お出掛け(前編)

「先輩!カッコイイです!」


扉を開けると琴音が立っていた。褒められるのは素直に嬉しい。だが琴音の「カッコイイです!」

は、信用ならない。もう何回言われたことか.....


「ありがと、じゃあ駅に向かうぞ」


「はい!」


俺と琴音は少し距離を開けながら駅に向かった。

琴音は何かブツブツ言っていたが別に気にならなかったのでスルーしてそのまま歩いた。


「そろそろ駅着くから少し時間ずらして行くぞ」


「わかりました!」


同時に駅に到着したら大智に俺と琴音が一緒に来た事がバレてしまう。それだけは避けねばならない。


「俺が先に行くから琴音は少ししたら来てくれ」


「了解です!」


俺は琴音を置いて駅の中に入った。するともう大地が待っていた。まだ10時まで少し時間があるからこっちの方が先に着くと思ったんだが.....


「お!和樹遅かったな」


大智は、俺を見つけると場所を教えるように手を振っている。


「お前が早いんだよ。何時から居たんだ?」


「9時30分」


「30分前じゃねぇか」


いやいやいやいや、早すぎだろ!30分前ってどんだけ楽しみにしてたんだよ!?なに?じゃあ30分間ずっとソワソワしながらここで待ってたの?


「いや〜琴音ちゃんと出掛けるのが楽しみで」


まだ数回しか会ったことないよな?ホントに恋って恐ろしいな


「お前ほんと琴音のこと好きだな」


「まぁな」


大智は、少し顔を赤らめて指で鼻を擦っていた。

そんな話をしていると琴音が来た。ちゃんと時間差で来るってことを守ってくれたらしい。時間差で来ないって言うことも少し予想してたんだがまぁいいか


「遅れてすいません!」


「大丈夫だよ俺も和樹も今来たとこだから」


うわぁ〜琴音のこと気遣って嘘ついたよ、俺だったら普通に30分待ったって言っちゃうな〜そういう気遣いが出来ちゃうんだもんな〜そりゃ女子にモテるのも納得だわ


「な!和樹!」


「そ、そうだな」


大智は、半ば強引に同意を求めてきたので俺は、大智に合わせるように答えた。


「それなら良かったです!」


「琴音ちゃん服可愛いね」


凄いなこいつそんなすんなり人の事褒めれるとか、しかも女子だぞ?素直に尊敬するわ


「ありがとうございます!和樹先輩も可愛いと思いますか?」


琴音のやつ!わざと言わせようとしてるだろ!めちゃくちゃニヤニヤしてるし、しょうがないここは早めに済ませた方が良さそうだな.....


「·····か、可愛いんじゃないか」


クッ...めちゃくちゃ恥ずかしいなこれ、こんなことを普通に言える大智は凄いな、って言うかさっきから大智のことを尊敬しまくってるな俺


「くふふっ♡ありがとうございます!」


「じゃあ電車そろそろ来るから行こうか!」


「はい!」


「そうだな」


俺と琴音と大智は駅の改札に交通ICカードをかざして駅のホームに向かった。


「琴音ちゃんどうしてうちの高校に入学したの?」


その質問は不味い気がするんだが.....頼む琴音!変な事言うなよ!適当に近かったからとかでいいからな!


俺は琴音にアイコンタクトを送った。琴音はそれに気づいて少しニヤけた。この時俺は琴音のことをマジで悪魔だと思ってしまった。


「え〜とそれは.....」


頼む!


「家が近かったからです!」


「へぇ〜そうなんだ」


ありがとう琴音!本当に良かった〜前俺が聞いた時と同じ答えを言ってたら色々と終わってたな。


「和樹先輩!どうしてそんな安心したような顔してるんですか?」


「和樹なんかあったのか?」


この後輩!完全に罠にはめに来てるな、どうしてそんなに俺をいじるのが楽しいのか.....


「なんもないよ」


家に帰ったら説教してやろ。

そんなやり取りをしていると


(ホームに電車が来ます)


と、アナウンスが流れた。

俺たちの乗る電車だ。電車がホームに着き俺たちは電車に乗り込んだ。休日だったためか家族で電車に乗っている人がやけに多かった。

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