第37話

オーナーさんは、ニッコリして、言った。


「なんだか、スッゴイ元気が出て来たわ!!

よし!!

この調子で、リハーサルもやっちゃいましょ!!」


オーナーさんは、記者会見場に向かった。


記者会見は、黄色キ大地ノ国にあるホテルの広間で行われることになっている。


オーナーさんは、ホテルの自室から、記者会見場に移動して、言った。


「よし!!

リハーサル始めましょ!!」


広間にあるステージには、マイクの置かれたテーブルと、モニターとが並べられている。


広間には、数多くの椅子が並べられている。


広間のほぼ中央に、テレビカメラが据えられている。


ステージの左右に立てられた照明に、灯が灯った。


オーナーさんは、ステージに上がって、マイクの前に立った。


「…コホン!!

マイクは大丈夫ですか?

では、リハーサルを始めます。

こんばんは!!」


オーナーさんは、話し始めた。


彼女と私、そして、ネー、ベルとパヌ、シー、レカ、ンネさんは、ゲストハウスの一室で、テーブルの前に並んで座って、テーブルに置いたカード端末のスピーカーから聴こえる音声に、耳を澄ませた。


オーナーさんが話して、一呼吸置くごとに、オーナーさんの胸元に掛けられた通訳器が、プル、ンケ、ルム、ベズ語に訳して、合成音声で話すのが聴こえる。


記者会見場にある複数のマイクで集音された音声が、こちらのカード端末に送られて来ているのだ。


カード端末のモニターには、テレビカメラで撮影されたオーナーさんの姿が、映し出されている。


彼女は、記者会見の手順を書いたメモを見ながら、言った。


「もうすぐ私たちの出番よ。」


オーナーさんが、私たち4人を呼んだ。


テレビカメラの映像が引いて、オーナーさんのそばにあるモニターも視界に入った。


モニターに、私たち4人の姿が映った。


私たちの前に置いているカード端末のカメラの映像が、記者会見場のモニターに映し出されて、それを、テレビカメラが撮影して、こちらのカード端末に送って来ているのだ。


私たちは、挨拶して、予定通りに、話し始めた。


ひとりが長く話すところでは、カード端末を近付けて、話している姿をアップにして、記者会見場に送った。


1文を話し終えて、一呼吸置くごとに、記者会見場にある通訳器が、日本語をプル、ンケ、ルム、ベズ語に訳して、記者会見場にあるスピーカーから、合成音声となって、流れ出して来るのが聴こえる。


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、私たちが話した日本語を聞き、通訳器が訳したプル、ンケ、ルム、ベズ語を、こちらのカード端末のスピーカーから聞いて、訳が正しいかどうかをチェックしている。


私たちの話すところが終わって、オーナーさんが、再び話し始めた。


テレビカメラの映像は、オーナーさんをズームアップした。


オーナーさんは、予定通りに、話し終えた。


「…

あとは、記者さんたちからの質問に答える質疑応答のところね。

記者さんたちは、まだ来ていないから、テレビ局のスタッフさんに代役になってもらうわ!!

それでは、ご質問をどうぞ!!」


テレビカメラの映像が切り替わった。


スタッフさんらしき人たち数人が、並べられた椅子に座って、手を上げている。


今までのカメラとは違う場所から撮影されているので、別のカメラからの映像のようだ。


スタッフさんのひとりが、マイクを持って、質問した。


もちろん、プル、ンケ、ルム、ベズ語で…


私たちの首に掛けている通訳器が、日本語に訳して、私たちは、イヤホーンで、それを聞いた。


オーナーさんは、オーナーさんの通訳器が訳したものを、イヤホーンで聞いた。


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、カード端末のスピーカーから聴こえるプル、ンケ、ルム、ベズ語を聞き、首に掛けている通訳器が訳した日本語を、イヤホーンで聞いて、チェックしている。


