第17話吸血鬼が現れた
ジョウロが空なくなったら樽に作り置きしておいた殺虫剤を補充し、駆除再開。
物陰とかによく潜んでいるようだ。この辺り念入りにやっておく。
そうこうしているとぱぱーん、とレベルアップの音が聞こえる。
おっ、レベルが上がったな。さっそくDEXに振っておくか。
イトウヒトシ
レベル12
STR{}+{{L+S+=A=`I"#‘GA+Z*+SA{=
VIT21
AGI1
INT12
DEX30
LUK1
ステータスポイント2
糸紡ぎ機クラスの工作機械を作るのに必要なDEXは50。
ステータスは高くなるほど上がりにくくなるのを考えると、レベル25くらいまでは上げる必要がありそうだな。
それでもレベル表記の横に付いている経験値バーが結構な勢いで増えている。
殺虫剤を浴びたデビルモスキートがバタバタと死んでいっているようだ。
俺からは全く見えないけど。お、またレベルが上がった。
「主よ、我も手伝うぞ」
「わ、離れてろよジルベール。一応毒を撒いてるんだぞ」
「神獣である我には毒は効かん。それより暇で仕方ない。何かやることはないのか?」
やる気満々と言った顔で鼻息を鳴らすジルベール。
こいつ、やる気はあるんだよな。ただちょっとコミュ障なだけで。
上手く役目を振り、やりがいを与えてやればよく働いてくれるはずだ。
「この洞窟にはデビルモスキート以外にも魔物がいる。そいつが出た時に倒してくれ」
「ふむ、主の護衛というわけだな。よかろう」
この洞窟に出る魔物はほぼデビルモスキートだが、他にもオークゾンビという魔物も出現する。
オークのゾンビなんて見ただけで気絶しそうだ。
ジルベールにはそれを倒してもらうとしよう。
「アー……」
そんなことを考えていると、遠くの物陰で何かが蠢く。
不気味な声と共に現れたのは、角兜を被った豚顔の巨人だった。
「ギャアーーーッ!?」
思わず叫び声を上げてしまう。
肌は青白く、目は白く濁っており、身体の至る所が腐り落ちて骨まで見えていた。
そのグラフィックはまさしくオークゾンビである。
グロい。グロすぎる。めちゃくちゃ気色悪いな。これがリアルなゾンビかよ。ゲロ吐きそうである。
「どうした主、急に女子のような悲鳴を上げて……」
ジルベールが不思議そうに首を傾げて俺を見ている。
しまった。思わず悲鳴を上げてしまったが、こいつはかつての主が気にくわない行動をとったからと勝手に失望して国ごと滅ぼすような奴だった。
そんなジルベールが俺の情けない姿を見たら……主は大賢者ではなかったのか! 騙された! よくも我を利用したな……とか勝手に失望し逆ギレしてくるかもしれない。それはマズい。
「あー、今のはその、魔法の詠唱だ。聞き慣れない呪文だったか?」
「おお、主は大賢者だからな。確かに我の知りえぬ呪文であった。それで、何が起こるのだ?」
「えーと……お、お前の身体能力を上げておいた。ほらさっさと敵を倒してこい」
「そうなのか。ふむ、よかろう」
適当に誤魔化しつつジルベールをけしかける。
それにしてもチョロいな。少しは人を疑った方がいいぞ。
ジルベールは全く疑わずにオークゾンビにとびかかっていく。
ざん! と呻き声を上げる暇もなく、両断されるオークゾンビ。
振り下ろす爪の一撃でグロく飛び散る肉片に、また悲鳴を上げそうになるのを何とか堪える。
ええい、いちいちグロいんだよ。
「ぬうっ! 魔物を一撃で倒せたぞ! さすがは主の支援魔法だ!」
「お、おう……そうか」
よかったなジルベール。それは紛れもなくお前の実力だ。
「ふはははは! 何という攻撃力だ! 主の支援魔法のおかげで魔物など物の数ではないぞ!」
興奮した様子で新たなオークゾンビに突っ込んでいくジルベール。
出てくるたびにバッタバッタとなぎ倒していく。
どうでもいいが俺の見えないところで倒してくれると助かるんだがな。
出来るだけ見ないようにジョウロで殺虫剤を撒き続けることしばし――
イトウヒトシ
レベル21
STR{}+{{L+S+=A=`I"#‘GA+Z*+SA{=
VIT21
AGI1
INT12
DEX45
LUK1
ステータスポイント5
結構レベルが上がったな。
ジルベールがオークゾンビを倒してくれているので、俺もデビルモスキート退治に集中できる。
この調子なら今日中に目標レベルまで上げれるかもしれないな。
そんなことを考えていると、ジルベールの姿が見えないことに気づく。
どうやら通路の先で戦っているようだ。
「おーい、ジルベール! あんまり遠くに行くなよー」
物陰からオークゾンビが出てきたら危ないじゃないか。俺が。
早歩きで追いつこうとした、その時である。
どがぁぁぁん! と衝撃音が響き、俺の目の前で土煙が上がった。
うおわっ! び、びっくりした……見ればジルベールが地面に叩きつけられている。
「おい、大丈夫か!?」
「ぐ……っ! 気を付けるのだ。主よ……!」
苦悶の声を上げながら身体を起こすジルベールが睨みつける先、そこにはゴスロリっぽい服を着た少女が立っていた。
青白い肌に真っ赤な瞳、口元からは鋭い歯がちらりと見えている。
真っ白な髪が暗闇に流し、細く長い指を唇に当てる姿はどこか蠱惑的だ。
「んふふ、眷属たちが随分騒がしいと思って見に来たら、こんなところに人間が来ているなんてねぇ。人間の血なんて久しぶりだから、私とっても嬉しいわぁ」
「何者だ! 貴様、名を名乗れ!」
ジルベールが吠えるのを見て、少女は不気味な笑みを浮かべる。
「名乗る必要なんか微塵もないけど……ふふ、まぁいいわ。今は気分がいいから答えてあげる。私の名はカミーラ、誇り高き吸血女王よ」
吸血女王とはダンジョンを転々とするボスエネミー、通称流れボスというやつだ。
吸血鬼なのに眷属がコウモリやゾンビとかではなく蚊というのが笑いどころではあるが、様々なスキルに加えて変身能力も持つトリッキーな強敵である。しかしまさかこんなところで出会うとは……
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