第25話

星の中の様子を、コンピューターシミュレーションで再現出来たら…


星の中の様子を、コンピューターシミュレーションで予測出来たら…


彼女は、かげり始めた氷洋に、目をやりながら、訊いた。


「プル、ンケ、ルム、ベズでは、火山灰が降り続いている間に、屋外に出る必要がある場合は、どうしたらいいのかしら?」

「プル、ンケ、ルム、ベズでも、巨大噴火が起きたあと、火山灰が降り続いている間に、屋外に出る必要が生じるでしょう。

まず、地上の地熱発電所に降り積もる火山灰を、主に人手で、施設から取り除くことが必要です。

火山灰が積もったままにしていると、その重みで、発電所の施設が壊れてしまう恐れがありますから…

次に、地下都市などの地下の居住地と、地上の大気との間で、空気を循環させる通風換気施設の、地上にある通風口のメンテナンスが必要です。

地下との換気を維持するために、火砕流の残留物を取り除いたり、降り積もった火山灰を取り除くことが必要です。

次に、地下都市間の通信施設のメンテナンスのために、アンテナなどの屋根に積もった火山灰を取り除くことが必要です。」

「…

この星では、人工衛星は無かったのね?」

「はい。

我々の星には、人工衛星はありません。」

「ということは、長距離の通信も、通信衛星ではなくて、地上の通信施設の間で、行われているんだね?」

「おっしゃる通りです。

さまざまな波長の無線機が、地下都市間や国々の間を結んでいます。

そして、大陸間鉄道の軌道敷設の際に、光ファイバーの通信ケーブルが、軌道に沿って、地中に埋設されました。

黄色キ大地ノ国、灼熱ノ岩流ルル国、熱キ水出ル国の3カ国の間では、光ファイバー回線による大容量高速通信が出来るようになりました。この列車の中からも、軌道に沿って設置されている無線中継局を介して、3カ国間と、カード端末による電話通信が出来ます。」

「…

オーナーさんと電話出来たのは、そういう仕組みね!!」

「…

通信衛星ではないってことは、中継用のアンテナの施設が、地上の見通しのきく数十キロメートルごとに、点々と設置されているのかな?」

「一部にそのような通信ルートもありますが、ほとんどは、地下都市などの間の氷の上に敷かれた、光ファイバー通信ケーブルによって、通信が行われています。」

「…

有線通信なのね…

火砕流や火山灰の被害を受ける心配は無いのかしら?」

「通信ケーブルは、氷を数十センチほど掘り下げて作った溝の中に、設置して、鉄板で上を覆っています。

火砕流や火山灰に埋もれることになりますが、ケーブルは破断されないはずです。」

「…

それなら、大丈夫そうだね…!!」

「ということは、火砕流や火山灰に襲われても、地下都市などの間や、国々の間で、通信が維持出来るのね!!」

「はい。

地下都市などの人口の多い居住地は、外部との通信は、産業革命後、ずっと、通信ケーブルによる有線通信が主なので、巨大噴火後も、通信が維持出来るはずです。

ただ、地下都市などから遠く離れたところにある、小規模な温泉地などの地熱湧出地にある村や、1世帯しか住んでいないところなど、人口数十人規模以下の居住地などでは、通信ケーブルは敷設されていないところが多いので、カード端末の中継局と通信出来るところは、それで外部と通信しています。

そして、カード端末の中継局からも遠く離れているところでは、昔ながらの電離層反射を利用した無線機による通信が、今も行われています。」

「…

地球風に言うと、アマチュアのハム無線みたいなものだね!!

あれなら、大気中の火山灰の濃度が高すぎない限り、星の裏側にいる人とでも、通信が出来るはずだ!!」

「…

問題は、カード端末の中継局との通信に頼ってる居住地ね!!