スタッフさんたちから、いろんな質問がなされた。


質問の内容に応じて、オーナーさん、彼女と私、ネー、ベルが、話し合いながら、答えた。


オーナーさんが話した日本語は、オーナーさんの通訳器で、プル、ンケ、ルム、ベズ語に訳されて、マイクで集音され、記者会見場に流された。


彼女と私が首に掛けている通訳器は、日本語からプル、ンケ、ルム、ベズ語への訳の機能をオフに設定している。


彼女と私が話した日本語は、私たちの通訳器では訳されずに、日本語のまま、記者会見場に送られて、記者会見場にある通訳器で、プル、ンケ、ルム、ベズ語に訳されて、スピーカーから流されて、スタッフさんたちの耳に届いた。


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、オーナーさんが話した日本語と、オーナーさんの通訳器によって訳されたプル、ンケ、ルム、ベズ語を、カード端末のスピーカーから聞いて、チェックした。


ネー、ベルが話したプル、ンケ、ルム、ベズ語は、ネー、ベルの通訳器で、日本語に訳されて、記者会見場に送られて、記者会見場にある通訳器で、プル、ンケ、ルム、ベズ語に訳されて、スピーカーから流されて、スタッフさんたちの耳に届いた。


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、ネー、ベルが話したプル、ンケ、ルム、ベズ語を聞き、ネー、ベルの通訳器で訳された日本語を聞き、記者会見場にある通訳器で訳されたプル、ンケ、ルム、ベズ語を、カード端末のスピーカーから聞いて、チェックした。


私たちの答えに対して、さらに、スタッフさんたちから、質問が返って来ることもあった。


本番の30地球分ほど前まで、私たちは、リハーサルを続けた。


腕時計を見て、オーナーさんが、言った。


「…よし!!

ひと休みしましょ!!」


彼女は、虹色の瞳を輝かせて、言った。


「私たち、テレビに出るのなんて初めてだから、リハーサルでも、どきどきしっぱなしね!!」



私は、頷いて、言った。


「ホントだね…

緊張しちゃうな…」


彼女は、モニターに映っているオーナーさんを見ながら、言った。


「それに比べて、オーナーさんは、さすがね!!

堂々としてるわ!!」


ネー、ベルが、言った。


「オーナーは、数え切れないくらい、テレビ出演の経験がございますから…」


パヌ、シー、レカ、ンネさんが、頷いて、言った。


「オーナーさんは、この星いちばんの人気者さんですよ!!

ところで、ネー、ベルさんに、ちょっと、ご提案があるのですが…?」


ネー、ベルは、パヌ、シー、レカ、ンネさんを見て、尋ねた。


「何でしょう?」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、答えた。


「ネー、ベルさんの通訳器は、使わなくても大丈夫だと思うのです。

ネー、ベルさんの通訳器をオフにした場合を考えてみたんです。

ネー、ベルさんが話されたプル、ンケ、ルム、ベズ語は、電話回線で記者会見場に送られて、記者会見場にあるスピーカーから流されます。

記者さんたちも、テレビを見ているこの星の人たちも、そのまま、ネー、ベルさんが話されたプル、ンケ、ルム、ベズ語を聞けるわけです。

もちろん、私も…

地球から来られたお三方は、お持ちの通訳器のイヤホーンから、逐次通訳された日本語をお聞きになれます。

記者さんたちからの質問は、プル、ンケ、ルム、ベズ語のまま、こちらに送られて、カード端末のスピーカーから流されます。

もちろん、ネー、ベルさんは、そのまま、質問を理解されて、お答えされることが出来ます。

オーナーさんが、ネー、ベルさんに話された日本語は、オーナーさんの通訳器で、プル、ンケ、ルム、ベズ語に逐次通訳されて、マイクで集音されて、こちらのカード端末のスピーカーから流されます。

