生きることを楽観する

私は極度の悲観主義者だからあんまり楽観してものをとらえることができないけれど世の中楽観的に生きるほど楽なものはない。楽をするというわけではない。先行きを明るくみて動けということにすぎない。楽観的に生きると精神的に楽になるし、楽に仕事をこなすとあまり怯える必要がないので意外にも仕事がうまくいく。これは間違いない。私がどこかの会社に入るとその会社の未来が見えなくなってしまいたちまち気分が落ち込んでしまい、結局仕事に将来性を感じなくて辞めてしまう。しかも私が見るビジョンというのは十年やそこらじゃない。退職のことを考えるのでおおむね四十年後くらいを想像するのである。そうすると将来私の会社は方向転換するか、もしくは潰れるかの二択になるのが大抵だ。建設業なんて自転車操業だから毎日のことを毎日考えているのがやっとなので将来のビジョンなんていうものは概ね見えていない。倉庫の工事にしたって、受注数がどんなに稼げていてもそれは将来の受注の可能性を狭めているだけで今を今で食っていってる状況だ。それを考えたら研究職なんていうのは将来性がある。少なくとも十年後の標準化を目指して物事に取り組むわけだから十年間は食っていける。十年後になれば法改正もあるからまたそれが研究になる。新しい技術はどんどん生まれていくし、たいていの場合その領域の専門になるわけだから頑なに住宅をやったり倉庫を作ったりという特化型に比べると将来性がある。だから私は教授職を目指しているのだし。それに加えて教授になんてなっても学生は減ることがないから、大学教育が崩壊しない限り食っていける。現状で言えば今新生児として生まれた世代が私の教え子になるわけだから三十年前後は食べていける計算になる。そう考えると教育としての建築は途絶えないし、研究としても将来は明るいのである。物事を悲観的にとらえるとこんな感じだから二十年後の未来自分がどうなっているかなんて想像しない方がいいに決まってる。だけど私は悲観主義なので定年退職までのレールをこれでもかというくらい丁寧に敷くことにしている。

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