3話 手助け

すっと伸びた背筋にきちんと揃えられた足。時折吹く風で落ちてきた髪をかきあげる仕草が綺麗でどこかのお嬢様みたい。髪の毛も丁寧に手入れをしているようで艶があってさらさらしてーーー

「…さん?一ノ瀬さん!ちゃんと授業聞いてるの?」

「…は、はいっ!」

「はぁ、ぼーっとする余裕があるならもちろんこの問題、解けるわよね?」

そう言って先生は黒板をチョークでコツコツと叩いた。

291÷74。さっきまでぼけっとしていて授業なんて聞いてないしもともと割り算は苦手だから、こんなの解けるわけが無い。

4年生になって割り算がいっぱい出てくるようになってからは算数のテストは悲惨なことになっている。

「え、えっと…」

助けを求めるように周りを見渡すと莉彩ちゃんと目があった。

『… 3あまり69』

口パクでそう教えてくれた。

「…3あまり69です」

先生はちらりと黒板を確認すると驚いた顔をして

「あ、当たってるわね…。ごほん、次からは真面目に授業を聞くのよ」

緊張が解けてどっと疲労感がした。

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