採卵

 最初は自己注射にビビりまくった私ですが、人間の慣れの能力は良くも悪くも偉大なようで、1か月が過ぎる頃には同じ注射を2回打ってしまうまでに成長しました。いや、成長ではなく単なるドジです。途中で気付いて慌ててやめたから大丈夫。セーフですセーフ。


 さて、採卵当日です。処置は通常の内診室ではなく、専用の手術室で行われました。その場には医師2名と看護師が3名。ここで突然選択を迫られます。採卵は局所麻酔で行いますが、追加料金30,000円を払えば、全身麻酔を選択できるというじゃないですか! 格好悪いかもしれませんが、私は根性なしで痛がりなので、迷わず同意書にサインして全身麻酔を選択しました。なので、麻酔の注射を受けた後は記憶がありません。表向きは平気な顔をしていても、本当は震えるくらい怖かったので、この選択があったのは本当に良かったなと思います。処置の後は回復室のベッドで目覚めました。


 なお採卵は、体外受精だけでなく、卵子凍結を行う場合にも必要な作業です。将来の出産に備え若いうちに卵子を残しておきたいとか、あるいは女性同士のパートナーで第三者から精子の提供を受けるとか、今は様々な理由で採卵に臨む女性が増えていると聞きました。中には性交経験がないまま処置を受ける場合もあるそうで、はかり知れない覚悟と精神力が必要だろうなと思います。体外受精は命の選別ではないかという意見もあり、賛否のわかれる問題ではありますが、それほどの本人の決意を軽々しく否定して欲しくはないですね。

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