地上にある中継局のアンテナが、火砕流で破壊されたり、火山灰がアンテナに降り積もって、電波が弱められると、その居住地に住む人たちは、外部と通信出来なくなる恐れがあるわ!!」

「…

外部と通信出来なくなると、助けを求めることが出来なくなるし、地上の様子がわからなくなって、自ら危険を犯して、地上に出なければならなくなるから、極めて危険な状況になる…

なんとかしなきゃ!!」

「…

中継局を火砕流から守るには、コンクリート製の防壁が必要です。

かなりのコストや人手や資源やエネルギーや時間が必要になりますね…」

「…

火砕流で破壊された中継局を再建するのも、大変ね…

火砕流の残留物を取り除いてから、建て直さなければならないし…」

「…

となると、あらかじめ、ハム無線機を、各居住地に備えておいてもらうのが、いちばん現実的だね…

カード端末が通信出来なくなったら、無線機で、外部と連絡を取ってもらうように出来ればいいね!!」

「…

地下の居住地からは、外部に電波が送信出来ませんから、アンテナだけは、地上に設置する必要がありますが…」

「…

火砕流が襲って来てから、アンテナを外に出さないといけないのね…」

「…

外気との換気用の通風口があるはず…

そこからアンテナだけ、外に出せばいいかもしれない…」

「…

その通風口も、火砕流の残留物に埋もれている恐れがありますよ…」

「…

そうだった!!

どんな居住地にも、外気との通風口は、必ずあるのね!!

そこが埋もれたままでは、酸素が足りなくなって、地下の居住地にいられなくなる!!」

「…

どんな小規模な居住地でも、地上に出て、通風口の上や周りの残留物や火山灰を、取り除かなければならないんだね…!!

見落としてた!!

こんな大事なことを…」

「…

通風口も、火山灰が侵入しないように、微小な火山灰も通らないような、フィルターを取り付ける必要があるでしょうね…」

「…

通風口のメンテナンスのために、地上に出なければならないのなら、その際に、無線機のアンテナを設置すればいいわね…」

「…

とすると、外部との通信を維持する方法は、わかったね…

ただ、必ず、一度は、地上に出なければならないことになるけど…」

「…

火砕流の残留物を通風口の辺りから取り除くのは、1回で済むでしょうが、火山灰は、半年以上、降り積もり続けると思われますから、降り積もった火山灰を取り除いたり、フィルターに付いた火山灰を取り除く作業は、繰り返し必要になるでしょう。

もしかしたら、毎日、地上に出て、火山灰を取り除かなければならなくなるかもしれません…!!」


彼女は、虹色の瞳を輝かせて、手を握りしめながら、言った。


「プル、ンケ、ルム、ベズでは、巨大噴火後、全ての居住地で、外気との通風口の機能を維持するために、地上に出て、火砕流の残留物や火山灰を取り除く必要があるのね!!」



星の心の奥底を覗いて、推し測れば…


星の気まぐれを、推し測れば…


彼女は、氷平線に近付く太陽に、目を細めながら、訊いた。


「プル、ンケ、ルム、ベズで巨大噴火による火砕流が襲来した後、居住地の通風口の機能を維持するために、地上に出て、火砕流の残留物や火山灰を取り除く作業を、出来るだけ安全に行うには、どうしたらいいのかしら?」

