1話 出会い

私は、いわゆる「不思議ちゃん」として扱われていることにうすうす気付いていた。

どうすれば周りに溶け込めるだろう?小学4年生にしてそんな大きな壁にぶつかっていた。


周りから話しかけられればそれに答える、私が話しかければ誰かが答えてくれる。その程度の繋がりしかない子だけだった。 友達は1人もいなかった。

だからこれは、神様が私に友達を作るチャンスをくれたのかもしれない。



「今日は、転校生を紹介します。片桐さん、自己紹介して。」

その子はお人形さんみたいに大きな目をしていて、色素の薄い髪が太陽の光を反射して

キラキラと輝いていた。


片桐かたぎり莉彩りさです。よろしくお願いします。」

とても淡々と無表情で言った。


笑ったら絶対かわいいのに。なんで笑わないんだろう?もしかして緊張してるのかな?

私はニコリともしない彼女に釘付けになった。

そして、運がいい事に片桐さんは私の席に近い、右斜め前の席になった。


朝の会がそのまま続いたけど、私は片桐さんのことが気になって、何も耳に入らなかった。

手も足もすらっとしていて、私じゃ絶対に着こなせないような可愛らしいふわふわしたロング丈の花柄のワンピースがとても様になっていた。

でも、その可愛らしいワンピースと、無表情の片桐さんはとてもバランスが取れていないように思えた。


「……それじゃあ、朝の会終わりです。日直さん、挨拶して」

「きりーつ、れーい、ありがとうございましたー」

『ありがとうございましたー 』


私はすぐさま片桐さんに駆け寄った。この子となら友達になれると本能が言っていた。

「私、一之瀬律葉っていうの。髪が結構長いから、分かりやすいでしょう?律葉って呼んでね」

昔からなにかと男の子みたいと言われるから、せめて少しでも女の子らしく見えるように髪を伸ばしていた。

雑に手入れをしているせいで、片桐さんのようなさらさらではないけど…

「じゃあ、私のことも莉彩って呼んで」

莉彩ちゃんは無表情のままだったけれど、私を嫌ったり、拒絶しているわけではないみたいだった。

「なんの教室ががどこにあるかまだ分からないでしょ?昼休みに案内してあげるよ」

「ありがとう」

そよそよと風がふいて、莉彩ちゃんから微かに石鹸の香りがした。

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