第3話 消去
「どういう事なんだ? ……駅のホームに駅が来たぞ?」
ガラガラとその駅が通り過ぎた後、ガタリと肩を落とす。いやいや、そんな訳が。いや、俺がおかしいのか? 確かに思い出とかそういうのは全く思い出せないけれど。でも、そんな小さなものではない。根幹からどこか狂っているような、そんな感じがする。
「その反応――間違いはないようね」
「間違いない?」
「えぇ、あなたはきっとこの世界に転移してきた人物だという事よ」
* * *
数年前はこの街はこんな変な所では無かった。ホームには確かに電車がやってきていたのだ。しかし、ある日気づけばこんな世界になっていた。出ようとしても見えない壁に苛まれてこの街からは出られない。
まるでこの街だけが違う場所に切り取られてしまったみたいに。
「あなたの記憶はバグが発生する前の常識に酷似している。何より、キチンとした人の形を保てているのが第一の証拠」
「キチンとした人の形って、それはあんたもじゃ? まさか俺と同じように」
「いえ、私「
そう言うと、証拠と言わんばかりにカポリと自分の腕を外して見せた。あっさりと簡単に外すものだからリアクションのタイミングを逃したではないか。まったく、驚かせてくれる。
「って言われても、信じられるはずが……」
「まぁ、ここで過ごしていれば嫌にでも理解するでしょう。問題はどうやってこの世界にあなたがやってきたかです」
「どうやってって……どうしてそんなことを知りたがるんです?」
「私達はここから出たいのよ。何故なら……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
刹那、地面が激しく揺れる。
地震――いや、違う。何かがくるような、そんな振動。
「警告――周囲に『巨大消去』が発生」
「ここはバグ。消されることが運命の世界だから」
そう言って彼女はロボットから刀を一本受け取る。彼女の紅い髪とは対照的な真っ白な刀だった。
「雖後=縺√=縺√=縺=縺√=縺√=縺! 豁サ縺ォ縺溘¥縺ェ縺!」
地面から飛び出てきたのは真っ赤な電車。ギリギリと車輪を回しながら龍のように空を飛んでいる。こちらを見つけたのかファンとライトが点滅するとこちらに突っ込んでくる。
「危ない!」
彼女は俺を抱えると高くジャンプし、列車の攻撃を避ける。ロボットの方も慣れているのか、エンジンを射出しロケットみたいにすばしっこく飛んでいる。
「あなたは私達から離れて隠れていなさい。バグがないあなたは消される事はない。こいつの狙いは私達」
「ちょっと待って! あんなでかいやつ倒すつもり?」
「大丈夫。戦いは慣れている。行くよ「31」。準備はいいか?」
「準備完了――いつでも大丈夫」
そう言うと、「7」はロボットに乗って高く飛び上がった。
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