第34話

駅を出ると、そこは、夜だった。


車が行き交う、何車線もの広い道路を挟んで、灯りの点いた窓がいくつも見える建物が、目の届く限り、はるか遠くまで、並んでいる。


建物の高さは、地球風に言えば、5階建てのビルほどだが、その屋上部分は、ほとんどの建物が、地下都市の天井に接しているようだ。


…そして、天井にあるはずの照明は、どこも、光を発していない。


街は、建物から洩れる光と、道路に沿って並ぶ街灯と、道を行き交う車のヘッドライトの光の中で、まるで、地球のある街角の夜の光景のように、私たちの前に広がっていた。


車道の両側にある歩道を、多くの人々が、忙しく往き来している。


歩道に面した建物の1階部分は、その多くが、お店のようだ。


時刻は、灼熱ノ岩流ルル国との3地球時間ほどの時差を考えると、駅に着いたのは、地球風に言えば、午後9時過ぎで、今は、午後10時半頃のはずだ…


彼女が、天井を見上げながら、訊いた。


「…夜だから、灯りは消してるのね?」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、私たちを振り返って、答えた。


「そうです。

地上の明るさに合わせて、照明を調節しています。

そうしたほうが、一日中ずっと明るくするよりも、人間にとっても、動物にとっても、農作物などの植物にとっても、健康を保つ上で、いい効果があることが、昔から、わかっています。」


私は、道行く人々を見ながら、言った。


「僕たち地球人の場合、目から入る光の明るさで、体内時計の誤差を補正して、バイオリズムを保っているらしいね…

プル、ンケ、ルム、ベズの人たちもそうなのかな?」


ネー、ベルが、頷いて、答えた。


「我々も皆さんと同じです。

地球も、プル、ンケ、ルム、ベズも、1日は同じ物理時間ですから…

地球風に言えば、24時間…

この星の…10雪星時間ですね…

そのバイオリズムから外れると、健康上さまざまな不調が生じやすくなります。」


彼女は、歩道沿いのお店の中を覗き込みながら、訊いた。


「今の時刻は、9雪星時過ぎくらいかしら?

夜遅いのに、まだずいぶん人通りがあるのね?」


パヌ、シー、レカ、ンネさんが、彼女の視線を追いながら、答えた。


「この辺りは、大陸間鉄道の駅周辺の繁華なエリアなので…

ところで、9ゆきほしじ、とおっしゃったのは、私は、初めて伺いました。

どんな意味なのか、教えて頂けませんでしょうか?」


彼女は、ニッコリして、答えた。


「この星の時間の単位と、地球の時間の単位が、ずいぶん違うと、ネー、ベルに教えてもらって、それらを区別するために、呼び方を考えたんです。

1日は、24地球時間…

この星の単位では、1日は、10雪星時間…

って!!」


私は、補足した。


「ゆきほし、は…

空から降って来る、白い雪の雪と、宇宙に浮かぶ星の星という漢字で、意味は、このプル、ンケ、ルム、ベズのことです。」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、メガネの奥の目を見開いて、驚いた様子で、頷いた。


「…なるほど!!

雪星…時間ですね?!

地球の時間は、地球時間ですね?!

これなら区別しやすいですね!!

素晴らしいです!!」


ネー、ベルが、言った。


「時間だけでなく、分、秒や、週、月などについても、それぞれ、2つの星での単位を、区別しやすいように、おふたりと一緒に、考えさせて頂きましたよ。

後程、私からご説明させて頂きますから…」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、ニッコリして、頷くと、駅前の車寄せに停まっている、1台の車を指差した。


「あちらのお車です。」


木目のような模様に彩られた、丸っこい形をした、その車に、私たちは乗り込んだ。


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、車に命じた。


「スタート!!

