体外受精

 採卵の結果ですが、10個の卵子が無事に採取でき、そのうち8個が受精卵に成長しました。この治療を開始するまで知りませんでしたが、体外受精で精子と卵子を出会わせても、すべてが受精卵になるわけではないそうです。さらに、受精卵から胚盤胞に成長する過程で個数はさらに限られるとか。命って不思議ですよね。


 採卵の後、副作用で熱が出てしまったので、その月は休養して翌月に体外受精を受けました。胚移植はそこまで痛くないので、手術室でしっかりと意識のある状態で受け、局所麻酔も全身麻酔も使いません。処置の最中、超音波画像で子宮に旅立つ胚を見せてもらいましたが、すでに分裂が始まっているのが粗い画像でもわかります。このタイミングで、感極まって泣き出す女性もいるのだとか。卵子は自分の一部ですが、受精して胚分裂が始まったらそれはもう私とは違う別の命なわけで、その命をこれから9か月預かるのだと思ったら責任の重さを感じずにはいられません。


 私は結果的に、この胚移植で妊娠しました。ものすごく駆け足だったので、おそらく伝わりづらいと思いますが、無事に出産した後はようやく人生の使命を果たしたように感じました。その命を守れなかったことは無念ですが、とにかく3年にわたる不妊治療に、こうして終止符が打たれたわけです。本当は、喜びも悲しみも色々もっとあって、許されるなら夜明けまで語りたいですが、それは字数の都合上また別の機会に実現できればと思います。

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