発展途上

人生は最期まで発展途上である。国という単位で言うならば発展途上国と先進国という風に色分けされるのだけれど、一個人を見たときに先進性を兼ね備えているかという質問に対しての答えはノーである。もちろん先進的、前衛的と呼ばれる方々は多くおられるけども、そんな方もひっくるめて発展途上であると私は言いたい。人間には経験値という素晴らし機能が備わっており、その経験値という盾を使って戦うしかないのである。もし先進的でこれ以上を望めないのだとしたらそれは本人の限界なのだろう。私は少なくとも目は摘みたくないから学生諸君にもそうやって話す。そのやり方に対して、否定的なコメントは避けるように心掛けている。ましてや二十歳そこそこの人材に対して、あれはだめだ、これは良くない。といったところで多く秘めている可能性の大半を摘み取ることになりうるので余計に気を使って可能性はできるだけ可能性のままとどめておくようにする。もちろん現実的な話をしなければならない場面もある。だが、あきらめるな。と私は口を出してしまうのだろうと思う。答えというのは数学じゃない限り一つではなくて複数個の選択肢が提示される場合が殆どである。それ故にどの選択肢に向かいたいのかをじっくりと見極め、その方向に行くようにアプローチを教えてあげる。それに尽きるのではないだろうか。それに前衛的かどうかを決めるのはできた作品に対して客観的に与えられるものなのだから自分で前衛的と言っている以上は前衛的ではないと思う。かの有名な建築家でさえ、自分の作品を前衛的とは言わなかった。結局どうしたいのかという疑問に対しての答えを見つけただけで、何一つ前衛を攻めていないのである。もし自分がデザインを心ざすなら考えてほしい。それは他人の真似だということを。

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