第38話

オーナーさんが、言った。


「記者さんたちに入ってもらって頂戴!!」


記者会見場のドアが開けられると、記者さんたちが入って来た。


広間に置かれた椅子は、あっという間に、満席になった。


座り切れない記者さんたちは、立ったまま、カメラをオーナーさんに向けた。


ステージを照らす照明に、灯が灯った。


オーナーさんは、腕時計から目を上げて、大きく深呼吸した。


テレビの生放送が始まった。


カード端末のモニターに、白いドレス姿のオーナーさんが、映し出された。


オーナーさんは、マイクの位置を確かめて、テレビカメラを見つめた。


オーナーさんは、ニッコリして、言った。


「こんばんは!!」


フラッシュが一斉に焚かれた。


オーナーさんは、笑顔を絶やさず、言った。


「地球から参りました中深井青会子です。

今日は、プル、ンケ、ルム、ベズの皆様に、是非ともお知らせしたいことがございまして、このような記者様方との会見の場を開かせて頂きました。

急な申し出にもかかわらず、お忙しい中、お集まり頂きまして、誠にありがとうございます。」


オーナーさんは、テーブルから少し離れて、手を前で揃えて、深々とお辞儀をした。


そして、マイクの前に戻って、テーブルに置いた原稿を見た。


オーナーさんは、顔を上げて、真剣な眼差しで、テレビカメラを見つめた。


そして、つぶらな瞳に、揺るぎない決意をみなぎらせて、話し始めた。


「すでにご存知の方もいらっしゃることと思いますが、私は、皆様がいらっしゃる、この宇宙とは別の宇宙から、参りました。

今から5年ほど前に、私が経営する喫茶店の中に、突然、この宇宙への通り道が、出現しました。

その通り道は、このプル、ンケ、ルム、ベズの黄色キ大地ノ国にあるアパートの一室に、繋がっていました。

私は、その通り道を通って、この星に参りました。

この星の皆様は、別の宇宙からの来訪者である私を、温かく迎え入れて下さいました。

そして、今に至るまで、言葉に尽くせないほどの幸せを、私に、下さいました。

数日前に、地球から、2人の来訪者が、この星に参りました。

葵幸星さんと葵星美さんご夫妻です。

おふたりは、つい先日、結婚されたばかりです。

この星から、地球に留学していた、ネー、ベル、プン、ユフも、案内役として同行して、この星に戻りました。

おふたりは、熱キ水出ル国の異世界研究所様からご招待を受けて、現在、フー、ルン、アイ、リイのゲストハウスに滞在中です。

先日、私は、大陸間鉄道で旅行中のおふたりと、初めて、電話でお話を致しました。

そして、極めて重大なことを、おふたりから知らされたのです。

プル、ンケ、ルム、ベズの黄色キ大地ノ国にある火山が、巨大噴火を起こす可能性が高まっていると…!!

地球では、40年ほど前に、同じ場所にある火山が、巨大噴火を起こしました。

そして、巨大噴火によって発生した火砕流と火山灰によって、多くの生命が失われました。

人類も、絶滅の1歩手前まで、追い詰められました。

私も、大切な家族を失いました。

そして、子供だった私を助けて、育ててくれた、大切な人たちを、失いました。

あんなことを、二度と起こしてはならない…

私は、そう思いました。

今、この星で、巨大噴火が起きれば、地球と同じように、数多くの生命が失われてしまうでしょう。

人間も、生き物たちも…

巨大噴火による被害を最小限に食い止めるには、どうしたらいいか…

葵様ご夫婦と、ネー、ベル、プン、ユフが、一生懸命、考えてくれました。

そして、答えを見つけてくれたのです!!

皆様、どうか、3人のお話をお聞きください。

私からの、一生のお願いです!!」

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