ゲストハウスへ!!」



車は、ヘッドライトを点けて、静かに走り出した。


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、後席の彼女と私を振り返って、言った。


「10…地球分ほどで着きますよ。」


彼女が、微笑みながら、訊いた。


「ネー、ベルから、迎賓館ってところにお泊め頂けるって聞いたんですけど…

どんなところですか?」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、隣の助手席に座っているネー、ベルを見たが、ネー、ベルが何も言わないのを見て取ると、口を開いた。


「…この…熱キ水出ル国の国営のホテルです。

外国からの賓客をもてなすために建てられました。」


ネー、ベルが、通訳器を摘まんで、言った。


「私の通訳器は、迎賓館と訳したのですが、パヌ、シー、レカ、ンネさんは、ゲストハウスと訳されているのですね…?」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、ニッコリして、答えた。


「オーナーさんが、そちらの呼び方のほうがいいとおっしゃられたので、そう訳させて頂いています。」


ネー、ベルが、パヌ、シー、レカ、ンネさんの方を向いて、言った。


「オーナーが?

…わかりました。

私も通訳器の設定を変更します。」


私は、勇気を出して、訊いてみた。


「…

パヌ、シー、レカ、ンネさんは、オーナーさんと、よくお会いになるんですか?」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、私を見て、微笑みながら、答えた。


「そうしたいのですけれど、なかなかお会い出来なくて…

大変お忙しい方で、いつも、いろんなところを飛び回られていらっしゃるから…

ただ、お電話の連絡先はお教え頂いて、お電話では、よく、いろんなご相談に乗って頂いています!!」


彼女が、身を乗り出して、尋ねた。


「オーナーさんのこと、よくご存知なのね?!

どんな方?!」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、少し意外そうな表情で、答えた。


「…列車にお乗りになっている間に、オーナーさんと電話でお話しになられたと、伺いましたが…?」


彼女は、目を丸くして、答えた。


「あら?!

ご存知だったんですね?!

もしかして、それも電話で?」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、頷いて、答えた。


「オーナーさんからお電話を頂いて、お教え頂いたんです。

黄色キ大地ノ国の巨大火山が噴火する恐れが高まっていると…!!」



彼女と私は、顔を見合わせた。


彼女は、驚きを隠さずに、訊いた。


「その件もご存知だったんですね…!!

オーナーさんからは、どんなお話を…?」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、真剣な表情になって、少し考えていたが、意を決したように、小さく頷いて、言った。


「この星で、巨大噴火が、いつ始まってもおかしくない状態にあると…

皆さんから、そうお知らせ頂いて、オーナーさんも、この星の人たちに、呼び掛けるおつもりだと…

巨大噴火に備えて、黄色キ大地ノ国に住む人々は、皆さん、外国へ避難してもらうべきだと…

そして、世界中で、巨大噴火への備えを始めるべきだと…」


彼女は、虹色の瞳を煌めかせながら、頷いて、言った。


「オーナーさんのおっしゃった通りです!!

出来るだけ早く、巨大噴火への備えを始めるべきです!!

今のままでは、巨大噴火が起きると、この星の人たちは…

生き物たちも…

私たちの地球と同じように、多くの命が失われてしまいます…!!」


私も、頷いて、言った。


「みんなで、いろいろ考えたんです。

黄色キ大地ノ国の人たちに避難してもらうには、どうしたらいいか…

巨大噴火による火砕流や火山灰による被害を最小限に食い止めるには、どうしたらいいか…

巨大噴火後に不足する食料を補うには、どうしたらいいか…

そして、答えをみつけました!!」


ネー、ベルも、頷いて、言った。


「一刻も早く、この星の人たちに、それらの答えを知らせるべきです。

この星の大切な生命を守るために…!!」



パヌ、シー、レカ、ンネさんは、まなじりを決して、言った。


「皆様の地球で、どんな大災害が起きたか、私も、よく承知しています。

同じことが、このプル、ンケ、ルム、ベズで起きないように、どうか、皆様のお力で、お助けくださいませ!!」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、銀色の髪に包まれた頭(こうべ)を垂れた。


彼女は、ニッコリして、答えた。


「精一杯やりますわ!!

オーナーさんのお力をお借りして、この星の人たちにお知らせするつもりです。

…そうすれば、巨大噴火への備えを、皆さん、始めてくれるでしょう!!」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、顔を上げた。


…黒ぶちメガネの奥の目に、光るものが見えた。


「…ありがとうございます…!!

