第4話 夕の朝食
目が覚めると朝だった。昨日はいつの間にか、寝てしまっていた。あれだけ泣いたのは、久しぶりだったな。
「お、やっと起きたのか」
「うわぁ!? 」
隣にいたのに気が付かなかった。というか、いつからそこに…。驚いた私を見て、蛍様はお腹を抱えて笑う。
「あっはははっ。そんなに驚くなよ」
「……すみませんね」
朝から元気な人だ。いや、人じゃなかった。今は何時だろう。スマホを見ると、8時35分と表示されていた。連絡は1件も入っていない。分かってたけど。
「朝食の用意は
「え、じゃあ、入浴してからいただきます。昨日は、あのまま寝てしまったので」
「分かった」
そう言い、蛍様はどこかに行った。朝食も用意してくれるんだ。やっぱり、優しいんだな。
昨日言われたように、隣の部屋に入ると脱衣所があった。そこから、扉を開けると、銭湯のような入浴場が。大きい浴槽に、シャワー、さらにシャンプー、リンス、ボディーソープやら全て揃っていた。凄い……有難い。
体を洗ってから、浴槽に足をつけてみる。温度も丁度いい。
「何だか、銭湯を独り占めしてるみたい……夢みたいだな」
あ、朝食も用意してもらえるんだったよね。なら、待たせないようにしないと。じっくり夢のような気分を味わいたいが、脱衣所に戻る。短く切った髪は、あっという間に乾いてしまった。短くしていてよかったかもしれない。
「そういえば、夕さんってどんな方なんだろう」
「呼びましたか? 」
後ろから落ち着きのある声が聞こえた。振り返ると、長い
「急に声をかけてしまい、申し訳ございませんでした。朝食の用意が済みましたので、お呼びしようかと思いまして」
「いえ、ありがとうございます」
柊さんと夕さんって、見た目はそっくりだけど、性格は真逆なんだな。何だか面白い。2人は双子だったりするのかな。
貸してもらっている部屋に戻ると、テーブルに朝食が並んでいた。白いご飯に、味噌汁、焼き魚、卵焼きに、ほうれん草のおひたし。朝からこんなに豪華な食事ができるなんて。
「いただきます」
昨日は、夕食を取っていなかった。そのせいか、箸は止まることを知らない。美味しい。誰かに作ってもらう料理って、こんなに美味しいのか。夕さんが料理上手なのもあるだろう。
「どう、でしょうか? 」
「美味しいです! すごく! 」
黙ったまま食べていた……。夕さんは「よかったです」と言い、尻尾をぶんぶんと振っていた。可愛い、なんて思ったら失礼だろうか。
「ごちそうさまでした。夕さん、ありがとうございました」
「いいえ、私は当然のことをしただけですよ」
さらっと、そう言えるなんて、本当に凄いしかっこいいな。
「そうだ、朝食が済んだら広間へ呼ぶよう、蛍様に言われていたんでした。ご案内します」
「ありがとうございます」
昨日の話の続きかな。……どうするか、ちゃんと考えないと。
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