追憶 蒼雷の死神

芋メガネ

追憶 蒼雷の死神

かつてFHに兵器として造られた『ヌル』という少年がいた。

他を殺す為だけに造られたその少年は、UGNに保護され『13』という特務部隊の一員となった。

のちにある少女と出会い、彼女と長い間を共に過ごした。

『こんな傷なんてへっちゃらへっちゃら!誰かの笑顔のためならね!』

『全く、お前は……』

その少女は誰かのためならば傷つくことも厭わず、気がつけばいつも誰かのためにボロボロになっていた。


いつしか少年はそんな少女に、『ヒーロー』に憧れを抱いた。

『電気だけじゃなくて磁石も使えるようになったよ!!』

『そうか。』

『何よー、これのおかげでバリアとかもできるようになるんだから!』

『……そうか。』

『ん、蒼也。今笑った?』

『気のせいだろ。』

感情を消されていたはずなのに、そんなこと思わないように造られたはずなのに、いつの間にか少女と共にいる事で、多くの感情を学んだのだと思う。



そしてヒーローに憧れたその少年は、

『ありがとう……蒼也……』

『何で……………何で………!!』

大切な人を、自らの手で殺した。



—————————————————————



全ての感情を消されたはずの少年が初めに認識した感情は"憎悪"だった。


憎い、ただ憎い。

彼女を、誰よりも他人の為に生き他人の為に戦った彼女を貶めた『UGN』が、『13』が憎かった。

正義を謳いながら、誰よりも正義に近いその人を殺した組織を許せなかった。


同時に、彼女の持っていた雷の力が宿った。

全てを守る為に鍛え上げられたその力。

皮肉以外の何物ではないと思えた。

ヒーローを殺した"悪"に宿るなど、以ての外だ。

死にたいとも思えた、なにもかもが許せなかった。


けれども託された。

『妹を……お願いね……』

その人の、大切な人を。


故に彼は、守護者供を狩る『FH』の狼に成り果てた。


そして雨模様の夜空の下、

『こんな事して……あいつが喜ぶと思ってんのかよ……黒鉄!!!!』

『黙れええええええ!!!!俺をその名で呼ぶな……俺はもうその名は捨てた……!!!!』

かつての相棒と刃を交えた。

復讐のため、憎悪の炎の中、かつての仲間たちと命の削り合いをした。


結果?そんなもの言うまでもない。

『まだ……終われねえんだよおおおおおお!!!!!』

『させるかああああああ!!!!』

正義なきその男に、勝ち目などあるはずがなかった。

かつての相棒の一撃によって、彼は右腕を失った。


されど、その男は死ねなかった。



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新たな腕が取り付けられた。

人の物ではない機械の腕。

それを擬態するための仮初めの皮膚。

『義手の調子はどうだ、ヌル。』

『悪くはないです。仕込み武器に、稲妻を武器に宿す機構。どれもこれもまだ能力面で未熟な俺の助けになります。』

『テメエの右腕には相当な金がかかってるからな。壊すんじゃねえぞ。』

敗北を経た俺に与えられたのは最新鋭の技術で作られた腕。

そして、対UGN部隊『ルプス』の隊長という地位。


決して消えぬ憎悪を宿した彼は、再度復讐の機会が訪れるその日まで研鑽を積んだ。


遠ざかっていくかつての理想。

もはやこの手に正義などなく、理想なんてものもなかった。

ただ復讐のため、交わした約束のためだけに生き続けていた。


そんなある時、

『黒……鉄……?』

『久しぶりだな。』

かつての相棒が『13』を裏切った。

正確には彼の大切なものが奪われんとし、彼はそれを守る為に逃げ出したのだ。


