第2話 みなみ風
「はぁ、はぁ……あの子は?!!」
たどり着いた屋上には、だれもいなかった。確かに柵に足をかける少年が…いたはずなのに。まさかもう既に
「どこ…?」
「ここにいるよ?」
「えっ?…わっ!!」
聞きなれない声に釣られ振り返るとそこには儚い笑顔を浮かべながらも美しく佇む青年がいた。
その瞬間、正直惚れた。
その全身白い格好で儚いながらも美しい姿。何を考えているのか分からない不気味さ。
全てが相まって…美しい。
そんな彼に声をかけられずにいるほど、私は内気じゃない。
「あ、あの…あなたは」
「んー…そんなことどうでも良くない?君は今ここで俺と話してる。そういうこと」
「え…」
ますます彼に惹かれているのが分かる。
さあ、もっと話を聞き出すんだ、私。
「ところで…君は誰?こんな昼休み真っ只中でひとりぼっちでここにいるだなんて相当ひとりが好きなようだね?」
「そ、そんな訳じゃ」
「ん?なんか間違ったことでも言った?俺から見るに、君はクラスではいつもひとりぼっちのように見える。あー寂しい寂しい」
彼はヘラヘラ言っている。ちょっと待って。さっきまでの儚い美青年の面影はどこに消えたの…?
「何言って」
「俺、そういうボッチで根暗な子嫌いなんだよね」
前言撤回。
こいつはクソ野郎だ。私のプライベートにズカズカ入り込んできやがって…
「…なに、よさっきから人の分析?みたいなの始めてさ。あんたこそ何者なの!」
「俺かい?俺はねぇ…風太って言うんだ。風に太郎の太で風太。覚えやすいでしょ?」
「お、覚えやすいけど…そうじゃない!」
「じゃあなに?というか君は何をしにここまで来たの?」
何をしに来たのって…そんなん
「さっき!…さっきそこの柵から飛び降りようとしてたでしょ!」
「あー…見てたんだ?」
「見てたんだ、って…見てなかったら来てなかったし」
そう言って風太はまたニヤリと笑った。
さっき窓から見た今にも消えそうな青年とは全く違う。この感じ、不思議だ。
「…見られてたなら仕方ない、か…ふふ、あははは!!」
「な、なに急に笑って…」
「君は相当運がいいね。なんてったって、この俺が君専属の学校生活アドバイザーになってあげるんだから!」
は…?
こいつは何を言っているんだろう。
アドバイザー?こんな高飛車なアドバイザー死んでも嫌だわ。
「何言ってんの?私があんたみたいな奴をアドバイザーなんかにする訳ないでしょ」
「そう?ふーん…君は自分の立場を全然理解してないんだね?」
「り、理解…?」
そう言って風太はおもむろにポケットからスマホを取り出すと素早いフリック入力で何かを調べ始めた。さっきの儚い雰囲気はどこへやら。
「…へぇ」
「何?ジロジロ見て…」
「…笠井みか、2年D組で文芸部所属。同じクラスで目立った友好関係はなし。唯一親友なのは2年B組の佐藤恭子。中学の頃のトラウマから友達を作るのに億劫になっている…とまあ、こんなもんかな」
「は、……?」
うそ、でしょ。
こんな個人情報、つらつらと…しかも間違いなんて一個もない。
「なんで、そんなこと分かるのよ…」
「俺は…まぁ言うなればSNS中毒だからね。こんな情報おちゃのこさいさい。」
「そんな…」
「ということで、君は不特定多数の個人情報を掌握出来る人物と会えたんだ。どう?凄いことだと思わない?こんな便利な俺を君専用のアドバイザーにしてあげるって言ってるんだ。友達増えること間違いなし、だよ」
「…」
たしかに、凄い。こんなこと私にはできない所業だし…でも、私は
「確かに、凄い。でも私は友達なんて要らない」
風太は顔を顰めた。ここまで暴ける彼のことだ。きっと私の『トラウマ』の話も分かってるんだろう。
「それは、『トラウマ』の事?」
「…まぁ」
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