中間テスト


「今日から中間テスト週間です。しっかりと勉強しましょう」


「勉強なんてだるいだけだよな。そんなことより魔術の練習だろ。来月には文化祭体育祭があるし」


「だよな。実際文化祭、体育祭には国のお偉いさんも魔術を用いた体育祭について観に来るかもしれないらしいし」


「コラ! 何言ってるのそこ。学生なんだから本業は勉強でしょ!! 全く……これだから最近の若者は」


「先生いくつだよ」


「ウケる」


「ババアじゃん」


「あ?」


『すいません!』


一連のやり取りにクラスからは笑いが飛んでくる。でも実際生徒の認識は彼らと同じ。

大学に行き、そこから就職するのが良しとされる時代とは今や異なり、第二、第三の選択肢が生まれつつある。その中でも今人気な職業は、魔術士。

何それ職業なの? と思った方。少し時間をくれ。


魔力の発見により、世界の問題、とりわけ水不足の問題は殆ど解決した。又、魔術の研究は、科学をも発展させつつあった。元々科学から伸びた枝の一つであった魔術が、今や科学という木全体の発展に関わっているのだから、この発見がどれだけ偉大なものなのかは言うまでもないことだ。

しかし、何よりもまず先に発展したのは他でもないなのだ。


人々は魔術にエンターテイメントさを見出し、それをビジネスにまで発展させることになった。そこでエンターテイメントの中で魔術を使い、それによって収益を得ている人全般を魔術士と呼ぶようになった。最近ではテレビや各種動画サイトで沢山の魔術を用いたものが見られるようになった。

大規模な魔術は政府によって制限されているため動画の撮影や使用は罰せられてしまうが、逆に言えば罰せられない範囲であればなんだってオッケーなのだ。


俺が最近見たもので言えば、


〈魔術でドラゴンボ◯ルのカメ◯メ波再現してみた〉


〈魔術で海を走ってみた!〉


〈迷惑なヤンキーを更生させます(魔術あり)〉


など、本当に探せばいくらでも出てくる。


そう言った動画の収益で生活するのも楽ではないはずだが、まぁ憧れる気持ちは分からなくはない。


他にも格闘技の中に魔術も取り入れて行われる魔闘。上位ランカーになれれば一生豪遊できる。


最近では、魔術とスポーツを融合した新たな競技を作ることも考えられているらしい。


正直何でもかんでも魔術をつければ面白くなるとは思えないが、確かに新鮮で心が燻られるものではある。


又、娯楽以外にも、研究所や、警察官等への就職にも魔術の良し悪しが考慮されるかもしれないという話さえ出てきている。


お陰で最近は勉強よりも魔術の方が大事だという風潮があり、子供の学力は年々下がりつつあるらしい。国もそれは重大な問題であるとしているが、結局何にも改善される気配はない。


(こういう風潮が、犯罪、最悪戦争へと発展してしまう原因になるんじゃないのだろうか)


とは思うが、高校生が何を思おうが世の中は何も変わりはしない。


「目の前のことに全力で取り組もう」  


そうだ。俺はもうカッコ悪い自分からは卒業したんだ。




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