ならば今が好機。

『13を本気で潰す気か……!?』

『ああ、その通りだ。』

利害が一致した今なら、奴らを潰すことが出来る。

そう確信した彼はかつての相棒と取引をしたのだ。


そして相対する仇敵。

『久しぶりだな……ヌル。』

『この日を待ちわびた……お前を……偽りの正義を騙る貴様を殺す、この日を!!!!』

辿り着いた深層。

彼は奴を討たんとその銃口を仇敵に向けた。


けれども、そこで彼を待っていたのは——

『何で……何でお前がそこにいる………!!』

かつて憧れた、正義の味方の姿をした獣だった。


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ぶつかり合う稲妻。

止め処なく放たれる力と力。

けれども彼に彼女を再度殺せるはずもなく、次第に追い詰められていった。


『やはりお前に私は殺せないよ。少なくともお前が再び非情な、いや無機質な兵器にでも戻らない限りはな。』

『黙れ……!!』


仇敵のその言葉に怒りを覚えながらも、どこか府に落ちてしまっていた。



————俺に奴は、彼女は殺せない。



彼女と、その妹と、相棒と、仲間たちと過ごした時間があまりにも長すぎた。

彼は人としての感情を消された筈の感情を取り戻してしまっていたのだ。


頭で理解したところで、感情は理解してくれない。

彼女がもう生きていないということを、あのヒーローの姿をしたものは、ただの化け物だという事を。


このまま悪として討ち滅ぼされれば楽になれるかもしれない。

ようやっと救いが訪れるのかもしれない。


けれども————

『ちょっと力使いすぎちゃって…多分私はジャームになっちゃうの…。だから、誰か傷つける前に…ね?』

誰かを傷つける事を拒んだ彼女を、誰よりも他人の事を思っていたヒーローの亡骸が利用される事を許せなかった。


故に選んだ道はただ一つ。

『電圧最大…………終わりにしよう…………!!!!』


彼は人を辞め、悪の兵器と堕ちた。


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そこからは僅かだった。

『……今、お前との約束を果たす。』

正義の雷の宿った一射、それはありとあらゆる障害を打ち砕いた。


そして——

『安らかに眠れ。』

乾いた音ともに鮮血が舞う。


彼は大切な人を殺した。

それも二度も。

それでももう、彼は何も感じていなかった。

兵器に成り果てた、いや戻ったという表現が正しいか。


『死ね、外道。』

そして復讐を果たした彼……いや、それは再び闇へと消えていった……


—————————————————————






3年の時が経った。


ルプスとして彼は、数多のUGNエージェントらを屠り、幾つもの支部を潰し続けてきた。

兵器として生き続けて3年、その戦い方、様相から『死神』と恐れられた。

それは敵だけでなく、味方からもだ。


だが時折悲しくなる事があった。

罪の意識に苛まされ眠れない日もあった。


そういう時彼は煙草を咥え、煙を頭の中に流し込んだ。

記憶も感情も煙に呑まれ、吐き出すと共に頭の中が空っぽになる。


それと共に、彼は自らが兵器であるという事を再度自覚する。


そして終わりが来る日まで、真なる正義に討たれるその日まで続くのだろうと半ば諦めながら生き続けていた。


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ある日、それはUGNへの協力者を装いUGNの内情を探る任務を与えられた。

