買い物①
近所のスーパーに着いた。来る途中ずっと琴音が俺から離れようとしなかった。腕に抱きつかれた時は本気で引き剥がした。街中でそんな事をしてるのをクラスのやつにでも見られたら.....考えただけでも怖い。
「先輩!今日何食べたいですか?」
食品が並んでいる棚を見ながら琴音が何が食べたいか聞いてきた。
「ん〜特にないな」
あれ?ちょっと待てよ食べたいものっていつの話だ?まさか.....
「お、おいそれって今日の夜ご飯の事か?」
「はい!当たり前じゃないですか!」
当たり前じゃないですか!じゃないんだよな、
琴音の両親も心配するだろうしそもそも俺は帰って欲しい。琴音といると無駄に気力を使うからな
そもそも最初っから夜までいる気だっただろ
「いや帰っ...」
そう言いかけた時に俺のよく知る人物がいた。あの茶髪で少しチャラい様な見た目をしている奴は
大智だ、前からよくここで会うことがあった。
普段だったらそんな事をなんでもないのだが今は
まずい、それは琴音がいるという事だ。
「先輩どうしたんですか?」
「お、おい琴音俺の知り合いがいるからもし話しかけられたら俺に話を合わせろ。」
俺は小声で琴音にそう伝える。
「え?恋人って言っちゃえばいいじゃないですか?」
名案を思いついた!と言うような顔をして俺に小声で伝えてきた。だがそもそも俺達は恋人でもなんでもない。
「お!和樹じゃん」
大智が俺達に気づいてこっちに向かって来た。
俺は琴音から少し距離をとった。
「お、おう大智」
「こんにちは」
そう軽い挨拶をした。琴音も空気を読んで軽い挨拶をしていた。大智は琴音を見るやいな琴音に背を向けて俺に肩を組み琴音に聞こえないように小さな声で
「お、おいあの可愛い子お前の彼女か?」
まぁ傍から見たらそう見えてしまうのも仕方ない
だが彼女でもなんでもないのでそのままの事を言った。
「いや違う。ただの後輩だ」
「じゃあなんで一緒にいるんだ?」
「たまたま会ったんだよ」
俺は即座に考えた言い訳を並べた。とりあえずはこれでいいだろう。
「一目惚れした。」
「え?」
「いやだから俺はあの子に惚れたんだ。」
大智がそんな事を言うなんて珍しい。
大地は凄くモテる。それも学年1と言っていいほどに、それでも大智は誰とも付き合おうとしない。
大智は1年前「俺が好きになった子がいたらその子と付き合いたい。」と言っていた。
「お、おう」
でもそれって今なのでは?俺は大智がそう言っていたことを1年の時から知っていたのでその人がいたら応援するつもりでいた。大智が琴音と付き合えば親友として俺は凄く嬉しいし、琴音に絡まれる事も無くなるから一石二鳥なのでは?
大智と俺は振り返り最初にいた場所に戻った。
「君の名前を聞いてもいいかな?」
大智は琴音に名前を聞いていた。
「神崎琴音です。」
「え〜と和樹の後輩だよね」
「はい。そうですけど」
さっきから聞いていれば琴音めちゃくちゃテンション低くないか?さっきまで喋る度にビックリマークが出そうなくらいテンションが高かったのにどうしたんだ?
「あ、ごめん。俺そろそろ帰らないとまたな和樹、琴音ちゃん」
そう言って急ぎ足でスーパーの出口の方に向かっていった。
「先輩に友達なんていたんですね」
本当ならここで酷いなお前...と言いたいとこなんだが中学時代友達と言えば琴音くらいなので何も言えない。
「ま、まぁな」
「で!先輩埋め合わせしてくれますよね!」
すごい満面の笑みをこちらに向けている。その笑顔が今はすごく怖い。だがしょうがない、さっき変なこと言われるよりマシだ。
「仕方ない夜までいていいぞ」
「先輩それって♡」
頬を赤く染めていた。絶対なんか変な事考えてるだろ...
「変な勘違いしてそうだから言うが夜ご飯を一緒に食べるだけだからな」
「じゃあ夜ご飯は何にしましょうかね〜」
琴音は考える素振りをしながら食品コーナーの方に足を進めた。俺もそれについて行くようにして歩き始める。
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