エピローグ
数ヶ月後 21:54
そびえ立つビルの森の中、人々の営みの光が街を照らす。
されど光あれば影は生まれるもの。
暗がりの中で今4羽目のカラスが地に降り立った。
「よぉ、あんたが隊長か。」
黒ずくめの外套とフェイスハイダーを纏った青年は、同じような格好をした青年に赤熱した爪を向けた。
「…………」
もう一人の青年はフェイスハイダー越しに睨みつけるが特に何をするつもりもないようであった。
「辞めましょうよこんな事。巻き込まれるなんて御免ですからね僕は。」
やはり同じ格好をした少年が気だるそうに二人をいさめようとする。
「そうですよ。それにここにいるって事は貴方達みんなやらかした人なんですし。せっかくですし自己紹介から始めましょう?」
意地悪そうに聞く一人の青年。
二人のせいで興が削がれたのか青年は赤熱した爪を収め静かに口を開き始めた。
「……俺は芝崎 龍朗(しばさき たつろう)。ここでのコードネームはバルログだ。」
「罪状は?」
意地悪そうに青年が重ねて聞く。
「……チッ。俺は同僚殺しだ。」
舌打ちをしながらバルログは不機嫌そうに答える。
「お前はどうなんだよ、えぇ?」
「僕はスタッフこと鈴鳴 陽一(すずなり よういち)。謀殺の疑いをかけられるてるけど冤罪だよ?」
「谷口 宗介(たにぐち そうすけ)、ドヴェルグ、養父殺しです。」
飄々とした青年に続き、もう一人の少年も淡々と答えた。
「さっきから黙ってるアンタはどうなんですか、隊長。」
少年の問いかけに、隊長と呼ばれるその男は重々しい口を開いた。
「ゼロ、罪状は上官殺しだ。」
その男は名乗ると共に右手に刀を創成する。
「ああ、貴方が件の夜叉を倒したゼロさんですか!!」
「…………ああ。」
青年はとても重々しい、抑揚のない声で答えた。
そして彼は向かいのビルに目を向け、口を開いた。
「これより、ビル内に潜伏しているテロリストの殲滅を行う。俺とバルログが前線、ドヴェルグとスタッフは後方から支援を頼む。」
「犯人の生死はどうしますか隊長?」
「問わない。」
スタッフの問いかけに青年はただ無慈悲に答えた。
「じゃあさっさと始めようぜ!!」
その答えと共に赤熱した爪を構え一気に飛び上がるバルログ。
「全く、迷惑ですよああいうのは。」
やれやれといった表情を浮かべながら戦闘ヘリを創り出すドヴェルグ。
「面白いですね皆さん。本当、どう謀殺するか悩むところですよ。」
興味津々に歪んだ笑みを浮かべるスタッフ。
そして——
「これよりレイヴン、任務を開始する。」
冷静に、冷酷にその刃を構えたゼロ、稲本作一。
今彼はカラスとして、再度日常の裏側へと飛び立つ。
この場所には決して彼の望んだ正義などない。
護るべきものなどはない。
それでも彼は戦い続ける。
『誇れる正義を見つけなさい。』
たった一つの約束を胸に。
暁の記憶がそこにある限り。
「行ってくるよ、先生。」
彼の心が、その刀が折れるその日まで。
そして新たなる夜明けへと続く……
to be continued……
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