『で、貴方は誰なの?』

『俺は黒鉄蒼也、UGNイリーガルだ。』

そこで、あるUGNの少女と出会った。


世間一般的には女優と活躍し、裏の顔としてUGNのエージェントとして戦っている少女。

妹がファンだと言っていたから何となく彼もその存在を知っていた。

『宜しく頼む。』

『ええ、こちらこそお願いするわ。』

そして彼女との出会いが、彼の日常を変えた。


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『黒鉄!!』

『分かっている。』

幾たびもの任務を終え、気づけば彼女らと過ごした時間は数ヶ月が過ぎていた。

『助かったよ黒鉄君。』

『いえ、俺は俺のやるべき事をやっただけです。』

スパイとして潜り込んだはずの支部、されどいつの間にかその場所は彼の居場所の一つとなっていた。


けれども彼らは敵、己は一つの兵器であり人には非ず。


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『…………ねえ、貴方の目的って何なのかしら?』

『ここにいるのは煙草を吸う為だ。』

『…………そういう事を聞いているんじゃないのよ。』

『はっきりと言ったほうがいい。変に隠したところでどちらも傷つくだけだ。』

屋上での二人だけの会話。

『なら聞かせて、貴方はなぜ私たちに協力してくれるの?』

彼女が彼に疑いをかけたのも無理もない。

突如現れた怪しいエージェントなのだから無理もない。

『強いて言うなら…………』

言葉に詰まった。

嘘偽りの言葉はいくらでも用意していたはずなのに、答えることができなかった。

『強いて言うなら、どうしたのかしら?』

『……そうだな、俺が信じる正義の為に戦っている。』

彼が答えたのは、用意した答えとは違った。

『正義……ね。貴方の口からそんな答えが出るのは予想外だったわ。そんな非現実的な理想を貴方みたいなリアリストが掲げているなんてね。』

少女は少し驚いたような様子で、少し皮肉交じりに口にした。

『しょっちゅう言われるよ。妹にもよく笑われる。』

『あら、貴方笑うことなんてあるのね。』

『……?気のせいじゃないのか?』

『……貴方も素直じゃないのね。』

二人笑みは素直な笑みではなかった。


だが、彼にとって少女は興味の対象になり始めていたのだ。


『奇遇だな。送ろうか?』

『歩いている私に気付くなんて目がいいのね。……じゃあお願いしようかしら。支部まで。』

『ああ。』

男は時折二人で話すようになった。

決して恋仲になった訳でもない。

だが、どこか彼女には通じるものがあったのだ。


決して表に出すことはなかったが、その少女は誰よりも他人を慈しみ、優しさに満ち溢れていた。

仲間が傷つけば誰よりも悲しみ、そしてそれを一人で抱えようとする不器用さを持ち合わせていた。

そんな彼女にかつてのヒーローを、己が守れなかった存在を思い起こす。


『兄さん、ちょっと嬉しそうだよ?』

『気のせいだ。俺にはそのような感情は用意されてないからな。』

『もう、素直じゃないんだから。』

『それと、サイン入りの髪飾りをもらえたぞ。妹さんによろしくと。』

『え!!!!ありがとう兄さん!!』

そして妹、ヒーローの忘れ形見と暮らして3年。

平穏な日々が訪れていた今、この日常に身を委ねても、兵器という生き方を辞めてもいいのではないか。


————そう思ってしまった。




—————————————————————





『久しぶりだね黒鉄蒼也。いや、FH所属のヌルと呼んだほうがいいかな?』


平穏など一瞬で打ち砕かれた。

事件の中で出会ったテロリスト。

それは彼の存在を知っていた。

彼の救いを知っていた。


だからそれを、たった一言で壊したのだ。

『嘘だろ黒鉄……?』

『まさか、君が……?』

『…………』

向けられる疑いの目、非難の眼差し。


ああ、分かっていたさ。

俺は裏切り者。

そして、他を殺すためだけに作られた殺戮兵器。


忘れてしまっていた、いや忘れてしまいたかった。


己が悪だということを、正義に仇なすものであるという事を。


そして、彼らと相容れない存在であるという事を。


『ねえ、貴方は本当にFHのエージェントなの?』

『……ああ。』

『じゃあ、今までの貴方は全て嘘だったの?』

『……ああ。UGNイリーガルなんて物じゃない。俺はFHの殺戮兵器、ヌルだ。』

『…………自らの事を兵器と呼ぶなんて、くだらない価値観を持っているのね。残念ながら私は兵器ではないから貴方の感情は理解できないみたいだわ。妹さんが可哀想に思えてきちゃう。』