もし何か、私に出来ることがございましたら、何なりとお申し付けくださいませ!!」


車は、減速して、大きな建物の前の車寄せに、静かに停車した。


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、ニッコリして、言った。


「ゲストハウスに着きました!!」



私たちは、車を降りた。


乳白色の滑らかな曲面で構成された、鍾乳石のような形をした、大きな建造物が、目の前に建っている。


そのいただきは、地下都市の天井に溶け込むように、融合している。


まるで、地下都市の天井から滴った地下水が、永い年月をかけて、造り出した、巨大な鍾筍しょうじゅん?のようだ。


彼女は、口をポカンと開けて、建物を見上げた。


「…変わった建物ねぇ~…」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、ニッコリして、言った。


「熱キ水出ル国の伝統的な建築様式である『鍾乳洞様式』を、現代の高層建築に採り入れたホテルです。」


私たちは、洞窟の入り口のような、丸いエントランスに、足を踏み入れた。


…中には、まるで天然の洞窟のような空間が、広がっていた。


天井も、壁も、床も、境目の無い、滑らかで不定形な曲面で形作られ、どこにも、直線や平面が見えない。


壁面には、太古の地層が重なっているかのような、さまざまな色の縞模様が、不規則にのたうちながら、上下左右の区別無く、見渡す限り、続いている。


壁のところどころに、小さな窪みが穿たれ、その中に置かれた照明が、石油ランプのような、暖かそうな光を、周囲に投げ掛けている。


私は、周りを見回したが、ホテルにあるはずの、フロントのようなものは、見つけられなかった…


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、澄ました顔で、洞窟のような奥の方を指しながら、言った。


「あちらにフロントがございます。」


パヌ、シー、レカ、ンネさんの先導で、私たちは、恐る恐る、洞窟のような通廊に、分け入った。


通廊は、どこも不規則に曲がりくねって、見通しが全く効かない。


右や左に枝分かれしているところに来ると、パヌ、シー、レカ、ンネさんは、記憶を辿るように、少し立ち止まって、周りを見回してから、また、歩き始める…


「…迷路みたいね…」


彼女が、囁いた。


「…案内してくれる人がいなかったら、フロントに行くのも大変だね…」


私も、小声で答えた。


…突然、目の前に、カウンターが現れた。


「いらっしゃいませ。」


通訳器のものらしき人工音声で、カラフルな幾何学模様のような柄のローブ?を着た人物が、カウンターの向こうから、私たちに呼び掛けた。


…顔は、明るいブラウンの毛に覆われている。


首から掛けた通訳器が、胸元にぶら下がっている。


カウンターは、大理石で造られているようだ。

…その形は、ありがたいことに、長方形をしていた。


直線が、これほど美しく、頼もしいものに思えたことは、今まで無かった…!!


パヌ、シー、レカ、ンネさんが、微笑みながら、言った。


「異世界研究所の招待で、我が国にいらっしゃった、葵様御一行です。

私は、案内役を仰せつかりました、パヌ、シー、レカ、ンネです。

予約をご確認くださいませ。」


フロント?らしき人物は、手元を見下ろして、私には聞き取れない言葉(おそらくプル、ンケ、ルム、ベズ語だろう)で答えた。


「…」


声からは、その人物が、男性なのか、女性なのか、年齢はいくつぐらいなのか、全く判断出来なかった…


通訳器が、続いて答えた。


「ご予約頂いていた葵様御夫婦とネー、ベル、プン、ユフ様とパヌ、シー、レカ、ンネ様ですね!!

当ゲストハウスにようこそいらっしゃいました!!」


私たちは、パヌ、シー、レカ、ンネさんの手助けで、宿泊者名簿にサインした。


…日本語で…!!


「お部屋の鍵はこちらになります。」


フロント?から受け取った鍵は、意外にも、カードキーだった…


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、微笑みながら、訊いた。


「ディナーのほうは?」


フロント?は、小さく頷いて、答えた。


「…」


通訳器が、答えた。


「もちろんご用意してございます。

当フロアのレストランでお召し上がりくださいませ。」


彼女が、目を丸くして、訊いた。


「…ディナー?!