「火砕流が襲来すると、地上には、火砕流の残留物が堆積します。

残留物は、岩石や噴石や冷えて固まった溶岩や火山灰や、火砕流によって破壊された建築物や植物や乗り物や、氷などです。

どこにどの程度の量の残留物が堆積するかを予測するのは、困難でしょう。

火口から遠いほど、少なくなるはずですが、火砕流の進行を妨げるような地形や、防壁などの建築物があるところでは、残留物が多く堆積するはずです。

残留物の重さや、厚さも、場所や、残留物に含まれる物によって、複雑に変化すると思われますから、事前に予測するのは困難でしょう。」

「…

火砕流が襲来して、残留物が堆積した後、地下の居住地から、地上に出なければならない。

地上への出入口を開けて、外に出る場面を、想像してみよう…

ドアが垂直な場合でも、地面に水平な場合でも、ドアの外には、残留物が堆積しているはずだから、ドアを開けると、残留物が、地下に流れ込んで来るはずだ…!!」

「…

そこにいる人たちは、流れ込んで来る残留物に巻き込まれて、下敷きになってしまうわ…!!」

「…

残留物が、厚さ数十センチメートル以下であれば、なんとか、外に出られるでしょうが…

それよりも多く堆積していると、無事では済まない恐れがありますね…」

「…

安全に地上に出るためには、出入口の近くに残留物が堆積しないようにする必要があるね…」

「…

コンクリート製の防壁で、出入口の周りを囲えば?!」

「…

それなら、大丈夫でしょうが…

建設には、お金と人手と建設資材とエネルギーと時間が必要です。

全ての居住地の出入口を、防壁で守るには、何年かかるか、わかりません…」

「…

人口の多い地下都市などの居住地だけでも、出入口を守る防壁を造って行けばいいよ!!

噴火までに防壁が造れなかった居住地の人たちは、防壁が完成した居住地に、避難すればいい!!

噴火が予知されてからでも、間に合うはずだ…!!

3日はあるはずだから!!」

「…

それなら、人が住んでいる居住地は、どこも、安全に地上に出ることが出来るようになるわね!!」

「…

防壁の中には、火砕流は侵入出来ませんから、残留物も、全く残りません!!

火山灰は、降り積もるでしょうが、大量に降り積もる前に、マメに人手で取り除くようにすれば、いつでも、安全に地上に出られるはずです!!」

「…

外気との換気用の通風口も、一緒に、防壁で囲えばいいね!!

通風口の上に、火砕流の残留物が堆積しなくなるし、出入口から出て来た人たちが、通風口のフィルター交換などのメンテナンスをしやすくなるはずだ…!!」

「安全に通風口のメンテナンスが出来るわね!!

必要な時に、いつでも!!」

「…

人口の多い地下都市などは、外部との通信は、光ファイバー回線などの有線通信が主で、巨大噴火後も、維持出来るはずです。

したがって、無線機のアンテナを屋外に設置する作業は、必要無いでしょう。

噴火後、外部との通信が維持出来なくなる恐れのある、比較的小規模な居住地は、防壁を造るのも、噴火に間に合わない可能性がありますね…

そして、もし、防壁が造れたとしても、通風口のメンテナンスをずっと続けたり、無線機のアンテナを屋外に設置したりする必要がありますから、そこに住む人たちも、地下都市などに避難してもらうのが、いちばん安全でしょうね!!」

「…

地下都市は、地中に、広大な面積で広がっているけど、防壁は、主な出入口と通風口だけを囲えばいいね!!

地下都市の上の全域を囲う必要は無いから、建設費も少なくて済むはずだね!!」


彼女は、虹色の瞳をキラキラさせて、言った。


「人口の多い地下都市などの居住地から、主な出入口と通風口を守る防壁を造って、防壁の建設が間に合わない居住地の人たちは、防壁が完成した居住地に避難してもらえば、安全に地上に出て、通風口のメンテナンスが出来るようになるのね!!」



星の体に聴診器を当てれば…


星の脈拍に耳をすませば…


彼女は、西の氷平線に、おずおずと沈み始めた太陽を見ながら、訊いた。


「居住地の出入口と通風口や、地上の地熱発電所や、灼熱ノ岩流ルル国の大陸間鉄道の駅などを、火砕流から守るための防壁は、いつ、どうやって造ればいいのかしら?」

「巨大噴火は、いつ起きるか、わかっていませんから、出来るだけ早く、防壁を造るべきでしょう。

多くの人たちが住んでいる居住地の出入口と通風口を守る防壁を造るのが、最優先されるべきです。」

「もし、防壁の無いまま、地下都市などが火砕流に襲われたら…

出入口と通風口の上に火砕流の残留物が堆積して、外気との換気が出来なくなる…

そのままでは、酸素が足りなくなって、みんな亡くなってしまう…

出入口から外に出ようとしても、ドアを開けると、火砕流の残留物が地下に流れ込んで来るから、出られない恐れがある…」

「…

外部との通信は、維持出来るはずだから、他の地下都市などや、外国に、助けを求めることは出来るでしょうけど…

巨大噴火による火砕流は、この星全体を襲うから、どこの地下都市などや国も、まず、自分自身を助けなきゃいけなくなる…

外からの助けに頼っていてはダメね!!」

「…

地下都市などには、地下農場も隣接して、造られているので、農作物の光合成によって、二酸化炭素から酸素が作られて、地下都市などとの間で、空気の循環がなされていますが、それだけでは、人口分の人たちの呼吸する酸素には足りないところがほとんどなので、外気との換気も、維持する必要があります。」

