自己注射

 体外受精を行う場合は採卵が不可欠です。採卵とは膣から特殊な針を挿入し、卵巣を吸引して、中にある卵子を取り出す作業です。卵子は精子と違って、体外へ出す仕組みになっていないので、体外受精をするには前準備としてこの作業が欠かせません。


 さらに私の通っていたクリニックは、一度の採卵でなるべく多くの卵子を採取するため、ホルモン注射で卵胞を増やす指導をしていました。しかもその注射、打つ時間が細かく決まっており、夜の注射は病院が閉まっているので自分で打たなければなりません。というわけで、看護師さんから自己注射の講習を受け、その日から注射ライフが始まりました。


<自己注射キットの内容>

・薬剤アンプル

・溶解液

・注射器

・針2種類(溶解用と穿刺用)

・アルコール綿

・絆創膏

・使用済みの注射器を捨てる医療廃棄物の容器


<ざっくりとした手順>

・注射器に溶解用の針を装着

・溶解液を1cc吸う

・薬剤アンプルに溶解液を注入し、軽く回して薬剤を完全に溶かす

・溶かした薬剤を吸い上げた後、穿刺用の針に付け替える

・注射部位をアルコール綿で消毒(私はお腹に打つ注射でした)

・斜め45度の角度で皮下注射する(薬の種類によって90度に打つ筋肉注射の場合もあります)


 この説明を聞いても、いきなり自分では打てないので、講習会の現場で自己注射の練習がありました。練習といっても、実際に薬を投与するので、ある意味それは本番なのでは……? 動揺する私をよそに、周囲の参加者の女性たちは、平然とした様子で一人で注射を打っています。ここで騒いだら悪目立ちしてみっともない。そんな見栄もあり、私も初めての自己注射を涼しい顔(本当はビビりまくり)でクリアしました。注射なので痛いですが、内診よりはマシです。


 なお、後から不妊治療仲間に聞いた話ですが、病院によっては薬を使わず自然にできた卵子のみ採取する場合もあるのだとか。それだと自己注射は不要ですが、1つや2つしか卵子が取れないので、仮に妊娠しなかった場合は何度も採卵しなければなりません。比較的手軽な人工授精と違って、採卵は麻酔を使う大がかりな処置なので、「注射を使ってたくさん取る」か「自然に任せて少しずつ取る」かは人によって判断がわかれる部分だと思います。

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