もうずいぶん遅い時間でしょ?

…えーと…

10雪星時に、もうすぐなる頃じゃない?

…日付が変わる時間に…」


フロント?は、小さく首を傾げながら、答えた。


「…」


通訳器が、答えた。


「…10…なんとおっしゃられたのでしょうか?

通訳器で翻訳出来ないお言葉のようです。

ディナーのお時刻については、何のご心配もご不要でございます。

大陸間鉄道で我が国にいらっしゃっるお客様のご到着のお時刻は、もちろん、よく承知し申し上げておりますから。」


彼女は、虹色の瞳をキラキラさせて、言った。


「列車の中で、ずーっと話してたから、もう、お腹ペコペコなの!!」



私は、頷いて、答えた。


「僕もだよ!!

部屋に荷物を置いたら、すぐにレストランに行こう!!」


彼女は、ニッコリして、頷いた。

そして、フロント?に尋ねた。


「チェックアウトは何時頃かしら?」


フロント?は、手元を見下ろして、答えた。


「…」


通訳器が、答えた。


「…お客様のご予約は、無期限の連泊となっておりますので、お客様のご希望の日時に、ご自由にチェックアウトして頂けます。」


彼女は、目を丸くして、訊いた。


「…

無期限…?!」


パヌ、シー、レカ、ンネさんが、ニッコリして、言った。


「おふたりは、私たちプル、ンケ、ルム、ベズ人にとって、この上なく大切な、異世界からのお客人なのですから…

どうか、心行くまで、私たちの星で、時をお過ごしください!!」



私たちは、パヌ、シー、レカ、ンネさんの先導で、エレベーターに乗って、客室のある階に向かった。


洞穴の一隅のようなエレベーターを降りると、そこにも、洞穴のような通廊があった。


幸いにも、客室のフロアの通廊は、迷路のような枝分かれした造りにはなっていないようだ…


「こちらが葵様のお部屋です。」


通廊とほとんど見分けのつかない、地層のような縞模様のドアに、カードキーの読み取り器と、木の根っこのようなドアノブが付いている。


カードキーを読み取り器に通すと、ドアは、音も無く開いた。


…中には、やはり、洞窟のような、空間が広がっている。


彼女と私は、顔を見合わせて、部屋に入った。


パヌ、シー、レカ、ンネさんが、微笑みながら、言った。


「私共の部屋もこの階にございます。

何かご用がございましたら、いつでもお声をお掛けくださいませ。」


彼女は、少しいたずらっぽい笑顔を浮かべて、訊いた。


「パヌ、シー、レカ、ンネさんとネー、ベルも、同部屋なの?」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、少し慌てた様子で、首を横に振った。


「…とんでもございません!!

