔術とは比べ物にならないほどの集中力、魔力が必要になる。だからそんなめんどくさい魔術を誰も進んで練習しようとはしない。根気がないと使いこなせない魔術が一般的な高校生に魅力的に映るわけがない。
「……次、1200メートル走」
キタ! 俺は勢いよく手を上げる。
「え? 神無月君大丈夫?」
「うん。寧ろこれが1番できると思う」
「おいおいやめとけって」
「お前風魔法まともに使えないだろ? それでどうやってアイツらのスピードに勝てる」
「そうだぜ。どうせ負けるんならもっと得点低い奴にしないとさ、同じ色の人たちに迷惑だろうが」
(言ってくれるなぁ)
しかし言っている意見は正論だ。1200メートル走は一回の得点が高い。だから低い順位を取ると、その分優勝から遠ざかる。それよりかはもっと一回あたりの点数が低いやつに出る、もしくは1人違えない奴がいても問題ない競技に参加させるのが無難だ。
実際去年は大玉転がしに参加した。これはクラスから3人選ばれる。3人がそれぞれ推進力、制御、指示に分かれて、どれだけ速くに障害物のあるコースを大玉で一周させられるかを競う。
勿論俺は指示の人。指示の人は仲間とコミュニケーションを取り、最適なルートを伝えたり、他チームの状況から作戦を変える指示を出したりと、意味はちゃんとあるんだけど、生憎と僕の指示なんて聞いてくれないので、本番はただ突っ立ってただけだった。それに実際1人いれば魔術で球を転がせるし、負けたとしても1200メートルの半分以下の失点で済む。
「2年は競技種目に大玉ねぇーんだからやれることねぇーよ」
「その日は家で寝てな」
今までの俺なら大人しくそうしてたかもしれない。でも、
「じゃあ勝負しようよ」
「はぁ?」
「そんなに俺の実力が気に食わないなら直接勝負しようって言ってるんだよ。それで負けたら家でずっと引き篭っててやるよ」
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