納得のいかない姫様
「冬也!」
「……はい。なんですか」
「ちょっと付き合いなさい」
「……分かった」
あれから一週間が経った。
相変わらず燈華さんは俺に付き纏ってくる。
今は放課後でほとんどの人が部活に行っているからまだマシだが、ここ最近は昼休みも教室に押しかけてくるようになった。おかげで俺はさらに多方面から色々と言われるようになってしまった。
「さぁ、今日こそは聞かせてもらうわよ。あなたのその力の秘密」
「……何度も言ってるけど、俺にそんな特別な力なんてないよ。ただ人より少しだけ体が丈夫なだけ。この前の試合も俺は運が良かっただけだよ」
「いいえ嘘よ。あの時貴方は確実に私の魔力をかき消した」
「どうしてそう言い切れる?」
「あの時貴方の周囲を私は魔術で焼き尽くした。いくら結界内で致命傷にならない程度に魔術が弱まっていたとしても火傷くらいはするはず。なのに貴方は傷ひとつついていない。まるで無かったかのように」
「……」
「いい加減白状しなさい。そもそも貴方の周りのクラスメイトにはまぐれが起きた程度の認識だろうけど、少なくとも私や上級生のうちの何人かはあの場の異常性に気づいたはず。いずれ私以外にも貴方に興味をもつ人間が現れるかもしれない。どうせずっとは隠しきれない」
「……」
「だったら私に教えなさい。もし知られて困ることならば私は絶対誰にも他言しないし他人に知られないように守ってあげる」
「……少しだけ時間をくれ」
「分かった」
正直先日の試合について、俺はかなり後悔していた。あれでも俺はかなり力を抑えていた方だった。あまり本気を出してしまうと、不審感を抱かれて、この力のことがバレてしまうのではないかと思ったからだ。
それに相手が相手。栗花落燈華という圧倒的な才女をものの数秒で倒したとなれば、間違いなく変な注目を浴びてしまう。
それはきっと良い影響ばかりではないだろう。
「ただいま」
「おかえり〜ご飯もうできてるよ」
「あぁいい匂いだ。カレーかな」
「うん。一緒に食べよ!」
「あぁ」
『頂きます』
「……春」
「何?」
「話があるんだ。食べながら聞いてくれ」
俺は深刻な顔で春の顔を見つめる。
「実は俺春に隠してたことがあるんだ」
「えっ?えぇぇ〜まさか!遂に私のこと……」
「本当は言わないでおこうって思ってた。何よりお前に迷惑だと思われるのが嫌だったから」
「そんなことない! むしろ私この時をずっと……ずっと待ってたよ」
「ありがとう」
「私もね。この気持ちはずっと隠しておこうって思ってた。でもまさか本当に
「実は俺魔力じゃない何か別の力に目覚めたんだ」
私のこと……え? 今なんて」
「…そうだよな。信じられないのも無理はない」
「いやいやはっきり聞こえたよ? 別の力に目覚めたって」
「あぁこれは紛れもない事実で
「ってことは私にはなんとも……」
「何言ってんだ。春のことが大切だからこそ俺は今まで」
「……お兄ちゃんの」
「え?」
「お兄ちゃんのバカぁぁぁぁぁああ!!!」
「え?なんだよいきなり」
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