什壱 霊籠(灵笼)2019年〜

 CGアニメ bilibiliで配信。一話はyoutubeでも鑑賞可能。


 舞台は未来。地上は人類と文明が壊滅し、異形の化け物達(噬獣)が跋扈ばっこする世界となっていた。この化け物たちは、たちが悪く殺しても死なない。一時的には死んでも、しばらく経つと再生して、また人を襲って来る。


 糧としているのは、どうも人間の血肉ではなく、生体エネルギーのようだ。吸い取られた人間は、粘土の塑像または、金属の塊状になってしまう。地上は最早、人間の暮らせる場所ではなくなっている。


 生き残った人々は、空中に浮かぶ、巨大な建造物「灯塔」の中で暮らし、時折下界に残された物質や資源を回収し、生き長らえていた。地上での物資の回収には専門の部隊が設けられ、毎回多大な犠牲を払い、行っている。


 主人公は物資回収部隊の隊長、マーク。優れた戦士で情に厚いリーダーである彼は、部下のみならず、灯塔の人々からも慕われている。物資回収任務の帰途、彼は巨大な噬獣の肩の上に人の姿を見て驚愕する。地上に人類は存在しないのではなかったか? 灯塔の長(城主と呼ばれる)に報告するも、黙殺される。


 程なく、マークは老いた城主より後継者として指名され、城主の息子チャールズの憎しみを買う。それが発端となり、マークの周辺のみならず、灯塔の人々の間にも、波紋と軋轢が生じていく。


 どこか陰鬱で閉塞感が漂う雰囲気は、進撃の巨人とエバンゲリオン合わせたような印象がある。灯塔内部の階級制度(上民、下民)に基づく、えげつない描写もある。


 グラフィックは緻密で、時として非常に美しい描写もあるが、結構グロテスクなものもある。特に、ゲジゲジが苦手な人は初回から注意だ。


 前期の終わり、灯塔の未来に僅かな希望が見えたかと思えたが、全てを打ち砕くかの如き展開が待っていた。結末が気になる。来年の春、完結編の配信が予定されている。


 緩やかに滅亡を迎えつつある人類の行く末と、世界の謎を、噬獣との戦い、徹底した管理社会下の複雑な人間関係を絡めて描いたSF作品である(R18指定)

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