第31話

宇宙に浮かぶ星で、災害に勝つ方法を探す生き物たちを見れば…


宇宙に浮かぶ星で、災害に勝つ方法を見出だす生き物たちを見れば…


彼女は、生き物たちが、まだ経験したことの無い災害と闘う様を想像しながら、訊いた。


「私たちは、これから、どうしたらいいのかしら?」

「我々は、大切な存在のために生きています。

我々にとって、大切な存在を、守るために…

我々は、将来起こる可能性のある災害に、備えなければなりません。

もし、将来起こる可能性のある災害が、一度も体験したことの無い災害だからという理由で、その災害への備えを怠れば、我々は、大切な存在を守ることが出来ないでしょう。

我々は、大切な存在を守るために、なすべきことをなすべきです。」

「…

僕たちも同じだね…

僕たちも、僕たちにとって、大切な存在のために生きている。」


私は、彼女を見つめた。


彼女は、虹色の瞳で、私を見つめながら、言った。


「私たちは、私たちにとって大切な存在のために、生きているから、大切な存在を守るために、将来起こる可能性のある災害に、備えて、災害から、大切な存在を守ればいいのね!!」



チャイムのような音がして、アナウンスが流れた。


マスターは、客室の壁にあるモニターを見ながら、言った。


「もうすぐ、熱キ水出ル国に着きます。」


彼女と私は、顔を見合わせた。


彼女は、つぶらな虹色の瞳を丸くして、訊いた。


「もう着くの?

灼熱ノ岩流ルル国から、半日ぐらいかかるんでしょ?」


マスターは、客室の壁のモニターを指差しながら、答えた。


「出発してから、もう半日以上経ちましたよ。

予定通り、熱キ水出ル国の首都にある駅に、間も無く到着します。」


私は、壁のモニターを見たが、表示されている文字の意味も、読み方もわからない…


私は、唖然としながら、訊いた。


「…じゃ、僕たちは、12…地球時間もの間、ずっと話してたのかい…?!」


彼女は、微笑みながら、言った。


「私たち、夢中になって、巨大噴火への備えを考えてたから…

時間が経ってることに気付かなかったわね…!!」


マスターが、窓の外を指して、言った。


「灯りが見えて来ましたよ!!」


目を向けると、窓の外の夜のとばりの中に、ポツリポツリと、小さな光が散らばっている。


「熱キ水出ル国です!!」


マスターは、身を乗り出すようにして、窓の外を覗いた。


彼女は、少し驚いたように、マスターを見ながら、訊いた。


「マスターは、この国の出身なのよね?

久しぶりなの?

戻るのは?」


マスターは、姿勢を正しながら、答えた。


「…

失礼しました…

え~と…

3年ぶりぐらいでしょうか…?

オーナーと地球に行くために、出て以来です。」

「…オーナーさんと?

じゃ、それから、ずっと地球にいたの?」

「…いえ。

黄色キ大地ノ国には、何度も来ています。

…すぐですからね!!

『無限分岐宇宙』の通り道を通れば…」


私は、マスターに尋ねたいことが、いくつも脳裏に浮かんで、口を開いたが、どれから訊いたらいいかわからなくて、ためらった。


マスターは、私を見て、首を傾げた。


「…なにか?」


私は、照れ隠しに、微笑んで、訊いた。


「…

マスターは、熱キ水出ル国の出身なんだよね…

君も知ってる通り、僕たちも、日本出身なんだ…

もちろん、プル、ンケ、ルム、ベズと地球だから、ずいぶん違うところもあるけれど…

ある意味、同郷と言えなくも無いと思う…

君の大切な祖国に、これから、僕たちもお世話になるんだから…

君のことも、もう少し、知っておくべきだと思うんだ…!!」


彼女も、微笑みながら、訊いた。


「…

そうね!!

そろそろ、お名前くらい、教えてくれてもいいんじゃない?

マスター!!」


マスターは、少しの間、考えていたが、意を決したように、顔を上げて、答えた。


「自己紹介が遅れまして申し訳ありません。

私は、ネー、ベル、プン、ユフと申します。

今後とも宜しくお願い致します!!」



彼女は、ニッコリして、言った。


「こちらこそ宜しくね!!

ネー、ベル、プン、ユフさん!!」


私も、ニッコリして、言った。


「ありがとう!!

マスター…

じゃなくて…

ネー、ベル、プン、ユフさん!!」


マスターは、頭を掻きながら、答えた。


「今まで通り、マスターと呼んで下さって構いませんよ?

その方が短いですから…」


彼女は、微笑みながら、言った。


「そんな…

せっかく教えてもらったんだから、ちゃんと名前で呼ぶわよ。

…ネー、ベルさんって呼んでもいいかしら?」


マスターは、少しもじもじしながら、答えた。


「…どうぞ、ご自由にお呼び下さいませ。」


彼女は、手を伸ばして、マスター…

ではなくて、ネー、ベルの手を握って、ニッコリした。


「これからも宜しくね!!

ネー、ベルさん!!」

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