第5話 突然の告白
夕さんについて行くと、広い部屋で蛍様が待っていた。待たせちゃったかな。
「もう来たのか。早かったな」
あぁ、そうでもなかったみたい。夕さんは一礼し、部屋を出た。しっかりした方だな。
「昨日の話の続きですよね」
「そうだ。……そんな顔すんなよ」
蛍様が私の頭を撫でる。こうやって優しくされる度に、思ってしまう。ずっと此処にいたい。もう、あそこに戻りたくないって。だって、此処には私のことを見てくれて、優しくしてくれて、味方でいてくれる人がいる。人じゃないんだけどさ。でも、それは駄目なんだと思う。分からない、けど。
俯いていると、蛍様が私を抱きしめた。
「んな辛そうな顔すんなよ。なら、もう、此処にいろよ」
「なん、で……そんなに、優しくしてくれるんですか」
声が震える。甘えたら駄目なのに、何で。また泣いちゃうじゃん。
「……好きな奴に優しくしたら、駄目なのかよ」
「えっ? 」
彼から離れようとしたら、更に強く抱きしめられた。
「あのな、結月が女子だってことくらい、最初から分かってんだよ。女性が苦手だったのは、お前みたいな人を知らなかったからだ。自分のことしか考えないような、そんな人としか出会えなかったからだ」
そう、だったんだ。蛍様にも色々あるんだよね。此処は縁切り神社だし。
「でも、何で、というか、いつから……」
蛍様と出会って、まだ1日しか経っていない。いつ私のことを好きになってくれたんだろう。
「昨日ってか、その……」
彼が小さい声で言った。
「一目惚れだよ。悪いか」
一目惚れ……? そんなことって本当にあるんだ。
「おい、何か言えよ。おい! 」
「すみません、ちょっと驚いたというか、嬉しいんですけど、何て言えばいいのか」
誰かに好意を向けてもらったのは、初めてだ。あぁ、少し顔が熱くなってきた。
「誰かに好きって言われたの、初めてなんです」
「俺も初めてだ。誰かに好きって言ったのは」
そう言い、蛍様は私を離した。顔を見ると、少し赤くなっていた。
「でも俺は、結月を縛るようなことはしたくない。此処に残ることも含めて、また考えてくれ。あと、考えがまとまるまでは、此処に……傍にいてほしい」
「わ、分かりました」
まだ、彼の体温が残っている。私は、どうしたらいいんだろう。いや、どうするかを考えるんだ。自分の意思で、ちゃんと考えよう。
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