第4話とりあえず食料を手に入れた
準備を終えた俺は森へ向かって歩き始める。
魔物に見つからないようにコソコソ進むこと約三十分、ようやく森に辿り着いた。
「しかし……これは予想以上に木が多いな」
近くで見ると森はかなり大きく、草も高い伸びている。
ここで魔物の相手をしながら目当ての植物を探すのは無理だな。
「仕方ない、森には入らず外周の草を刈っていくか」
魔物に突然出くわすくらいなら、森には入らない方がマシだ。
視界を確保しながら慎重に作業するとしよう。
アイテムボックスから石と枝を取り出し、DIYスキル発動。
作り出したのは石鎌だ。
鎌は大昔からある草刈り道具で、今は大型のものは殆ど使われなくなったが死神の武器などで知名度は割と高い。
石鎌を手に思い切り振り回すと、ざん! と草が一気に切断された。
これなら少々魔物が出てきてもまとめて倒せそうだが……あんな恐ろしい生物を前にして冷静に鎌を当てられる自信はない。本来の用途で使うとしよう。
どんどん草を刈り、それを拾っていく。
気づけばアイテムボックスには大量の草花が並んでいた。
アイテムボックスの草フォルダを開けると、ススキにヨモギ、カタバミなどなど……無数の草花が並んでいた。
雑草でひとくくるにすればいいのに、このゲームはそういうところ異常に作り込んでいるのだ。
当然栽培も可能で、植物学者かなんかがその出来栄えをすごく評価していたっけ。
俺は草花には興味ないからスルーだったけど。
「あ、木もまとめて切れちゃった」
本来なら木を切る際は斧に切り替えるべきなのだが、STRバグのおかげで鎌でも全く抵抗なくぶっとい木を切断できた。
わざわざ持ち替えるのは面倒だったから助かるな。
倒れた木を拾い、木材をゲット。
ちなみにこの木材もアイテムボックス内でフォルダ分けされており、サルスベリとかスギとか様々な種類がある。
これらの素材は特に指定しなければ自動消費し、指定すれば個別に使えるのだ。
ちなみに、アイテムボックス>素材>木>スギ、みたいな感じでフォルダ分けされている。
魔物に警戒しつつ、草を刈りつつ木も切り倒していく。
拾ったものはアイテムボックスにどんどん入れていく。
全部木と草ではあるが、すごい勢いで埋まっていっている。
魔物が出てこないよう祈りながら、作業を続けた。
「ピギッ!?」
「わっ!」
いきなりの鳴き声に、俺は驚き手を止める。
一体何が起こったのだろうか。俺は石を手にぐるりと辺りを見渡す。
魔物だろうか。こんな事もあろうかとちゃんと視界を確保しているぞ。いつでも来い。
身構えていると、
「ピ……ギィ……」
弱々しい声の後、ぱぱぱーん! という音が頭に響いた。
レベルアップしたようだ。一体何故?
「ん、もしかして……」
先刻切り倒した木の辺りを見ると、獣らしきものが下敷きになっていた。
頭が潰されスプラッタになっているから何かはわからない。相変わらずグロい。
そういえばこのゲームは罠を張って敵を倒すことも出来るんだった。
木を倒した時に偶然下にいたのだろう。
「ふーむ、脚の形から見てでっかいウサギかな」
この辺りでウサギ型の魔物といえばホーンラビットだろうか。限界は留めていないけど。
そんなことを考えているとホーンラビット(?)の死体は消滅し、毛皮と肉が残った。
「消滅したってことは、やはり魔物で間違いないみたいだな」
このゲームでは普通の獣は死体のまま残り、解体して利用するのだが、魔物はアイテムだけ残して消滅する。
見た目は美味そうな肉だが、魔物の肉なんてあまり食べる気は起こらない。
未知の病原菌とかいるかもしれないしな。それはなくても変な味がしそうだし。
とはいえ非常食としてとりあえずアイテムボックスに入れておくか。
「ん、これは……!」
戦利品を眺めていると、アイテムボックスの中に稲を見つける。
言うまでもなく現代食の中で最も使われている食材の一つだ。
どうやら草刈りをしている時にいつの間にか拾っていたようである。
「よし、幸先いいぞ」
稲を育てれば米が食べられる。
米は低コストで大量収穫出来て保存も利く為、ゲームでも便利な食材だ。
森の奥に生えていることが多いので数日は手に張らないのを覚悟していたが、初日で手に入ったのは幸運だった。
「稲も手に入ったことだし、今日はこの辺で帰るか」
まだ日は高いが、昼の中にやらなければならないことはたくさんある。
というわけで俺はさっさと帰還した。
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