第2話 駅のホームで目を覚ます

「生体反応あり、外傷なし、気絶しているだけだと推測」


「……?」


 誰の声だ? 目が見えない。


「そう、ならしばらく待ちましょう」


 段々と視界が開けてくる。ここは……?


 俺の前には4本の足があった。そのうち2つは見た目普通の足、残り2つは昔のロボットであるような、直方体で構成された鉄製の足だった。


「目が覚めたようね」


 そう言ったのは普通の足をした方、赤い髪をおさげみたいに後ろで束ねている女の子だった。その横にはTHE ロボットと言っても差し支えないほど、四角形で構成されたロボットもいる。


「2人? が助けてくれたんですか?」


「否定。私達は駅のホームで倒れているのを発見しただけである。特に手は尽くしていない」


「そうなんですか……でも、ありがとうございます」


 そう言って立ち上がるとパッパと泥を払った。


「ところで貴方は何故こんな所で気絶を?」


 気絶? あぁ、気絶していたんだっけ俺。でも、何故かと言われても……ダメだ思い出せない。


「ごめん、よく覚えてないんだ」


「覚えてない? ちなみに名前は?」


「名前? あぁ、えっと……」


 おかしい。あれ? なんだっけ、俺。


「推測、何かをきっかけにして記憶喪失になっている可能性」


「なるほど。という事は今夜、寝泊りする場所もない訳か。とりあえず、私の家に来ると良い。そんなに快適なところではないけれど」


「警察に行くので大丈夫。場所と説明だけお願いしたいんだけど」


「警察?」


 今度は向こう側が、変な顔を浮かべる。


「何かおかしい事言いました?」


31スリーオーワン、警察って何か知ってる?」


「社会秩序を保つため、国家の統治権に基づいて国民に命令・強制する、行政上の作用の事。現在、そのようなものは存在しない」


 警察が存在しない? そんな馬鹿な話があるか。何かの間違いだろう。


「いや、あるはずだよ。警察は」


「記憶に異常があるのに断定できるの?」


「解離性健忘の可能性。私達には起こり得ない症状。この少年に対して世界の説明をする事を推奨」


「そうね、拉致があかないものね」


 世界の説明? 何を言っているんだ?


「この世界は貴方が思うような常識が通用しない世界。バグの世界よ」


バグの世界?


《次は2番線電車が参ります。通過電車です。ご注意下さい》


アナウンスが響くとガラガラガラと何かがやってくる。やってくるそれを見て俺は唖然とした。


「そんな馬鹿な!」


やってきたのは駅のホームだった。

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