哀れみだった。

彼女から向けられたのは非難でも、疑いでもない。


彼という男に向けた憐れみのみであった。


『それじゃあさようなら、UGNイリーガルだった黒鉄蒼也。本当の貴方に会える事をいつか楽しみにしているわ。』

『……次会うときは、FHのエージェント、ヌルとして相対しよう。』


彼は訣別した。

平穏とも、日常とも、そして——

『どういう事、兄さん!?』

『お前は、俺とではなく彼女らと共に生きるんだ。』

かつて交わした約束とさえも。


独りになる。

だが寂しさ、孤独さなど感じない。

己は人でないのだから当たり前なのだ。

それでも、無性にタバコが吸いたくなった。

煙に全てを委ねて、何もかも忘れてしまいたいと思えた。


タバコに火を灯す。

煙が頭の中を呑み込んでいく。


けれどもこの日のタバコは思考も記憶も、何もかも消し去ってはくれなかった。



—————————————————————


独りになって数ヶ月が過ぎた。

『ヌル、今日のテメエの仕事は潜入だ。』

『了解です。』

昔と変わらずただただ与えられた命令に従い、ただただ無為に人生を送っていた。


『こちらヌル、潜入に成功。』

俺のもう一つの居場所だった彼らと鉢合わせないような任務で死に場所を探す。


二度と正義を行使することなどできない。

そう思っていた。


彼は少女を助けた。

状況からして逃げ出した誰かか、それとも潜入中にヘマをやらかしたのか、どちらにせよ潜入中であるにも関わらず助けてしまった。

『どこの誰か存じないけど助かったわ……』

『立てるか?』

そして暗がりの中、ライターで明かりを灯した時、互いの顔がぼんやりと映し出された。

『…………黒鉄?』

『何でお前がここに…………』

訣別したはずの少女。

二度と会わないと誓っていた筈なのに、神のいたずらか2人は再度出会ってしまったのだ。

『…………何でって、任務よ。そうね、ちょうどこの間までの貴方みたいに潜入ね。』

『…………なら、今は味方ということだな。』

『……どういうこと?』

『敵の敵は味方というやつだ。』

男の判断は間違いである。

少なくとも潜入任務という、単独行動かつ隠密行動がセオリーとなるこの任務で2人で、しかも敵と組むというのは愚策以外の何者でもない。


それでも彼は、捨て切れていなかったのだ。

己が日常を、そしてかつての仲間を。

同時に————


『…………ねえ、データの抜き取り中くらい何か話してくれない?それとも本当に機械になってしまったの?』

『俺はそもそも口下手だ。』

『そうね。でも案外そういうところが人間らしいわよ。』

『…………俺は兵器だ。大切な人を二度も殺して悲しまない奴が、人のはずないだろう。』

『…………貴方のそういうところ、本当嫌い。そうやって思い込みが激しい癖、いい加減直したら?』

『…………できればそうしているさ。』


思い込まなければ、やってられなかった。

人間なら罪の意識も、悲しみも、悔しさも感じたはずだろう。

あの時、大切な人を殺したその時、彼はそれのどれも感じなかった。

そんなものが人な訳がない。

人であってはならない。


彼女が守ろうとした、救おうとしたものの一つであってはならない。


彼はそう思い続け、3年間行き続けてきたのだ。


今更、辞めることなど——


その時、施設の中が騒がしくなる。

『…………見つかったみたいだな。』

『そうみたいね……』


終わりの時が、近づいていた。


—————————————————————


『もってあと何分かしら……』

『バリケードも急ごしらえだ。5分も持てばいい方だ。』

『……袋の鼠と言ったところね。』

狭い部屋の中、2人はただ無為に進むデータ移行のバーを見つめていた。

『…………こんな男と最期を迎えるなんて、お前も運がないな。』

『そうかしら。少なくとも独りで死ぬよりも全然マシよ。それに、貴方顔だけはそれなりにいいから案外と悪くないわよ。』

『……それなら光栄だ。』

互いに皮肉を交えながらも、どこか落ち着いていた。

そして同時に、胸の奥から込み上げてくる何かを彼は感じていた。


