恋する金魚鉢
@nanomate
第1話
人の一生は暇つぶしに似ている。膨大な時間をただ浪費するだけ。そう思ってた、3年前のあの日まで。
新しい生活が始まる春、浮き足だった学生達も居場所を見つけて落ち着き始める頃、県内でも有数の歴史ある高校に進学した俺は未だ学校に
最初こそ静まり返った教室を
刺激は噛み続けると味がしなくなる、ならば新しい刺激を
「なんだよ、何にもねぇじゃん」
カズナリ、校風に馴染めないというよりも勉強に馴染めないことで意気投合した仲間が不満を
特別教室、特に理科室ならおもしろいものが転がっていると期待して来てみたが、ホルマリン漬けのビンも
古びたガラス張りの
何で
その
それは人の顔だった。
ゴトンッ
驚きのあまりそれを地面に落としてしまう。
幸い金魚鉢は割れなかったが白い液体がどくどくと
「何かあったか?うわっ、きったねぇなぁ」
物音を聞きつけてカズナリがやってきた。
「元から汚いんだから別にいいだろ」
確かに人の顔を見た、はずだったが
~~~♪~~~♪
突然の着信音に心臓が止まりそうになる。
聞き覚えのない音だったから自分のものではないと思った。
しかし音は明らかに自分のポケットから聞こえる。確認してみると表示は非通知。
「古っ、何年前のだよ」
「こんなん登録してねーし」
「早くでろよ」
覚悟を決めて電話に出てみる。
「もしもし」
…反応がない。いたずらか。
「もしもーし」
最初は無言電話だと思っていたが電話の遠くの方で何かが
耳を
「おーい、誰だよ。泣いてちゃわかんないって」
「ちょっと代われよ」
「あぁ」
「もしもーし、おれダイチの友達でカズナリってんだけど、何があったかしんねぇけど俺が相談に乗ってやっから話してみ」
やっぱりいたずらか。それとも間違いか。
「あ~、そうなんだ、ダイチがね~、
「はぁ?」
「
「求めてねーよ」
念のため、もう一度耳を当てて確認すると
「切れてねぇじゃん」
「うそつけ。一人コント返しか?」
いろいろめんどくさかったので通話を切ってその場をうやむやにした。
「もう帰ろうぜ」
「そうだな」
金魚鉢に浮かぶ顔、覚えのない着信音、すすり泣く女の声、おかしなことばかりで頭が変になりそうだった。
それでも
「なんだよ、
無人の
まだ隠れる気なのか出てくる様子もないのでそのまま帰宅することにした。
——————————
ダイチの後について理科準備室を出ようとした瞬間、視界がグルリと回った。
理科準備室の外に向かっていた体が今は理科準備室の中を向いている。
恐怖が足を急かしダイチの後を追うも、またグルリと世界が反転する。
ダイチは気付かないのか足音がどんどん遠ざかる。
きっと自分はここから出ることができないのだと直感した。
改めて部屋の中を見渡すと違和感がした。転がっていたはずの金魚鉢が作業台の上に置かれている。
その中は白い液体で満たされていた。どこからかすすり泣く声が聞こえてくる。
その声のする先を探すと女が立っていた。
そして滑るように近づいてくる。
「うわーーーーーーーーーー!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます