第6話 柊との会話

 貸してもらっている部屋の床に転がって、色々と考えていた。蛍様は、此処にいても良いと言ってくれた。正直、嬉しかったし、私も此処にいたいと思っている。でも、ただの人間が此処にいても良いんだろうか。やっぱり、戻った方が……。そんなことを頭の中で、何度も何度も考えて……結局まだ決められていない。こんなんじゃ、駄目なのに。


「結月さん、どうしたんですか? 」

「あぁ、柊さん。色々と考え事をしてて、でも何も決まらなくてって感じです」


 声をかけられて、急いで体を起こした。柊さんはニコニコと笑って言う。


「同じ考えが、ぐるぐると回っちゃう感じですか? 僕もよくありますよ。こういう時は、一旦別のことを考えましょう」

「別のこと、ですか? 」

「はい! 」


 柊さんの尻尾が上下に動く。柊さんは顔にも尻尾にも出るんだね。いつか触ってみたいな。彼は目を輝かせながら、私に聞いた。


「正直に言ってくださいよ。結月さんって蛍様のこと、どう思ってるんですか? 」

「どう、と言いますと? 」

「もー、とぼけないでくださいよ。好きなんですか? どうなんですか? 」


 柊さんのノリが完全に女子だ。まぁ、自分のあるじのことだし、気になるのかな。


「正直、恋とかよく分からなくて……好きってどういう気持ちなんでしょう」

「なるほど。じゃあ、想像してみてください」

「は、はい」


 何だか楽しそうだ。想像か、やるだけやってみようかな。何かヒントを得られるかもしれないし。


「蛍様と手を繋いだり、頭を撫でられたり、抱きしめられたり……どうです? 」

「どうと言われましても、手はともかく、それ以外はされましたし」


 手を繋ぐというか、腕は掴まれた。出会い頭にね。


「えっ、そうなんですか! でも、今されたら違うんじゃないですか? 」

「どうでしょう」


 確かに、告白される前と後じゃ違うかもしれない。そもそも、異性に頭を撫でられたり、抱きしめられたことってなかったな。


 そう考えると、少し恥ずかしくなってきた。顔に出てたのか分からないけど、柊さんが楽しそうに言う。


「じゃあ、もし蛍様にキスされそうになったら、どうします? 」

「キ、キスですか」


 ということは、かなり顔が近づくんだよね。蛍様、結構かっこいいんだよな。真っ黒な髪に、鮮やかな赤い瞳。彼は、キスをする時はどんな表情をするんだろうか。って、なんで私は抵抗しようとしないんだ。彼にならされても良い……のかもしれない。なんか、脈が速くなってきた。


「ゆーづーきさーん。赤くなってますよ」

「し、柊さんが変なことを言うからです! 」


 何だか、恋バナをしてるみたい。いや、実際してたね。いいな、こういうの。


「柊さん、もし私が此処に残るって言ったら、どう思います? 」


 私の気持ちを察したのか、柊さんは微笑んで言った。


「僕は嬉しいですよ。こうやって友達みたいに話せるの、結月さんくらいですもん」

「そうですか」


 やっぱり、私は此処にいたい。そうしたら、普通の人のようには生きられないかもしれないけれど。

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