『……一服してもいいか?』

思考も、感情も何もかもかき消したい、故に口に咥え火をつけようとした。

『悪いけど、その臭い嫌いなのよ。』

『……仕方ないな。』

けれども何故か今だけは吸わなくてよかった、とも思えた。

かき消したい反面、この気持ちを最期くらい味わいたい、そう思えた。


バリケードを置いたドアもクラックが入り、あと数分もすれば武装した人の群れが流れ込んでくるのだろう。

そうすれば、確実に2人とも命はない。

『おかしいわね、兵器が笑うなんて。』

『…………笑っていたのか、俺は。』

ふと上を見上げた。


その時、通気口に目がいった。


『…………潮時か。』

彼は立ち上がり、ナイフと拳銃を構えた。

『……どこに行くの黒鉄?』

『…………最期くらい、ヒーローでありたいと思ってな。』

確かに2人ともここで待っていれば訪れるのは死のみ。

だが、もし1人が外に出れば、1人が時間を稼ぐことができれば。

『まさか貴方……』

『2人死ぬか1人死ぬのであれば、後者の方がマシだろう。』


右手に雷を宿す。

正義の雷を、他者を守るために宿った蒼雷を。

『…………ありがとう、俺を兵器ではなく、人と呼んでくれて。』

『……そんな事で礼を言われたって——』

『ずっと昔から恐れられてきた。こんな無愛想で、無表情で誰かと戦う様から兵器、死神、と。でもお前は俺を恐れないでいてくれた。だから、今こうやって戦うことも何も怖くないんだ。』


せめて、伝えなければならないと思えた。

『俺は、お前のことを大切に思っている。兵器ではなく、人として。』

『……何よそれ。』

『俺なりの告白だ。これから壊れ去る兵器の戯言だ。忘れてくれ。』

振り返らない。

振り返れば覚悟が薄れてしまうから。

人として、生きたいと思ってしまうから。


『…………まだいくらでも文句はあるんだから必ず、生きて帰って来なさい。私は、私たちはあの場所で貴方を待っているから。人としての貴方を待っているから。』

『…………ああ、分かったよ。』

振り返らない。けれども彼は笑顔で答えた。

たった一度だけヒーローとして、人として彼女に応えようと。


ドアを開き、構えた。

『さあ、始めようか……!!』


そして男は————


—————————————————————


「何物思いにふけているのかしら?」

「少し昔のことを思い出していただけだ。」

ココアシガレット片手にベランダで涼んでいたところ声をかけられる。

「で、私の話は聞いてたのかしら?」

「ああ。新宿に現れたFHエージェントの対応だな。」

「ええ。私は私で手は離せないけど、霧谷から増援が欲しいと言われてね。正直助かったわ。」

「どうせこういう生き方しかできないんだ。それでお前を助けられるなら本望だよ。」

「…………お願いだから、無事に帰って来てね。」

「……善処はする。絶対ということはないからな。」

「こういう時くらい、気が利くことを言ったらどうかしら?」

「すまないな、昔からなんだこれは。」

「……貴方らしいといえば、貴方らしいけどね。」

温もりを感じる。大切な人の温もりを。

肌寒くなったこの季節の中で、左手と、胸の奥だけがどうしようもないくらいに暖かくなっていた。


—————————————————————


いつの日か、守れなかったものがあった。


大切な物をこの手で奪ってしまった。


多くの人を騙し、傷つけ、殺めた。


それでも、俺を受け入れてくれた人がいた。

俺に生きていいと言ってくれた人がいた。


ならば俺は戦い続けよう。大切な人を守る為に。

かつて俺のヒーローが遺した正義を守る為に。


例え誰から非難され、蔑まれようとも。

例え、悪だとしても。


それが俺の信じる、正義だから。


to be cotinued……

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追憶 蒼雷の死神 芋メガネ @imo_megane

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