ネー、ベルさんがオーナーさんに話されたプル、ンケ、ルム、ベズ語は、オーナーさんの通訳器で、日本語に逐次通訳されて、イヤホーンでオーナーさんのお耳に届きます。

葵様ご夫婦がネー、ベルさんに話された日本語は、電話回線で記者会見場に送られて、あちらにある通訳器で、プル、ンケ、ルム、ベズ語に逐次通訳されて、記者会見場のスピーカーから流されて、その音声が、こちらのカード端末に送られて、スピーカーから流されて、ネー、ベルさんのお耳に届きます。

ネー、ベルさんが葵様ご夫婦に話されたプル、ンケ、ルム、ベズ語は、葵様ご夫婦の通訳器で、日本語に逐次通訳されて、イヤホーンでご夫婦のお耳に届きます。」


ネー、ベルは、少し考えて、答えた。


「…わかりました。

やってみましょう。」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、微笑んで、言った。


「ありがとうございます!!

オーナーさん!!

ちょっと、よろしいですか?」


オーナーさんは、テーブルに置いた原稿らしき書類を見ていたが、顔を上げて、答えた。


「…何かしら?」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、微笑んで、言った。


「ネー、ベルさんの通訳器は、使わなくても大丈夫そうです。

地球から来られたお三方の通訳器と、記者会見場にある通訳器とで、必要な通訳が出来るはずです。

時間の短縮にもなります。」


オーナーさんは、少し考えて、答えた。


「…なるほどね…

言われてみれば、その方がよさそうね!!」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、頷いて、言った。


「通訳器の訳が正しいかどうかのチェックについては、大きな問題はありませんでした。

翻訳不能な言葉や、誤訳は、ありませんでした。

別の言葉に訳した方がいいと思えるところは、何ヵ所かあったのですが…

わずかなニュアンス程度の違いですので、このままでも、誤解を生じる心配はありません。」


オーナーさんは、ニッコリして、言った。


「よかった!!

…じゃ、原稿の言葉は、そのままでいいわね!!

記者さんたちとの質疑応答では、どんな言葉が出て来るか、予想し切れないから、リアルタイムでチェックして、少しでも、訳を修正したほうがいいと思える場合は、遠慮なく私に言って、訳を修正して頂戴ね!!」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、頷いて、答えた。


「わかりました!!

頑張ります!!」


オーナーさんは、腕時計を見ながら、言った。


「…マスター…

通訳器をオフにしてみて頂戴。

ちょっとテストしてみましょ!!」


ネー、ベルは、首に掛けている通訳器を操作して、言った。


「デへ、ルウ、ンヌ、タン、ズウ、テプ。」


私の通訳器に繋いだイヤホーンから、合成音声が聞こえた。


「通訳器をオフにしました。」


彼女も、通訳器のイヤホーンに触れながら、頷いて、言った。


「ちゃんと日本語に訳されてるわ。」


彼女の声は、電話回線で記者会見場に送られて、スピーカーから流されて、プル、ンケ、ルム、ベズ語に訳された合成音声が、続いて流れた。


そして、記者会見場にあるマイクで集音されて、電話回線で、こちらのカード端末に送られて、スピーカーから流れた。


オーナーさんも、頷いて、言った。


「こちらのスピーカーから、あなたのプル、ンケ、ルム、ベズ語が、はっきり聞こえたわ。

私の通訳器も、それを、ちゃんと日本語に訳したわ。」


続いて、オーナーさんの通訳器が、合成音声で、プル、ンケ、ルム、ベズ語に訳した。


そして、記者会見場のマイクで集音されて、こちらのカード端末のスピーカーから流された。


ネー、ベルは、頷いて、言った。


「ホシミ、プン、タウ、オーナー、プン、ヌチ、デレ、ウペ、ギサ、サウ、ラケ。」


私の通訳器のイヤホーンから、合成音声が聞こえた。


「ホシミさんとオーナーさんが話されたことも、正しく訳されました。」


オーナーさんも、ニッコリして、言った。


「よし!!

行けそうね!!」


彼女は、虹色の瞳をキラキラさせて、言った。


「プル、ンケ、ルム、ベズ語では、さんのことを、プン、というのね!!」

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