「…

一日も早く、地下都市などの居住地の出入口と通風口を守る防壁を、造らなきゃいけないね!!」

「…

どれぐらいの大きさの防壁が必要なのかしら?」

「まず、出入口ですが、大型の氷上車や建設用車両なども出入り出来る、幅30メートル以上の4車線の出入口が使用されています。」

「…

ずいぶん大きな出入口だね…

そんなに大きな車が出入りするのかい?」

「どこの地下都市でも、地下の拡張工事が行われているのです。

主に、地下農場や植物工場を増やすために、地下を掘り拡げて、土砂を地上に運び出す氷上ダンプカーが、出入りするのです。」

「…

巨大噴火後、地上のジャガイモなどの農作物は、長期間、生産出来なくなるから、地下農場や植物工場は、出来るだけ増やしたいわね!!」

「…

なるほどね…

氷上ダンプカーって、もしかして、キャタピラーで走るダンプなのかな?」

「ご想像の通りです。

氷上を走る車両は、ほとんど、キャタピラーで走行します。

一部の緊急車両などは、ホバークラフトですが…」

「…

ホバークラフト?!

速そうね…?」

「…

地球だと、大きな送風機で推進するソリもあるね…」

「この星にもありますよ!!

数人乗りの行楽用の乗り物ですが…」

「…

あとは、帆に風を受けて走る乗り物があるわね…」

「ヨットみたいにね!!

地球のは、車輪で走ってたような…」

「それも、この星にもありますよ!!

風を受けて進むソリですが…」

「…

ソリなんだ?

なんだか、気持ち良さそうな乗り物ね…

一度乗ってみたいわ!!」

「…

ホントだね!!

あとは…

犬ゾリがあるね!!」


マスターが、訊いた。


「…

犬ゾリとは、どのようなものでしょうか?」

「ソリを、ワンちゃんたちに引っ張ってもらう乗り物よ!!」

「…

プル、ンケ、ルム、ベズには、犬はいないんだったね…」

「…

我々の星には、犬はいません…

犬にソリを引っ張ってもらうのですか?

驚きました…!!」

「…

そうだったわね…

ごめんなさい…」

「…

君が謝るような事じゃないよ…

僕が言い出したんだから…」

「…

おふたりとも、謝られる必要などございませんよ!!

たまたま、我々の星には、犬はいないのです!!

どなたのせいでもありません!!」


マスターは、珍しく、慌てたように、私たちをなだめた。


「わかったわ!!

この星では、ソリを引っ張ってくれる動物は、いないのかしら?」

「…

羊で引っ張っるソリはありますが…」

「…羊で…?」

「…羊ソリ…?」

「氷上車がある今では、ほとんど利用されません。

昔は、地熱湧出地の間を往き来する際に、活躍したようですが…」

「…なんだか、乗ってみたい気もするね!!」

「…

地球にも、トナカイのソリはあるものね!!

乗ってみたいわ!!

羊ソリ!!」

「…

探せば、どこかで乗れるでしょう。

今すぐは、ちょっと思い付かないのですが…」

「…

話がずいぶんそれちゃったね…

え~と…

地下都市などの出入口と通風口を守る防壁の大きさについて考えてたね!!」

「…出入口は、30メートル以上の幅があるのね…?

