第2話 帰りたくない
連れられたのは、神社の本殿だった。彼が神様っていうのは本当なんだな。
「え、入っても良いんですか? 」
本殿の中って人が入っていい所じゃないよね、多分。神社のことは、あまり知らないけど。
「俺が良いって言ってんだ。さっさと入れ」
もしかしたら、彼に遠慮なんて必要ないのかもしれない。それに、本当に彼が此処の神様なら、私は性別を偽らないといけない。蛍光神社の神様は、女性が苦手なんだと聞いた。理由は知らないけど。バレたら、追い返されるかもしれない。折角、髪の毛を短く切ったんだ。バレるわけにはいかない。
「で、何でお前はこんな時間に、あんな所にいたんだ? 」
「あ、あぁ…僕は
私にはどうしても、切りたい縁がある。だから縁切り神社について、色々と調べたんだよね。その時に、とある人からそんなことを聞いたんだ。まさか、百鬼夜行に遭遇するとは思わなかったけど。
「へぇ。その、ある方って誰だ? 」
「えっと、それは……」
理由は分からないけど、自分のことは言わないでくれと口止めされている。というか、顔しか知らないんだけど。黙っている私を
「もしかして、白くて長い髪を持つ、緑色の瞳の男性だったりするか? 」
「え、なんで知って……」
「やっぱりな。おい、出てこい。
彼がそう言うと、部屋の奥から人影が見えた。次第にはっきりと姿が見えてきた。姿は人間と同じだが、よく見ると動物の耳や尻尾が付いている。でも、顔は私が会った男性と全く同じだ。
「な、何でしょう、
「何でしょうじゃねぇよ。全く、お前ってやつは」
「もういい。そこに座ってろ」
「はい……」
柊さんは耳をぺたんと下げて、座り込んでいる。神様が、こちらを向きなおして言った。
「こいつは、此処の狛犬の柊。もう1人、
「蛍光神社の蛍ってことですか? 」
「ま、そーいうこと」
狛犬って、こんな人の姿になるのかな。それとも、蛍さん……蛍様の力が働いてるとか? まぁ、神様の力とか、よく分からないけどさ。
「話を戻したいところだが、お前は家に帰らなくてもいいのか? 」
名乗ったのにお前呼びですか。家、か。ぼんやりと母親の顔が浮かぶ。
「帰りたく、ないです……でも、蛍様の邪魔になるなら、帰ります」
「あっそ。じゃあ、泊まってけば? 此処、無駄に広いし。それに、願いも聞きたいしな」
あっさりとした返事に驚きつつ、お礼を言う。母親には「友人の家に泊まる」とメッセージを送った。
「空き部屋に案内する。ついて来い。柊も来い」
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