別室で、それぞれ個室でございます!!」


ネー、ベルも、頷いて、言った。


「私にも、個室を割り当てて頂きました。

このような賓客様向けのホテルに泊まらせて頂けるとは…

ありがたいことです!!」


私たちは、それぞれの部屋に荷物を置くと、レストランのあるフロアに向かった。


パヌ、シー、レカ、ンネさんの先導で、迷路のような通廊を辿ると、奥の方から、音楽のような音が、聴こえて来た。


突然、開けた空間に出た。


鍾乳洞が造り出した、天然の聖堂のような、乳白色の大広間が、目の前に広がっている。


ところどころに、丸っこい木のテーブルが置かれている。


天井や床に置かれた、暖かそうな光を放つ照明が、明る過ぎず暗過ぎない、適度に不均一な光で、大広間を照らしている。


鍾乳洞のような、さまざまな形の凹凸のある、壁には、ところどころに、カラフルな壁画が描かれている。


聴いたこともないような、エスニック?調の音楽が、静かに流れている。


テーブルには、何組か、食事を摂っている人たちの姿が見えた。


私は、近くにある壁画に近付いて、見つめた。


羊?のような獣たち…

いろんな形や大きさの魚たち…

エビやカニ…

ジャガイモ?のような丸い野菜…

麦?のような作物…

いろんな形の果物…

そして、それらを育て、収穫する人々…


ネー、ベルが、そばに来て、言った。


「これは、この国の古代の洞窟に描かれている、壁画の複製です。」


彼女は、虹色の瞳を、大きく見開きながら、言った。


「大昔の人たちも、この絵を見ながら、みんな一緒に、永い永い時を、過ごして来たのね!!」



私たちは、ひとつのテーブルを囲んで、席に着いた。


幾何学模様のような柄の貫頭衣?を着た、濃いグレーの毛に覆われた顔の、ウエイター(またはウエイトレス)から、メニューを受け取った。


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、微笑みながら、訊いた。


「どのメニューになさいますか?」


彼女は、メニューをパラパラとめくっていたが、ため息をついて、メニューを閉じた。


「文字しか無いわね…

チンプンカンプンだわ!!」


ネー、ベルが、言った。


「ひとつひとつご説明しましょうか?」


彼女は、少し考えて、答えた。


「おすすめでいいわ!!

パヌ、シー、レカ、ンネさんのおすすめは?」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、メニューを見ながら、答えた。


「外国からのお客様にご好評のコースがございます。

熱キ水出ル国の特産品を中心にしたフルコースです。」


彼女は、即答した。


「いいわね!!

それを頂くわ!!」


私は、パヌ、シー、レカ、ンネさんに尋ねた。


「…ジャガイモの料理はありますか?」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、微笑みながら、答えた。


「もちろんございます。

ジャガイモは、この星の主食ですから…

いろんな料理がございますよ。

どのようなものがお好みですか?」


私は、地球のジャガイモ料理をいろいろと思い浮かべたが、決めかねた…


「パヌ、シー、レカ、ンネさんのおすすめのジャガイモ料理は?」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、戸惑った表情で、聞き返した。


「私のおすすめのジャガイモ料理…でございますか?

う~ん…」


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、メガネの黒いフレームの影から、眉間の小さな皺を覗かせて、悩ましげな顔で、メニューをめくり始めた。


あれ?

なぜ悩むのだろう…?

わかった…!!

この国に来た、この星の外国の人たちは、どの国の人たちも、ジャガイモ料理は、自分の国で食べ慣れているから、ジャガイモ料理はあまり選ばずに、この国の特産品の料理を選ぶことが多いのだろう…


だから、パヌ、シー、レカ、ンネさんは、たぶん、おすすめのジャガイモ料理は?という質問をされたことが、今まで無かったのだろう…


パヌ、シー、レカ、ンネさんは、メニューから視線を上げて、戸惑った表情で、私を見ながら、答えた。


「ジャガイモを、甘く煮付けた料理はいかがですか?」


私は、ニッコリして、答えた。


「いいですね!!

それを頂きましょう!!」


彼女は、小さな声で、訊いた。


「…ちょっと、なんでフルコースにしないの?」


私は、少し考えて、答えた。


「…巨大噴火が起きると、この星の食料は逼迫する…

もちろん、今は、食料生産に余裕があるから、食べたいものを食べても大丈夫だけど…

今のうちから、慣れておいたほうがいいと思ってね…

ジャガイモ尽くしの食生活に!!」


彼女は、しばらく考えていたが、ため息をついて、言った。


「…

そうね…

そのほうがいいわね!!

じゃ、わたしも、ジャガイモの料理にするわ!!」


パヌ、シー、レカ、ンネさんも、頷いて、言った。


「素晴らしいですね!!

ジャガイモは主食ですから、本当に、いろんな料理があります。

おふたりのお口に合う料理も、きっとありますわ!!」


ネー、ベルも、頷いて、言った。


「いいお考えです!!

いろいろ食べてみてください!!」


私たちは、いろいろなジャガイモ料理を頂いた。


「ごちそうさまでした!!」

「ごちそうさま!!」

「ごちそうさまでございます!!」

「ごちそうさまです!!」


みんな、完食した!!


彼女は、虹色の瞳を輝かせて、言った。


「プル、ンケ、ルム、ベズのジャガイモ料理…めっちゃ美味しいのね!!」

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