通風口は?」

「ひとつの地下都市に、複数箇所の通風口があります。

吸気口と排気口が、対になって、街区ごとの換気を行っています。

吸気口と排気口は、十分離れた場所に造られています。

吸気口から取り込まれた外気は、エアコンで暖められて、加湿されてから、街区の天井の送風口から、地下都市に送り込まれます。」

「…

とすると、ひとつの地下都市に、いくつも、通風口があるんだね…?」

「はい。

都市の規模にもよりますが、多いところでは、数十箇所の通風口がある居住地もあります。」

「…

街区は、互いに気密になってるの?」

「…

場所によります。

互いに仕切られて、空気の行き来が無い街区もありますが、道路などで、空気の行き来がある街区もあります。

ただ、基本的には、それぞれの街区に、そこを受け持つ換気用の通風口と、エアコンがあります。」

「…とすると、やはり、通風口全てを守る防壁が必要だね…

出入口みたいに、1ヶ所だけ守るって訳には行かないか…」

「…

そのぶん、建設に時間がかかるわね!!」

「…

1ヶ所だけでも、通風口を守る防壁が完成すれば、そこから取り込まれた外気を、サーキュレーター送風機などで、別の街区にも送り込めば、人々が呼吸する酸素は、なんとか供給出来るでしょう…」

「…

そうだね!!

まず、1ヶ所、たとえば、出入口のいちばん近くにある通風口を、出入口と一緒に、防壁で囲えば、とりあえず、地上への出入りと、外気との換気が維持出来るようになるね!!」

「そうね!!

それから、他の街区の通風口も、防壁で囲って行けばいいのね!!」

「それぞれの防壁には、通風口のメンテナンスをする人たちが通るための通路が必要でしょう。

火砕流にも耐える頑丈な金属製のドアが必要です。

出入口を守る防壁には、氷上ダンプカーなども通れる大きさのゲートが必要でしょう。

もちろん、火砕流の直撃にも耐える、頑丈なゲートでなければなりません。」

「…

通風口の大きさはどれぐらいあるんだい?」

「吸気口と排気口のいずれも、縦横20メートルほどあります。」

「…

大きいのね…

出入口も30メートル以上あるから、最初に造る防壁は、かなり大きなものになるわね…」

「…

大きいというか、長くなるね!!

防壁の高さは、火砕流の高さよりも高ければ、いいはずだけど…」

「…

火砕流の高さは、正確な予想は、コンピューターシミュレーションでないと難しいでしょう。」

「…

地球では、火砕流の高さは、確か10メートルぐらいだったわね?」

「それは、ハワイでの高さだよ…

ヤシの木に、火砕流の跡が残っていたね…

でも、プル、ンケ、ルム、ベズでは、予想したように、地球の火砕流よりも、ずっと大規模な火砕流になる…

だから、その高さよりも、ずっと高くなる恐れがあるね…」

「…

火口からの距離にもよるでしょうが、どこの地下都市でも、火砕流が乗り越えられない高さの防壁が必要です。

もし、正確な高さの予想が出来ない場合は、余裕を見て、十分な高さの防壁を造ることになるでしょうね…」

「…

コンピューターシミュレーションの結果がわからないと、防壁の高さも決められないのね?」

「…

ひとつだけ、手がかりになるデータがあるよ。地球で起きた巨大噴火を、コンピューターシミュレーションで再現しようとした際の、火砕流の高さは、火砕流の発生直後がいちばん高くて、300メートルほどだった。」

「…

300メートル…ですか?」

「…

なにそれ…?

意味わかんない…」

「…

発生直後だからね…

火口の上に発生した、巨大な、岩石や噴石や溶岩や火山灰や、火山性ガスや水蒸気や大気の混合物だよ…

高さは、300メートルほどだけど、面積は、巨大な火口と同じくらいある。

それが、火口から溢れ出て、周囲に拡がって行ったんだ…

面積が拡がると、高さは低くなる。

アメリカの西海岸を通過する時の高さは、30メートルほどだった。」

「…30メートルですか…!!」

「…

とすると、灼熱ノ岩流ルル国に襲来する火砕流の高さは、それより高くはならないのね?」

「…

シミュレーションのデータだから、誤差もあるはずだし、地球とプル、ンケ、ルム、ベズの、地表や気象の違いも考慮されていないから、もしかしたら、もっと高くなるかもしれないよ…」


彼女は、武者震いを堪えながら、言った。


「プル、ンケ、ルム、ベズの火砕流を防ぐ防壁は、地球のものよりも、ずっと高くなるのね!!」

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